稲妻-8
来週は四天王最後の一頭ドラゴンウイングがデビューする。
龍田仁から電話があり、
「貧乏人ども~よく見ておけ!我ら華麗なる一族の走りを見せてやる」
と一方的に喋って切りやがった。
俺は確信した。こいつは基本的にバカだ。
ただ自分の馬を愛する気持ちは誰にも負けない心暖かなバカなのだ。
天皇賞(秋)の時間になりまた三人でテレビの前に集合した。
1番人気はアドバイザシュート。
2番人気はイーグルショット。
3番人気はヒシガーディス。
レースは先行するアドバイザシュートとイーグルショットが好位置から抜け出しマッチレースの展開になると思いきや、最内からスルッと差し切ったヒシガーディスが勝利した。2着にアドバイザシュート。
勝った滝幸四郎は久々のGⅠ勝利。兄の豊はアドバイザシュートに乗っており兄弟でのワンツーとなった。
翌日のホースニュースに有力馬の今後の予定が載っていた。
☆古馬
アドバイザシュート
ジャパンカップ→有馬記念
イーグルショット
ジャパンカップ→有馬記念
☆3歳馬
デビルカッター
未定
デーモンヒル
香港ヴァース
ヒシガーディス
マイルチャンピオンシップ→香港マイル
アドバイザメモリー
香港カップ
ライラポイント
ステイヤーズステークス
☆2歳馬
ファンタジスタ
エリカ賞
ユリノアマゾン
朝日杯フューチュリティステークス
ロンバルディア
中京2歳ステークス
ドラゴンウイング
11月一週京都新馬
フォークギア
未勝利
ホースニュースにファンタジスタの名を見つける度に、俺の心は躍る。
逆にドリームメーカーの名を見つける度に、不安になる。
この日宝田は医療施設にこもったきりで帰ってこない。忙しいようだ。
コーヒーを入れてくれた瑤子がポツリと言った。
「最近、顔つきが変わったね。」
ドラマに夢中だった俺はびっくりして瑤子を見た。
「あの日…セリでコナンを売らなかった時…凄く嬉しかった。」
なんだ突然?
「本当に感謝しいてます」
おい…ドッキリか?
「そのコナンがもうすぐデビューだし、社長も頼りになってきたし、この牧場は最高ね!」
瑤子の笑顔が眩しかった。
「じゃあ私寝ますね~おやすみなさい。」
瑤子は自分の部屋へと行ってしまった。
しまった!?チューぐらいしときゃあよかった!!
俺はその夜、悶々とした長い夜を過ごすハメとなった。
今度…宝田がいない時…告白しよう…。