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第4話「エンカウント」

TSの業は深い。

10/27 修正しました。


「信じられぬ」


 アザーテュは銀髪と翼を翻しながら空を滑空している。下には大きな森がある。

 出来の悪い頭に鞭打って先ほどの出来事思い返してみた。

 無意識に取り出せるアイテム、WOYでは再現できなかったはずの現象、そして何より実験のつもりで舐めてみた王の血が意外と美味しいという事態。

 ここが異世界だと信じられないし、信じたくない。いくら厨二病のアザーテュと言えども今では立派な27歳児なのだ。そんな痛々しい妄想などここ3年はしていない。

 しかししきりに顔を撫でる風が、もしかしたら・・・とアザーテュに考えさせる。


「いやしかし、そんなはずは・・・」


 空を飛び始めておよそ15分、その間ずっとアザーテュはこの思考をループさせていた。

 うーむ。うーぬ。いやしかし。むー。

 何度唸ったことだろう。空を飛び始めて20分が経とうとした時、ある冴えた閃きがアザーテュの脳髄を貫いた。

 

 ――そうだ、胸を揉もう――


 VRヴァーチャルリアリティーは性的描が厳しく規制されていた。

 WOYでも胸を揉むのはもちろん、キスや、過度なボディータッチも垢バンの対象だった。ということはつまり胸を揉めればここは現実だということになる。

 アザーテュは一旦停止し己の胸を見た。大きすぎず小さすぎずまだまだ将来性ポテンシャルを感じさせる形の良い胸が、漆黒のドレスの上からでも確認できる。

 

「すーっはーすーっはー」


 自然と鼻息が荒くなる。それも当然だろう。なぜならこの胸は杉並が一番こだわって造りこんだ部位なのだから。自分にとってまさに頂上たかみがそこにあるのだ。アザーテュの興奮はこのとき最高潮に達していた。

 右手で右胸を軽く鷲掴んでみた。風船のようなハリのある抵抗が返ってきた。しかしこれでは決定打には薄い。

 管理システムがうっかり見逃しちゃってるだけかもしれないのだ。ここは思い切っていこう。

 アザーテュは意を決して双丘のせんたんをつまんでみた。

 

「――っんん」


 鋭い刺激にアザーテュの体は強張り、嬌声が口から漏れた。


「あぁ・・・あっ・・・」


 アザーテュは理解した。ここは現実リアルだと。そして己の短剣エクスカリバーを一度も鞘から抜くことなく少女の体になってしまったのだと。






 数十分の意気消沈の後、アザーテュの思考は再起動した。仮に十歩譲って自分が今異世界にいるとして――心のどこかではやはり認めたくない――いつまでかは分からないがこの世界で生きていかなければならないのだ。

 

「早急に必要なのは情報と拠点じゃが・・・」

(そう言えば、王様が僕のことを神の御意志に背いた使徒とか何とか言っていたけど一体何のことだろう。僕のことをしっている様だったけど・・・って、あ! 王様に色々聞けば良かったんじゃないか! 国王なら色んな情報を持ってたはず)


 アザーテュは、はぁ、と溜息をついた時だった。


 「っ!」


 アザーテュは少し遠くに多数の人の気配を感じた。

 森を抜けたその先に明かりが見える。なぜ気配を感知したのかは分からないが、ちょうど良い、恐らく村だろう、と当たりを付けて情報収集とあわよくば拠点確保のためアザーテュは村を目指すことにした。

 

 アザーテュは村の近くにある森の入り口に降りたって翼をしまった。ふと気になって背中を見やるが漆黒のドレスに翼の開けた穴は見つからない。

 さあ行こう、と歩を進めようとして気付く。あまりに森が静かすぎると。

 そしてアザーテュは違和感を感じた。


 なぜ王国民は異常な程に自分を恐れたのか。


 なぜ自分は遠く離れた人の気配が分かったのか。


 そしてなぜ森がこんなにも静かなのか。


 そしてアザーテュは1つの可能性に気付いた――パッシブスキルである。アザーテュの持つパッシブスキルの中に【魔王の風格】【威圧】【索敵】と言うものがあったが恐らくそれが原因だろう。

 【魔王の風格】はレベル依存の確率で魔物の場合は降参、勇者の場合は【恐怖】のバッドステータスを与えるスキル。

 【威圧】もレベル依存の確率で相手のステータスをダウンさせるスキル。

 【索敵】は周囲にいるプレイヤーおよびNPCの気配を探るスキル。

 アザーテュはオフと念じると【魔王の風格】と【威圧】のスキルをオフにすることができたのを感じた。

 良し、これで村人さんたちとちゃんとお話しできるぞ。

 そう思い今度こそ歩を進めようとしたその時、


「そこのお前! こんな所で一体何をしている!」


 声がした方を見てみると10メートル程先の丘の上に頬に傷のある爽やかな騎士が怒った様な顔で尋ねてきた。

 その騎士の後ろには多くの騎士が控えている。彼らが装備している鎧のすべてがアザーテュがユーバスで見た鎧と種類が全く同じだった。


(スキルいじるのに夢中で気配にまったく気付かなかった! まずい、よりにもよって王国の騎士だ。終わった。ただ情報収集と拠点確保だけが目的だったのに襲われてしまうっ)


 ユーバス王国の首都シュバーユでの自分の悪行を思い出しアザーテュは人目も気にせず慌てふためいた。

小説家になろうでは○○《ルビ》と打つことでルビを振ることができるのですが、これが意外と面白く必要以上にルビを振ってしまいます。

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