第429話 鑑定士再び
闇カジノに軟禁される事4日。
いい加減アリシアの所に行って合流したい。
が、いまだネクロノミコン問題は解決されていないので動く事は出来ない。
だって……頼みの綱の鑑定士フーロンがまだ来ないんだもん。
あまり時間がかかると、王国にいる俺の恩師の正体がばれちゃう……そんな人いないんだし。
不自由のないゲストルームを与えられて飲食自由。
カジノ遊び放題。
女性との遊び放題。
なんだったら男色も遊び放題。
後半二つの遊びとは男女でトランプとかそういう遊びじゃなくて、何もかも諦めたような眼をした女性や、興奮する目で俺の体を見てくる筋肉マッチョと物理的に遊べるのだ。
当然断ったけど。
浮気とかそういう以前に、バレた後が怖い。
メルナにばれたら『そう言う事もあるじゃろな』と淡々と言われそうだし。
アリシアにバレたら『明日からクロウ君が喜びそうな女性さがしてくるね』になりかねない。
豪華なゲストルームの扉がノックされた。
はいはいはい。と声をかけて開けると出入口には俺を逃がさないための、ひょろと筋肉質の男。さらに小太りの支配人が立っている。
「お引止めして申し訳ない……しかしあれですな。シャワーまで貴重品を持って入るグフ……」
当たり前だ。
敵地だぞ、取られたら困るしまさに肌身離さずだ。
俺がシャワーからあがったら脱いだ衣服が綺麗に畳まれていたからな! 問い詰めたら『衣服の折り畳みサービス』です。とさらっと。
「で。鑑定士は? 俺もあまり恩師を待たせたくない」
「今着いた所ですよ。それで呼びにっグ」
「ほう」
俺を何時でも殺せるようにの配置で廊下をついて行く。
大きな部屋に入ると、黒髪の女性が俺達を見た。
片目が透き通るような青色でその目で鑑定を行う事が出来るのだ。
「これは鑑定士フーロン殿……遠くまでご苦労様ぐふ」
「良く言うわね……入っていた仕事が全部キャンセルされたのは誰の仕業」
「さぁグフフ」
フーロンは聞こえるように「キモ」と短く言うと堂々とした態度だ。
「このアマ! こちらはカジノのオーナー様だぞ!」
「…………まったくだ。慰み者になりたくないなら大きな口開かないようにな」
筋肉男とヒョロ男がフーロンを威圧する。
支配人はゲスな笑い声を出して手で制した。
よくあるシーンなんだけど、これかっこいいと思ってるのかね? 私は三流雑魚です。と言ってるような物なんだけど。
「やめるぐふっ。フーロンよお前に鑑定してもらいたい物があるグッフ」
「いやよ」
お?
「行っちゃ悪いけど、私の鑑定は一流よ! もし偽物を本物と言わせる気なら絶対に鑑定書何て出さない!」
おっふ。
そういえば、フーロンってそういう子だった。
鑑定に絶対な自信を持ってるから、不正は許さない子だったな。
「グフ、別に偽物を本物と言わないでいいでグフ。どちらか本物かを鑑定してほしいぐふ」
自信満々の小太り支配人が宣言する。
「両方とも偽物だった場合の命の保証はしてくれるかしら?」
「………………」
「俺が保証しよう」
小太りが黙ったので俺が前に出る。
「む、お客殿」
「鑑定士も怖がっているし、どんな結果であれ俺が恩師の所まで護衛しよう。どうだろうか?」
フーロンが仮面をつけた俺を見ている。
「誰? 貴方もそうだけど仮面ぐらい取ってほしんだけど」
「お、お客様に何をいうげふ。この方こそ王宮でヒュンケル派の──」
「そこまで! 俺の正体なんて今は些細な事。このネクロノミコンの真贋を問う。それだけだ」
やっぱ勘違いしてるよなぁ。
まぁ勘違いしてもらおう、ヒュンケルとか知らないし。
俺は偽物のネクロノミコンを取り出す。
メルナが込めた魔力があふれ出て部屋の中がピリッとした空気になる。
「す、すごい……何それ……見せて貰っても」
フーロンが一歩前に出るので素早くしまう。
小さい悲鳴が出るとフーロンもこれが気になるのだろう。
「………………鑑定するわ。ここにいても魔力の余波がくるだなんてよっぽどのアイテム」
「グフっ。最初から……おい! こっちも持って来いぐふっ」
筋肉質の男が頷くと、大きな足音を立てて部屋から出て行った。
部屋の中が沈黙を支配する。
「時に。支配人……鑑定士が怯えてるし飲み物でも頼んだら?」
「む、そうですな、ぐふ。おい!」
小太り支配人がひょろっとした護衛に声をかけた。
ひょろっとしたほうは「密室に3人。護衛の意味がない」と文句を言う。
でしょうね。
よくわかってらっしゃる。
この状態で3人にするのは危険だ、俺が支配人を殺すかもしれないだろうし。
「そこの護衛の言う事ももっとも。でも、俺が殺す気だったらもう殺してるよ」
「………………ちっ」
ひょろっとした男が部屋から出て行った。
すぐに戻ってくるだろう。
フーロンは椅子に座り、小太りの支配人も反対側に座る。
俺は小太りの支配人の背後を通るふりをして、顔を隠す仮面を外してフーロンを見た。
「なっ!?」
大声をあげそうなフーロンに俺は人差し指を口元にあてて静かにとジェスチャー。その後に部屋の扉が開く。
ひょろっとした男がメイドともに入ってくると俺を睨んで、すぐに支配人との間に入って来た。
「鑑定士殿、どうなされましたか?」
「え。な、なんでもないわ」
さらに筋肉男も他の人間ともに入ってくる。
ガラス張りの箱に入ったネクロノミコンを持って来た。
テーブルの上に置くと箱のふたを開ける。死臭というか見るだけで鳥肌が立ちそうな魔力が箱からあふれて来た。
流石は本物。
が、先ほど見せた俺のも自信作だ。
俺は反対側に偽物のネクロノミコンをテーブルに置いた。
さて……問題はフーロンが俺の意図を組んでくれるか……頼む!!
まぁ……だめだったら、最悪封印を解くんだけどさ。
この偽物の案は『スミレ』の案である。
じゃぁサクラの案は? と言うと『封印を解く』という案だ。
メルナが掛けた封印だし、解除の仕方もメルナに教わってる。
ようは、こんな危険な物があるから争いが起きるのだ理論。壊してしまえばいい。という狂暴な案。




