第443話 僕達! 私達!!
記憶を取り戻したクウガから2人きりで話がしたい。と言われて2日起つ。
と、言うのもクウガが忙しすぎてその時間が取れないのだ。
溜まっていた書類のサイン。
鉱山からの要望やその改善。
生徒からのお見舞いや、復帰祝いパーティーの出席。
それに伴う、権力者からの誘いや辞退など。
ほとんどはクローディアが処理してくれていた所だけど、最終決定や手に負えない所はやっぱりクウガがいるとの事で。
俺としてはアリシアとともに帰りたかったんだけど、借金の事もあるし一応は残ってる。
じゃぁ。という事でアリシアを先に帰らす事になったんだけど。
アリシア姉さん1人で帰るのにかわいそうだよ! 何考えるのクロー兄さん。アリシア姉さんは天然なんだから誰かに騙されて悪い奴に連れていかれたらどうするの? 馬鹿なんじゃないの? と《《誰かから言われて》》、最終的にノラが送っている。
泣きそう。ちょっと見えない所で泣いた。
すぐにノラから「言い過ぎた。ごめんなさい」と言われたので当然に許した。
送り迎えでもあと3日もあれば帰ってくるだろう。
学園の屋上で時間を潰す。
「こう屋上にいれば問題も起きないし借金も増える事もない」
あーあの空から大金でも落ちてこないかなー……と適当な事を思いつつ寝そべるのだ。ちなみに残りの返済はざっと9992億との事。
ここまで返しただけでも褒めてもらいたい。
「する事ないからねぇ」
だって俺、人に教える事苦手だもん。
敵が襲って来た時の対処法をジーク特別講師に頼まれて生徒たちに見せたけど、俺の型って何でもあり過ぎて訓練にならん。と怒られた。
基本奇襲型だし。
勝てれば何でもいい、その点数日前のクウガの攻撃は良かった。
殺されそうになったけどあまりにも素晴らしくて魂が燃えた。
「次に勉強もさ。俺が教えるよりノラやクローディア副校長のほうが上手く教えるし」
俺が冗談で。アリシアをパートナーにして子供を作る勉強を見せようか? と提案したら、その日から1日クローディア校長は口を聞いてくれなくなった。
最終的に街まで行ってケーキを買って土下座した。
感情にふけってると、その屋上に人影が来る。
「お待たせしましたクロウベルさん」
「ん……クウガが……暇になったのか?」
「流石に午後からと明日は休みをもらいました、明後日から鉱山のほうと王国まで行く事に……」
「人気者だな……いや。クウガさ、そこで止まってくれる? これ以上こっちに来ないで」
「…………匂いますか? シャワーは浴びて来てますけど」
そういう意味じゃない。
「臭いとかそういうのじゃなくて。またトラブルあったら嫌だろ? 例えば隕石が落ちて俺とクウガに当たるとかさ」
「クロウベルさん。そんな事絶対に無い…………と、思いますけど距離を取らせてもらいます」
そうしてくれ。
じゃなくても、些細な事でトラブルに巻き込まれるんだ。
人1人分距離を取った所でクウガは俺の横に土下座をしだした。
「はい?」
「この度は僕のせいで大変なご迷惑を!!」
「な、何突然どうした」
がば。っと顔を上に向くと俺をまっすぐに見てる。
「およそ6年前、僕が彼方をバラバラにし……そこからアリシアやメルさんに迷惑をかけて。その理由も嫉妬から、さらに借金だって……」
「ああ、その話か。別にいいよ」
「僕が許せません! 一発殴ってください!」
いやいやいや。
懲りないなコイツも。
それでアリシアから殴られて記憶喪失になったんだろ。
「また記憶喪失になるぞ」
「そ、それは……手加減してくれると」
手加減したら意味がないよね。
「その理由で俺がクウガを殴ればいいの?」
「はい!」
「じゃぁ」
俺も土下座をする。
「クロウベルさん!? 何で土下座を」
「2人の未来を奪って済みませんでした!!」
「クロウベルさん!? ど、どういう」
2回も名前を呼ばれた。
だって、俺が未来を知ってアリシアを奪ったんだ。
本来であれば、バラバラにされても文句は言えない。
実際俺は殺された事に関しては受け入れてるし。
「俺がアリシアを寝取った!」
「寝取った……だなんて。嫌味ですよね! 僕だってアリシアと付き合いたかった!」
だろうな。
俺がいたせいで。俺だって2人をくっつけたかったよ? 自然にさ。
でもなぜかこうなった。
「じゃぁその、俺がアリシアと子作りして済まなかった!」
「あの、クロウベルさん。煽ってます?」
「全然!」
俺は土下座したままクウガの顔を見る。
クウガも土下座したまま俺を見ている。
「とにかく僕が悪いんです! 謝って済む問題じゃないですけど」
「いや俺のほうだって、謝って済む問題じゃなく……いずれは本気で謝りたいと」
「僕です!」
「俺だっての!!」
こいつ本当にまっすぐで話きかないよな。
「とにかく、僕が出来るのは殴ってもらうしか!」
「だったら俺も殴れ!」
「嫌ですよ!?」
「俺も嫌だって言うの!!」
俺もクウガも土下座の姿勢から距離を取り始めた。
話し合いで済まないならもう決めるには力しかない。
「お互いに剣だけで戦って勝ったほうが謝るってどうだ? 別にこれぐらいだったら死ぬ事も無いだろうし問題も起きないと思うんだ」
「わかりました。勝ったほうが謝る、絶対に守ってくださいね」
俺とクウガが剣を握りしめ距離を取る。
風が吹き始めて静かな時間が流れる。からんと扉の音が聞こえた瞬間……世界はスローモーションになった。
いや、本当にスローモーションだ。
「なーんーだーこーれー」
「くーろーうーべーるーさーんー」
体がゆっくり動き眼だけが早く動く。
俺とクウガの間にジークが割り込んで来る。
「何をしてるんだお前達は……しかし、秘術で増幅させた時間停止魔法でもお前達2人は動くのだな。どうする……無意味な戦いを辞めないと今ならお前達2人をころす……いや、全裸にして副校長の前に出す事も出来るぞ」
ジークの言葉だけがはっきりと耳に届く。
俺達が屋上から突き落としても、何しても応えないとからの罰。
流石長年の知り合いとなると、嫌な事を知ってるもんだ。
「いーやーだー」
「やーめーまーす」
「…………では魔法を解除しよう」
ジークが手を叩くと俺とクウガは全力疾走、ブレーキも間に合わずにお互いに頭をぶつけた。
──
────
「正直嫌な予感はしてたんだ」
《《俺は俺に》》向かって話し出した。
意味が解らないと思うが、目の前には俺がいる。
そして俺の姿をしたやつは四つん這いで地面にゲロを吐いている状態だ。
「な、なんで……僕ばっかり……」
「いや。今回は俺も被害者だからね。むしろジークが悪い」
「ジークは僕達を止めようとしてくれたんです。何も悪くない!」
「…………じゃぁどうして、俺とクウガの体が入れ替わってるんだよ!」
ゲロを吐き終わったクウガは俺を見て口を閉ざした。
そう。僕達……入れ替わっちゃった……。
どこの映画!? だよ。と脳内で突っ込むとジークがクローディア副校長を連れて俺達の前に戻って来た。




