第596話 (他人視点)私わかっちゃったかも?
ファースト学園の応接室。
ユニコーンのぬいぐるみを売りに来た女神ダークネス。
その手をひっぱり、こうして応接室に押し込んだのだ。
一緒にいたノラはぬいぐるみ買い取り会場に置いて来た。
「あーし、基本的に大人は趣味じゃないのよねぇ……でもまぁいいし。こんな場所に連れ込んでいい事しよってんでしょ? 人間のくせに積極的ー♪」
言葉では見えない弾んだ音符がみえるようだわ。
そもそも女性同士には興味はない。
だからと言って不特定の男性とも別に。
こう見えても!! 子を産むまでは清らかですし! 生涯魔導師メルギナスを草場の影から推し活する予定でしたのよ。
その結果、なぜ夫が2人いる状態になっているのかは、不思議ですわね。
そのせいでヤンデレ化したクウネがアリシを刺そうとして、間に入った私が刺され何年も昏睡しましたけど。
とにかくブロンドの白い肌、私と同じ高身長の女神ダークネス足を組んで退屈そうな顔、欠伸をしているのが見える。
「ねぇ……あーち。悪いけど《《今は》》女の子には興味ないしー帰っていい? こう見えても世界中の男の子があーちを呼んでいるのよ」
少しギャルっぽい。
うん、年頃の男の子は反抗出来ないのかな?
「今責任者が来るから待って頂戴」
「責任者……ねね。可愛い子?」
「そうねぇカッコいいわね」
最初に見た時思わずキュンとなってしまったし。
ち、違うのよ。これは浮気じゃないの。
応接室にノックの音が聞こえると、クウガが入って来た。
「失礼します女神ダークネスさんですよね。学園の校長をしてますクウガです。おひさしぶりです」
「誰だっけ?」
「いや、あの20年前に『女神の本』を見て……」
「あああ!!」
ダークネスが突然大きな声を上げて立ち上がった。
そのままクウガを指さす。
「あの時はすごかったね。ねね!! 女の子にもてた? ねね!?」
「…………ええと、その話は今はちょっと……で祝福は解かせてもらいました」
「そっかー残念ね、君の顔なら遊び倒すと思ったからだれからも恨まれないように祝福かけたのに」
なるほど……。
むこうのクウネも男とっかえて遊んでるのに恨まれないのよね。あれも呪いのせいって話だったし。
しかもよ。
どういう原理が知らないけど、謎のアイテムで子供をぽんぽん3人は産んでるわよ。妊娠したんだ。おめでとう!! って祝福した数ヶ月後にはもう生んで妊娠してるのよ。
「祝福じゃなくて呪いよね」
私がボソっというと、八重歯をみせながらにらんで来る。
「はぁ!? あーしの祝福が呪いとか言ったこの女!」
「言いましたけど、何か?」
真実を言ったまでだ。
そもそも、そのせいでこっちは男だらけの世界に来てるのだ!
早く魔導師メルギナスやアリシに会いたいのを我慢して我慢して……クウガと言う、ちょっとカッコいい奴の誘惑を堪えてるのだ!
「ちょ! 喧嘩は辞めてください!」
私とダークネスの間にクウガが割って入って来た。
むぅ……イケメンね……。
「とにかく。彼女……ええっと元は男なんですけど、今は女になっていて。あと『女神の本』を読んだ男の子が昏睡になってしまって。治療は出来ますか?」
「え。出来るし……え、女にみえるけど、あーた取ったの?」
「元からついてませんけど!!」
何なのよこの堕女神。
「でも、女神のあーちを捕まえてタダで動くとかー、ちょーだるいって言うか……ねぇ。そう思わない? 可愛い男の子?」
細い指でクウガの口から首筋を触っていく。
えっど。
悔しいけどちょっと勉強になるわね、戻ったら2人にやってあげようかしら。
「あの、クロウネルさん! 見てないで助けて貰えると」
「え? 何で? 私じゃないし……どうせこっちの世界でも空き教室で色々してるんでしょ? やってくればいいじゃない」
「言質とったしー。じゃっその子の所案内してほしいしー」
ダークネスがあっさり了解したので私も席をたった。
長い廊下を歩いていると、不思議と何か違和感がある。
何かしらこの違和感。
先に歩くクウガはダークネスと談笑してるし、ダークネスはクウガのお尻を触って撫でたりとセクハラ全開。
「あの。そこの前にあるく痴女」
「あーしの事!?」
「他に誰がいるのかしら」
「もしかしてモテないからってひがみ? あーたにも祝福かけてあげよっか?」
「いりません事です。とある知り合いの魔女が言うには、私がこの世界に来たのもアンタのせいみたいなんだけど……元の世界にもどれるのかしら?」
これで『出来ません』なんていうのであれば、全力で叩きつぶしますけど。
「簡単だし―」
「そうなの!?」
「その男の子、こっちに呼んだら戻してあげてもいいしー」
「じゃぁ頼むわよ」
私が頼むと、クウガが残念そうな顔をする。
送別会とかしないんですか? と聞いて来るけど別にしないわよ。
保健室について昏睡のスミレを見る。
かわいそうな子。
「じゃっ頼むわよ」
ダークネスは、無空間から『女神の本』を取り出した。
どこから? と思うけど自称女神ならしょうがないわね。
それを枕の下にいれると、あれだけ引っ張ってもズボン脱がしても何しても起きなかったスミレが飛び起きた。
「なっ!? あれ……親父……?」
「良かったわースミレ。わかる? クロウネルママよ!!」
私が言うとスミレは枕をダークネスにぶつけた。
「痛いしー……そんな悪い子にはイタズラしちゃうぞー!」
「ばっよ、寄るな!! 親父。この世界は『夢』だ!!」
スミレはそういうと私達から距離をとった。
夢……あっ。
「そう言う事」
思わず手を叩く。
「あちゃ。バレたし」
「え。3人ともどういう事です?」
「私が言うよりも女神本人に聞いたら?」
違和感がわかった。
本の中にいるはずの女神が何で現実にいるのよ。
それにユニコーンのぬいぐるみも、動いていた。とは普通に言ってたし。
じゃぁ私は男クロウベルの夢って事になるのかしらね?
「いうけど、あーちの世界に干渉してきたのはそっちだしー……ユニちゃんも動かなくなるし……」
「待ってください! じゃぁ僕が女の世界ってのは──」
「あるんじゃないのー? 夢が混ざっていくつか弾かれたしー。それをユニちゃんと治していただけー」
気怠そうに喋りだす。
はぁ……そう言う事ね。
「じゃぁ今すぐ元の世界に戻してもらえるかしら!! 愛しい男に会いたいんだけど!!」
「…………いいけど。あーちが満足するまで無理だよ? 魔力ないし」
指を輪にしては上下に動かした。
ちょ。そんな指先スミレに見せられないじゃないの!! とスミレのほうを見るとクウガがスミレの視界をガードしていてくれた。
やるじゃないの。
「しょうがないわね……クウガ頼んだわよ。ほらスミレ行くわよ」
「え?」
「あーちはどっちでもいいし」
スミレの手を引っ張って保健室を出ると背後で鍵が閉まる音が聞こえた。
必死に開けようと扉が動いているが、その音も小さくなる。
「スミレ。ママと一緒にノラの所に行くわよ」
スミレの返事はどうでもよくて、私はそのままスミレを連れて行った。




