第442話 緑の薬と赤の薬
学園にある懲罰室。
保健室ではなくて、そっちのほうに連れていかれる。
俺が記憶が戻る薬を持って来た。という事でアリシアと廊下を歩く。
他のいつものメンバーは授業などで忙しい。
終わり次第来るとの事。
「まさか、帰ってくるのが遅かったから俺が懲罰される!? 部屋には三角木馬やエックスの拘束台があったり! アリシアが鞭を持って俺を」
「してほしいならするよ?」
冗談で言ったのにアリシアは乗り気である。
全肯定BOTか!?
男性の求める最高の女性で、男性をダメにする最高の女性でもある。
「まぁ今度ね。って本当に懲罰室に向かってるけど、クウガが何かしたのか?」
「それがね、クウガ君に押しかける生徒や聖騎士の人がいて……その……場所を移動してもらったの」
ここまでする。という事は実害があったのだろう。
クウガらしい。
重たい鉄の扉の隙間から中をのぞくと、部屋の隅っこで造花を作ってるクウガが見えた。
「……あの造花って」
「うん。暇だろうからどうかなって。クウガ君も喜んで作ってるよ」
もう一度見るとブツブツと不気味に笑いながらの作業だ。
あれを喜ぶ。というのか謎だけど鉄格子前までいくとクウガの作業が止まる。
「アリシアさん! 188843個目造花がいま出来ました! 後何個つくれば僕は出してもらえるんですか! おや……失礼しました。ボクの名前はクウガと言うらしいです。なぜか牢に入れられて──」
ゲーム張りのこっちの話を聞かない自己紹介が始まる。
「はぁ……アリシア」
「何かな? っいったーい……いきなりのチョップは痛いと思うよ?」
「思うよ。じゃない。若干壊れてるだろこれ、話終わったらまた造花作りだし始めたぞ」
「で、でも……ここにいればクウガ君も生徒も安全だよ……?」
アリシアの顔を覗き込むと若干狂気の眼してるな。
「やだ。この子ったらすぐにヤンデレになるんだから」
思わず女性喋りになってしまう。
俺は大きく手を3回ほど叩く。
突然の事でアリシアがびっくりするぐらいだ。
「ノラ!」
俺が大声を上げると、床が一部パカっと開きノラの頭が出て来た。
「何かな? クロー兄さん」
「………………」
「クロー兄さん。用がないなら帰るけど?」
ノラの頭が穴に戻ると床もパタンと閉じた。
いや、ノラの事だから近くにいると思って呼んだんだけど床下から頭が出るとは思わないじゃん。
ってか、ノラよ。
とうとうギャグ枠キャラに……ノラだけは真面目と思っていたんだけど。
もう一度手を叩き「ノラ……」と呼んでみた。
床が一部めくれて先ほどと同じようにノラの頭が出てくる。
「何かな? クロー兄さん」
「ずっと床下で待機してたのか?」
「…………そんなわけないよ。ボクはこれでも真面目に仕事してるんだし……もうしょうがないなぁ」
ノラが床下から這い出ると衣服は作業服だ。
いくつかの工具や魔石の入ったランプなど腰につるされていた。
「この下は学園の秘密の倉庫。貴重な物の一部を補完してるの。ボクはその結界の管理。ボクは魔力が少ないからね術を書いた魔道具の配置など。あれ……まだ記憶戻してないの? もしかしてクロー兄さんが学園の運営者に!」
「ならない」
俺がはっきりと否定するとノラが文句を言いたそうな顔に。
「クロー兄さんやメル姉さんが学園運営してくれたほうがいいのに……」
「困ったら助けるから。それよりも一心不乱に造花作ってるクウガを押さえつけるのを手伝ってくれない?」
クウガは何か気づき俺達を見る。
「アリシアさん! 188856個目造花がいま出来ました! 後何個つくれば僕は出してもらえるんですか! おや……失礼しました。ボクの名前はクウガと言うらしいです。なぜか牢に入れられて──」
怖い怖い怖い。
この騒ぎの中で数だけは数個増えてる。
ノラが「クロー兄さんの頼みなら」と言ってアリシアが「開けるよー」と牢の鍵を開けた。
開けた瞬間クウガは素早く動き、腕が伸びる。
「なっ!?」
クウガの手は俺の喉を潰し、左手を半回転させた。
七色の魔力の渦がでると、ノラとアリシアをそれぞれ廊下と窓の外へと吹き飛ばす。
「やっと出れた……誰かは知りませんが、貴方の顔をみると吐き気がします。何故監禁されているかは覚えてませんし、ここから逃げるとしても、とりあえず貴方は死んでください」
こ、こいつ……。
狂ったふりをしてたのだ。
閉じ込めら脱出するその時にの為だけに。
自分の痛みよりも俺は喜びが出る。
やっぱすげえは主人公様は。
記憶が無くても敵は敵と認識して女性は手加減して吹き飛ばすだけ。
なお俺の首の骨は最初の一撃でちゃんと折れた。
「なっ! お前!? 首の骨が」
「げっふ……再生するの。覚えて無いか」
俺はクウガの口に薬の小瓶を突っ込んだ。
慌てて離れ口から液体を出そうとする、だろうな。
「あっ窓の外に裸のアリシアが。おっぺえがすげえ」
「何!?」
クウガは息をのんで窓の外を見る。
「誰もいないだろ!」
「だって、嘘だもん」
クウガがよろめき背後の鉄格子に背中をぶつけた。
「クロウ君! ハイ・リザレクションを!!」
「クロー兄さん! まって、今そいつを爆発させる」
両手を使ってどっちも止める。
片方は傷の回復なんだけど、もう片方は物騒な事しか聞こえてない。
ちらっとみると、魔石が握られている。あれって爆発するやつだよね?
この狭い所で使ったら俺もアリシアも吹き飛ぶよ?
「大丈夫だって、クウガの記憶もうもどったし」
「ばぶー」
………………変な声が聞こえた。
いや。きっと気のせいだ。
「ほら。クウガの記憶はもう戻った……戻ったよな?」
「ばーぶー……」
さっきまでのかっこいいクウガはどこに? 親指を口にくわえては足をパタパタしだす。
二足歩行をわすれたのかアリシアとノラに近づこうと。
「うわ、きも」
「赤ちゃんみたい……だよ? クロウ君?」
「クロー兄さん。本当に記憶戻る薬……?」
「当り前だ。この緑のが記憶を戻す薬。こっちの空になってビンに入っていたのが記憶を消す薬だ!」
おかしい。
記憶無くすビンが空なのだ。
「何の騒ぎですか!!」
クローディアが仕事が終わったのだろう様子を見に来た。
その顔はとても怒ってる。
「あああ!! クロー兄さん大変だ! 漏らしたみたい……」
「はぁ? え……うあ」
「クウガ校長!?」
クウガのズボンから染みが出てくる。
「ま、まてオムツはどこだ!」
「それよりもトイレに連れて行かないと!!」
「え。俺嫌なんだけど!?」
「ボクだって嫌だよ!」
クローディアが一歩前に出る。
「何があったのかは後に聞きます。この大きな赤ん坊のおしめですね。わたくしがしましょう。これでも孤児院経験者ですので」
──
────
「あの……記憶消してくれませんか?」
病院着に着替え終わってベッドから上半身を起こしたクウガの第一声がコレである。
俺はクウガに土下座だ。
クウガの前には空の小瓶が2つ。
「本当に色々とごめん!」
そもそもアリシアの一発が大きかった事から始まるのだ。
さらに俺も薬間違えるし
「…………ああ、もう……僕は貴方の土下座を見たいわけじゃなくて……こちらこそ」




