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第5話「勘の鈍り」

総合ポイント3桁いきました。やだ・・・嬉しい・・・。

ブクマしてくれた方、評価してくれた方、感想を送ってくれた方。本当にありがとうございます。


 前話を少し修正しました。先に前話をお読みください。

 その優男――王国第4騎士団団長、ファマス・バク・デオグリー――は、ただならぬ気配を感じベッドから飛び起きた。

 外はもう真っ暗。村にいる者は見張りをしている彼の部下の騎士を除いて皆寝静まっている。

 まずい、とファマスは思った。騎士を務めて長いが、これ程までの気配を彼は今まで感じたことがなかった。

 恐ろしい。しかし、異常が分かったからには王国騎士としての責務を果たさなければ。

 その一心でファマスは逃げ出したい気持ちを抑え、周りで寝ている騎士に声を掛けた。

 

「おい! お前ら起きろ! 早く!」


 目を覚ました数人の騎士の内ある一人が目を擦りながら、

 

「一体どうしたのです団長。恐ろしい顔をして」


 と、怪訝な顔をしてそう問うた。

 その騎士にはファマスがこれ程まで焦っていることの理由が理解できなかったのだ。何事にも余裕をもって対処する、冷静沈着な男。それが第4団騎士全員のファマスに対する評価であった。


「ルーバス、話は後だ。各員! 完全武装をして10分後に表に集合! その後全員で森へ向かう!」


 騎士たちは皆一斉に準備を始めた。ファマスが命じることに不平不満を漏らす

者は一人もいない。皆それだけ団長であるファマスを信用しているのだ。

 ファマスの視線が、見張りが終わったばかりで未だ鎧を着けたままであった少年に向いた。


「おいダイン! すまないが別の宿舎の者たちも起こしてきてくれ」

「分かりました! 行ってきます!」


 ダインと呼ばれた10代程の少年はその場で片手を腰の鞘に添え、剣をその鞘から少し抜き、キン――という音をたたせまた鞘に戻した。これが王国騎士団式の敬礼である。

 ダインは外へと走り去った。わずか10分の時間であったが全40の騎士が準備を整えることができた。




 第4団が森へ向け、村を出発してから10分程たった。彼らは隊列を組み、その先頭では団長であるファマスが先ほど感じた気配の元へ歩を進めていた。

 団員には集合した際、厳しい戦いになるだろう、とだけ伝えてある。事実を知らない方が彼らのためになると考えて。

 すぐ近くに気配を感じるのだが、一向に見つからないその主。森の浅い所をずいぶんと行き来しているがそれらしい形跡も見つからなかった。

 焦りばかりが募る。一体この気配の主はどこに。ファマスはその時、はたと気付いた。森が静かすぎるのだ。

 この森では時に魔物、少なくとも虫の声がしていたはずなのである。日が沈んで気温は低いはずなのだが、ファマスの頬を汗がつたった。

 そしてまさにその時、ずっと動かなかった気配が動いた。どうやらその気配は、第4団が通り過ぎた森の入り口に移動したらしい。

 ファマスは創造主に祈りを捧げた。もう二度とそうすることはできないだろうと思いながら。森の入口へ彼らは歩き出した。




(確かに近くに強い気配を感じる。しかし・・・)

 ファマスは思った。これ程までの強い気配を持つモノなど本当に存在するのかと。災害ディザスター級の魔物と言うならば納得できるのだが、学者の間では災害ディザスター級は存在しない架空のクラスだという説が有力であるのだ。

 

(もしかしてただの勘違いか? しかし確認するまで油断するわけにはいかんな)

 

 ファマスは丘を登り始めた。自身の腕を信じるなら例の気配はこの先である。

 ついに丘を登りきった。

 

「行くぞ」


 と、ファマスは後続の騎士に静かに告げた。

 そしてファマスは意を決して丘の下にある森の入口に目をやった。




 そこには人影が認められた。その人影にファマスは目を凝らした。



     ――――そこにいたのは恐ろしい程可憐な少女だった――――



「は?」


 ファマスの口から思わず、驚きの声が漏れた。

 目の前にいるのは美しい少女、しかし魔族――人型の魔物の事を特にそう言う――の可能性もある。ファマスは念のため、

 

「そこのお前! こんな所で一体何をしている!」


 と、叫んでみた。

 魔族ならば襲ってくるか、一目散に逃げるかするはず。

 ファマスたち騎士は、その少女の少しの動作も見逃さないよう、じっ、と様子に目を見張っている。

 しかしその少女が取った行動はその2つのどれでもない。少女はファマスたちの姿を見ると気の毒なほど怯えだしたのだ。

 

「すまん皆、どうやら勘が鈍ったようだ」


 と、ファマスは苦笑いしながら騎士たちに言った。

 「構わねぇよ団長。美人は国の宝、ここで彼女を発見できたのは僥倖ぎょうこうだ。レディを守ることこそが騎士の本懐ほんかいだからな」

 と、副団長、レイヴィス・オムニバスが言った。

 

「そうですよ団長。あの娘めちゃくちゃ美人じゃないですか。むしろご褒美ですよ」

 

「流石天然ジゴロの団長です。団長が歩けば美人にあたりますね」


 他の騎士も続ける。


「いや、ホントすまん」


 申し訳なさそうにファマスは再び謝った。


 「団長、早くあの娘の所に行ってやったらどうです。ホント可愛そうなくらい怯えてます」

「あ、ああそうだな。おいダイン! 一緒について来てくれ」

「は? 俺もですか?」

「そうだ。俺みたいなおっさんだけじゃなく年が近いやつがいた方があの娘も安心だろう」

「は! 分かりました」

「じゃあ行くぞダイン」



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 

「こんばんは御嬢さん。私は王国第4騎士団の団長を務めておりますファマスと申します。そしてこちらの彼が私の部下であるダインです」

「どうもダインです」


 ファマスたちは少女の元へ歩いていき、まず初めに自己紹介をした。しかし少女は未だ怯えている様だ。

 

「安心してください。別に我々は貴方を襲う気などありませんよ。ただ今は女性が外にいていい時間ではありません。心配になって声を掛けに来たのです」


 少女はとても安心した表情を浮かべた。

 

「そうでございましたか。私はてっきり口説きに来られたのかと思いました」

「ふっ。御戯れを」


 一瞬彼女は驚いた様な顔をした。一瞬であったため、ファマスやダインはその様子に気付かなかったが。


「しかし今はもう夜が深い。この先に我々が駐留している村があります。そこで夜を越すのが良いでしょう。今ならなんと王国騎士が警備をする、という特典付きです。安全面は保証しますよ。如何いかがなさいますか?」

「ではお願いしてもよろしいかしら?」

「はい、喜んで」


 こうして第4団は森で少女を保護した。騎士たちは少女の美しさに村への帰投中、ウキウキしていたが、警護のため騎士に囲まれていた当の少女は、まるで捕虜のような顔をしていた。

 

 あの強い気配はもう感じられない。ファマスは胸を撫で下ろした。


 森の方角から獣の遠吠えが鳴り響いた。

ダイン君「俺いらなくね?」


お察しの通りファマスは【索敵】持ちです。

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