哀しみの章1<挿絵あり>
こんなに愛しい者があるとは
「・・・・僕を眠らそうとするの?」
そして、僕を眠らせてカルフォスと月は
一緒に愛し合うのか!!?
そんなことは許せない!
許せはしない!!
身体に精神に呼びかけてくる月の
力をめいいっぱい否定して
太陽は、初めて地上に降りる。
そこは、生命の死に絶えた世界。
星を落とされ雲を落とされ
太陽が生命を否定する世界。
太陽と月が互いにぶつかり合う今は、
照らし出す光は太陽の身を包む灼熱の炎しかなかった。
「カルフォス・・・カルフォス~どこだあ~!!」
「・・・・ふにゃ・・ふにゃあ・・・」
「ぷにゅぅ・・?」
「・・・・・・・・・
カルー・ルミエラ・・・・サフラ、
シルク・フィエル=サフラ・・・か・・・」
目の前で眠っている二人の赤ん坊を
見てカルフォスは微かに微笑んだ。
何だか不思議な気持ちだ二人の自分に良く似た
朱金の髪をクルクルと指でまわして弄んで見ると
小枝の様な細い折れそうな指の
紅葉の手のひらがカルフォスの腕をどけようとする。
「クク・・・」
これが愛しいと言う事なのだろうか?
月とこの子達さえ居れば何もいらない
何でも出来る・・・身を苛む様だった憎しみの心さえ
和らいで居るのが感じられた。
「王!カルフォス様!」
半分悲鳴のような呼び声に顔を上げ
二人のベットを離れそちらに向かう。
「どうした?」
カルフォス達の乗った船は、避難の為国を離れ
より月の影響の強い海へと漂っていた。
「あれ・・・・・あれを・・!・・私達の国がぁ!!」
草木が燃え地響きと共にその目の前で
次々と大地が沈んでいっていた。
「・・・・・・」
愛しい人が向かった空を見上げカルフォスは
静かな怒りを感じていた。
「・・・・カルフォス様・・・これから・・我らは・・・?」
自分達の生きる土地を失い嘆く男を一瞥し
「・・・民は・・・生きている・・」
「・・・え!?」
「民が生きて・・・命があって・・・
・・・希望はある・・・・皆の不安を・・・」
再び視線を消えてゆく大地に戻し
小さくしかし力強く呟くカルフォスの姿を
じっと見つめる。
(この王は変わった・・・・・何時ごろからか
残酷さが、絶対の強さに
表情も崩さない冷酷さが冷静さと頼もしさに)
何時ごろからか強制された訳じゃなく
恐怖じゃなくこの王に付いて行きたいと民の皆が思い始めていた。
「・・・守ってみせる・・・」
『カルフォス!!!!!』
不穏な空に浮かぶ燃え上がるような朱金の髪と
黄金の瞳
「・・・・・太陽・・・か?」
カルフォスの心に怒りが燃え上がる。
太陽の放つ炎は全て月の守護の力で
跳ね返ってカルフォス達の船団を滅ぼすことが出来ない。
「月の・・守護・・・!・・・月の!!」
互いの意思の想いと怒りがぶつかり合い
火花が散る。
「カルフォス!!」
「太陽!!」
船に降り立った太陽とカルフォスの戦いが始まった。




