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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
六章

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48/57

第48話 喫煙者

6月22日。火曜日。仏滅。

この日学校が終わってから

僕は圭太と良司に用事があるとだけ伝えて

急いで教室を飛び出した。

校門の前で僕は一度足を止めた。

それから振り返って校舎を見上げた。

屋上の縁に立って手を振っている

おかっぱ頭の少女が見えた。

僕は大きく手を振り返した。


校門を出た僕は本所町へ向かった。

『クリーンマート』で

微糖の缶コーヒーを買ってから

2丁目の外れにある一軒家の門を叩いた。


「やあ。

 今日はどうしたんだい?」

書斎に入ると

和服姿にネクタイという

奇抜な格好のスガワラさんが

僕の方へ笑顔を向けた。

僕はスガワラさんの問いには答えずに

「はぁ・・」と溜息を吐くと

パソコンの置かれた机に腰掛けた。

そして缶コーヒーを開けてから

グビグビと喉を潤した。

それから僕は

妻鳥の霊と交わした会話のことを

スガワラさんに説明した。


「ふむ。

 なるほどねぇ」

僕が話し終えると

部屋の隅の木製の椅子に

腕を組んで座っていたスガワラさんが

大きく頷いた。

「ねえ。

 どう思う?

 彼女を突き落としたのは誰だろう?」

「そうだねぇ。

 単純に考えるとしたら。

 小林くんか円くんのどちらか

 となるんだろうけど。

 小林くんは下にいたわけだから、

 除外できる。

 とすれば・・」

「円が引き返してきて

 突き落としたってこと?」

「それが自然だけどね」

「・・でもさ。

 円が犯人とは思えないんだ。

 円響っていう子は学園の理事長の娘で

 『女王様』って呼ばれてるんだけど。

 彼女は絶対に

 自分の手を汚さないと思う。

 やるなら誰かに命じて・・」

口から出た自分の言葉が恐ろしくて

僕は慌てて口を噤んだ。

「ふむ。

 ではその女王様に命じられて

 人殺しに手を染めるような

 クラスメイトに

 心当たりはあるのかい?」

スガワラさんにそう言われて

僕の頭に2人の名前が反射的によぎった。


雲泥万里。

明るい色のショートボブの髪。

やや離れた細い目に

丸い鼻と大きな口。

女子の中では3番目に背が高く、

円や剣野に負けじとも劣らない気の強さ。

やや意地悪ではっきり言って

男子からの人気はなかった。


久瑠凛。

ツインテールに結ばれた緑色の髪。

大きな目と小さい鼻に口。

幼い顔立ちと

クラスで一番背が低い

その華奢な体つきのせいで、

私服の時は今でも

小学生に間違われることがある、

と彼女はよくボヤいていた。


久瑠は兎も角、

雲泥が盲目的に円の命令に従うとは

考え難かった。

それは。

『Dゲーム』の投票の件を考えても

明らかだった。

僕は首を振った。


その時。

僕は妻鳥の話の中で

もっとも大事なことを思い出した。

「あっ!

 煙草の香り!」

僕の言葉にスガワラさんが大きく頷いた。

同時に僕の頭の中は

めまぐるしく回転し始めた。

犯人は煙草を吸っている人物。

それは・・。


九十。


円響。


雲泥万里。


そして・・。


安武マリア。


「どうやら。

 その顔は心当たりがあるようだね?」

「う、うん・・。

 心当たりっていうか。

 1人じゃないんだ。

 クラスの中に4人・・いるんだ」

「驚いたねぇ。

 『聖イノセンツ学園』

 のような進学校でも

 煙草を吸っている生徒がいるんだね。

 昔は中学生で煙草を吸っている子も

 珍しくなかったらしいけどね。

 今は時代が時代だからねぇ」

そう言ってスガワラさんは目を丸くした。


書斎の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「もう1つ気になってるんだけどさ。

 『ミモザ』って・・」

「しーっ!

 誰か来たみたいだ」

そう囁くとスガワラさんは

人差し指をそっと唇へ当てた。

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