第644話 普通に考えれば野営は大変危険である
馬車に揺られてどんぶらこ。っと。
いやー世の中で一番いいのは他人が操縦する乗り物。
これで無人だったらなおの事最高なんだけど……ほら例えばだ、今俺が馬車の中で全裸になったとしよう。
当然御者のおっちゃんに見られる。
これが運転手無しで移動できるなら全裸になろうが何してもセーフなのだ。
地球時代でもギリギリ自動運転の車だったもんな。
結局アレは完成されたのか、今となっては懐かしい記憶である。
オータム行きの馬車で寝ころび、御者を見ると俺が贈った酒を飲みながらの運転だ。頼むから事故かだけは気を付けてくれ。と思いつつ再び寝る。
気づけば、馬車の中にメルナが居た。
なぜか素足で、指をくぱぁ。と広げては縮めてる。
その指先にアリシアがオイルを垂らしていて、これから始まる官能パーティーの幕開けた。
頂きます。
いや、俺は別に足指フェチじゃないよ? それに足先って臭いし。
おっと、別にメルナやアリシアのが臭いって言いたいわけじゃなくて……。
メルナが慌てた顔で口を開く、『旦那!!』と。
おやメルナさん、何時からそんな御者のおっさん見たな声変わりをしたんだい? ってやべえええええええ!! これ夢だああああああ!!!
「はっ!! 水盾・連!!」
無意識に水盾・連を唱えその衝撃で距離をとる。
これまた無意識で地面へと転がり受け身を取ると少し先に停車している馬車が見えた。
おっちゃんは俺を見ては怯えた顔だ。
俺の顔も多分怯えている。
水盾の効果がなくなり空気中に魔力となって消えていく。
ゆっくりと歩いて御者のおっちゃんの顔を見た。
「セーフ……?」
「セーフです」
「「よかったぁ……」」
俺もおっちゃんも安堵の声だ。
夕暮れ時の人が通らない街道、小さい馬車が1台で男2人。何かあったらお終いである。
「だ、旦那が気持ちよさそうに寝てるので。暫くは待ったのですが」
「ああ。いいよいいよ。で……ここ? あっちには森と南は渓谷かな?」
「ええ。あの可愛い亜人は森の方に」
夕方か……あまり夜は出歩きたくないけど仕方がない。
この辺の魔物なら何とかなるだろう……多分。
まさか学園を壊すような黒竜よりも強いのが出たらお終いだけど、そうなったら帝国が滅びるな。
「はっはっはっは」
「旦那!?」
「っと、想像したら笑いが。ありがと」
御者のおっさんは、そのままオータムに行くといって足早に消えていった。
夜間は怖いもんな。
「後……今気づいたんだけど、酒を飲んでないはずなのに唇がちょっと酒が付いてるような。気のせいだよな……飲んでいたのはあのおっちゃんだし、きっと匂いが付いたんだろう。ウォーター!!!」
無数の魔力で出来た水を出して口の中を一応洗う。
魔力の水なので水分補給にはならないけど気持ち洗うぐらいはできる。
地面に何度も水をはき出して、俺は森の中に。
人食いミミズ。や突撃イノシシなどの魔物が襲ってくる、前者は毒液さえ回避できれば……後者は焼くと美味い。
少し進んだ所に人の手が加わったたき火の後が見えた。
周りには食い散らかした食べ物の数々。
焼いたであろう突撃イノシシの骨。
そして葉っぱが被せられた物が見えた。嫌な予感がするけど……ちょっと開けてみる。
パンパカパーン!!
クロウベルの運が1上がった。
脳内で勝手に再生されそうなナレーション。
「げっほげほげほ!! マジかよ!! 冗談で言ったのに。え? いや……まじで? いくら俺でもメルナ、アリシアに対してもそんな趣味ないよ!? ってか、たき火のすぐ横じゃん!? どんな所でしてるの。マジで!!」
すでに葉っぱをかぶせ直して距離をとる。
これが魔物の奴ならまだ良いんだ。良くないけど……。
その人間型の奴ってのが心理的に嫌なのだ。
「ん? あれって」
よく見ると、数メートル先にも葉っぱが被せられたナニカがある。
その先にもありそうだ。
「どんだけするんだ」
いや、食べた量を考えればそうなるのか?
「追いたくない。追いたくないが……行くしかないんだよねこれ」
と、言っても森の中は既に暗い。
周りに変な鳴き声も聞こえるし、たき火をする。
「あたたかい、お鍋ー!」
みずから効果音を出してマジックボックスから鍋と野菜とソーセージなどを出す。俺のマジックボックスは小さいのでこんなものだろう。
出来上がりを入れてもいいけど出す時にこぼれたり、熱かったりするので現地で作るのだ。
後周りに魔物除けでアリシア特製の聖水をぐるっとかける。
うん。アリシア特製の聖水……。そう特製の!
深い意味はない。
──
────
「ぶえっくしょい!」
冬という訳でもないけど、朝晩ば冷え込むというか。
ぐるっと聖水の周りには人食いミミズなど、入り込もうとしてうにうにしてる。
「そういや。昆虫や動物系の魔物には効くけど人系の魔物には効かないって教わったっけ。あぶな」
そもそも魔物が出る森の中で熟睡するな。とメルナに教わったような気もする。
俺もノラにはそう教えた気がした。
じゃぁ何で? ってのはほら眠いと判断も鈍るから……とにかく周りの魔物を一掃し、今朝も鍋を食べる。
「さて……いくか」
ヘンデルとグレーテルも知ったら泣いてしまいそうな落とし物を目印に歩く。
一定の間隔で落ちていて巧妙に葉っぱが掛けられている。
暫く追いかけていると、落とし物に変化が起きた。
「まだ、新しいな」
何を思って新しい。と思ったのは省略。
ぐるっと見渡すと少し丘になった先に寝そべっている尻が見えた。
寝そべりながら何かを見ている。
その先が見えないって事は寝そべってるのは崖の端か何かか。
そっと背後忍び寄ってつま先でユーティー尻を突く。
「んんんんぎゃあああああああああああ!?」
叫び声で森の中が騒がしくなる。
パタパタと鳥が飛ぶ音が聞こえるとユーティーは直ぐに口を押え、俺を見た。
絶望した顔で俺の手を引っ張り……え? 背中を蹴られた。
もちろん、崖の向こう側にだ。
「おまっ!!」
最後まで言う前に俺は落ちる。
体に横綱が落ちて来たような衝撃をうけ暫く空を眺めた。
崖の上からユーティーが俺をじっと見て弓まで構えてる。
いや、敵じゃないし……再生が終わり、やっと気づいたらしい……弓を下げたので俺は崖を迂回して戻ると嫌そうな顔で俺を迎えてくれる。俺のほうが文句言いたいんだけど。
「よう!」
「貴様!! メルギナス様はどこだ!」
「いないよ?」
「そうか、やっと捨てられたか。そもそもメルギナス様と付き合おうだなんて間違ってるのだ」
「そのメルナと子供までいるんだけど」
「………………こ、子供は引き取る!!」
いや、引き取らないで? あとお前の子じゃないっての。
「それよりも、もう少し出す場所を考えろ……」
「何の話だ?」
「いや。野〇ソの話」
「誰の?」
「誰って」
黙って指をさしたら腕を引っ張られて崖から落とされた。
「私の訳あるかああああああああああ!!」
「なんでえええええええええええええ!!」




