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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
六章

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第49話 空き家

僕は大きく息を吸い込んでから、

書斎のドアを押し開いた。

次の瞬間。

目の前に立っている人物を見て、

僕は思わず息を呑んだ。


「げ、幻夜・・!

 ど、どうしてここに・・?」

「学校を出る時の冬至の様子が、

 変だったから尾けてきたけど・・。

 ここは空き家でしょ?」

「う、うん・・」

僕は書斎を出て、

後ろ手にそっとドアを閉めた。

「ねえ。

 隠れて何をコソコソしてるのよ?

 説明しなさいよ」

幻夜はそう言うと、

腕を組んで僕へ訝しげな視線を向けた。

「・・人が来るとマズいからさ。

 一旦、外に出よう。

 近くに公園があるからさ。

 そこで話すよ」

幻夜が眉をひそめた。

「何よ。

 不法侵入しておいて今更・・」

「い、いいから!

 は、早く!」

僕は力強そう言い放つと、

幻夜の手を取って家を出た。


『本所町第二公園』には僕達以外、

犬を連れた年配の夫婦が

1組いるだけだった。

「こ、こんなところで道草を食って、

 店の手伝いはいいのかよ・・?」

僕はやや挑発するように訊ねた。

「言ったでしょ?

 お店はあくまでもお手伝いなの。

 それに。

 出来の悪い三男坊が

 犯罪に手を染めようとしてるのなら、

 それを止めるのは

 居候としては当然の務めでしょ?」

そう言うと、

幻夜はブランコに座った。

僕は溜息を吐いて、

ブランコの前の境界柵へ腰を下ろした。


キーィキーィ


幻夜がゆっくりとブランコを漕ぎ始めた。

「そんなことより。

 説明してもらおうかしら?

 あの空き家で何をしてたのか」

「えっと・・」

僕は幻夜から視線を外して、

そっと額の汗を拭った。

それから。

ゴホンと大袈裟に咳をした。

「『本所町2丁目の惨劇』っていう

 未解決事件を知ってる?」

「あれね。

 ご主人の留守中に、

 奥さんと赤ちゃんが

 殺されたっていう事件ね」

「う、うん・・」

「確か。

 残されたご主人は書斎で首を吊って、

 自殺したって聞いたけど。

 もしかして。

 さっきの空き家が

 あの事件の家なの?」

ゆらゆらと揺れるブランコの上から、

幻夜は探るような視線を

僕に向けていた。

「う、うん」

僕は頷きつつ、

もう一度額の汗を拭った。

「へえ。

 それで?

 その事件と冬至に、

 何の関係があるの?」

「そ、それは・・」

僕は言葉に詰まった。

「そ、そうだ!

 スガワラさんには、

 勉強を教えてもらってたんだ。

 だから・・」

「ふうん。

 だとしても。

 不法侵入の理由にはならないわよ」

「えっ・・。

 あ、ああ・・うん」

「怪しいわね。

 私に何か隠してることがあるでしょ?」

いつの間にか、

ブランコの揺れが止まっていた。

幻夜が真っ直ぐに僕を見つめていた。

その瞳が赤く光ったように見えた。

心臓がどくんと跳ねた。

ふたたび額に汗が滲んだ。

僕はごくりと唾を飲み込んだ。

「こ、こんなことを話しても。

 し、信じないと思うけど・・」

そして。

気が付けば、

僕はまるで何かに

取り憑かれたかのように、

ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出していた。

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