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逃げました。

初めての投稿です。優しい目で見て頂けると嬉しいです。




  夕日に染まる教室。


  柔らかく吹き込む風に捲き上る白いカーテン。


  まるで映画のワンシーンのような空間の中…


  机を挟んで見つめ合う2人。


  引力に引かれお互い顔が近づき…そして…


  重なるシルエット…


 

 


  教室の扉を背にして動けない私…。


  今、教室内にいる2人は同級生と私の彼氏。


  見てはいけないものを見てしまって、心臓がおか しな鼓動を打っている。


  早く!


  早くここから逃げないと!


  惨めな姿を見られたくない。震える身体に何度も言い聞かせ、何とか動いた足に神経を集中させ、下駄箱に向かった。





  私、山田 佳奈恵は高校2年生。

  さっき教室でピンクな世界を繰り広げていた男の方は、3年生で私の彼氏で幼馴染。女の方は、同級生で隣のクラスで2週間前に転校してきた美少女転校生。


  彼氏 (?) のたちばな 博武ひろむは小学校の2年生の時に、私の住むマンションに越して来た。


  同じマンションには他に3人遊び友達がいる。


  3人とも同じ高校で幼馴染。

私以外みんな生徒会役員で、博武は副会長。


  …何処かで聞いたようなフレーズ…。


  はい、それぞれ超スペックです。


  でも、 私は至って普通……。


  なのに中学2年生の時に博武に告白されて、お付き 合いが始まった。どうして私?と、何度も自問し博武にも聞いた。


  小学生の頃、身体の小さい私をいつも気にかけてくれて、他の3人が私を残して遊びに行っても、ずっと博武は私のそばに居てくれた。


  だから、私が博武を好きになるのに時間は掛からなかった。


  だから、告白された時の喜びと不安な気持ちは今も残ったまま。全く消えない。魚の骨のように……。


  でも、それでも嬉しい気持ちが大きくて、博武の隣に居ても遜色しないように、勉強も運動も私なりに頑張った。


  ……頑張ったんだよ?


  これといって特徴のない平凡な私が、博武に恥ずかしく思われないように、周りから見下されないように、超スペックな博武の隣に居るために!


 


  いつの間に着いていたのか、私は下駄箱の前でカバンをギュッと抱きしめて蹲っていた。


  不思議と涙は出てこなかった。ただ、胸が鷲掴みされたように痛かった。息が上手く出来ない。


  どうしよう…直ぐにここから逃げ出したいのに、身体に力が入らない。


  もう…動けなない……



  「…カナ?」



  頭上から聞き覚えのある声。


  私は緩慢に頭をもたげると、声の主を見た。


  先程よりも紅く色付く陽光を背に受け、ひょろりと背の高い男子がいた。


  「…たいちゃん…?」


  掠れて上手く出せない声を掛けると、


  「どうした?腹でもくだしたか?」


  そう言いながら私の元に来て跪き、頭に大きな手を載せてきた。


  たいちゃん…岩崎いわさき 泰輝たいきは同じマンションに住む幼馴染の1人で、生徒会のメンバーで、書記で3年生。


  「…たいちゃんどうしたの?忘れ物?」

  「うんにゃ、頭煮詰まったから走って来た。」

  「ゆうくんとはるくんは?」

  「まだ生徒会室で闘ってる。……なぁ、大丈夫か?顔、真っ白だぞ?」


  私の顔に掛かった髪を、骨張った長い指で掬いあげる。


  「博武は?一緒じゃ無いのか?」


  私は 再びカバンに顔を埋め、頭を横に振った。


  暫く沈黙した後、たいちゃんが立ち上がり私の頭をわさわさと撫でる。


  「ちょっと待ってろ。悠人と春輝呼んでくるから。」


  そう言って走って行った。


  廊下は走ってはいけません。


  何時もならそう諌めていたはずなのに、今は声を出すのが億劫で、カサカサになった唇から細い息が漏れるだけ。

 

  生徒会長の長岡ながおか 春輝はるきと会計の三浦みうら 悠人ゆうとは幼馴染で、はるくんは3年生、ゆうくんは1年生だ。


  たいちゃんは待ってろって言ってたけど、此処に居たらあの2人に会ってしまうかもしれない。博武と彼女…加賀さんが一緒の場面に出会すのは、今はどうしても避けたい。じゃないと、私の身体の中から真っ黒なモノが溢れてしまいそうだから。


  だから、逃げたいから、歯を食いしばってカバンを持つ手を握りしめ、ふらつきながら立ち上がり歩き出す。…靴を履き替える事を忘れて…。


ありがとうございました。

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