第3話「赤赤赤赤」
書き間違えを修正しました。
×人間を御造りになった原初の神の
○世界を御造りになった原初の神の
王――クーデル・シューディン・レラ・ユーバス――は先ほど見た少女の美貌を思い出し確信した。美男美女が多かったとされる100人の使徒、その中でもアザーテュは群を抜くほど美しく、その美貌は創造主と並ぶ程だったと言われている。つまり目の前にいる少女がかの悪名高いアザーテュに相違ない。
「アザーテュ! アザーテュだと! 神の御意志に背き! 世界を混沌に導こうとした使徒が! 今更何の用件で神の御加護が溢れるこの国にやってきた!」
「神の御意志ぃ? 使徒ぉ? お主の言うことはさっぱり分からぬな」
「とぼけるな!」
王は閉じていた眼をカッと見開きアザーテュを睨みつけた。
「ほお、単なる腑抜けかと思うとったが意外と根性があるではないか」
カカカ、と愉快そうに笑った。
「うーむ、もう1つ尋ねたいことがあるのじゃが、良いか?」
クーデル王は何度も何度も頷いた。
「儂とは小僧・・・いや人間たちにとってどのような者なのじゃ? さっきのお主の口ぶり、まるで儂を知っておるかのようじゃったが」
「人類の敵であり絶対の悪! 神の御意志に背く愚か者だ! この痴れ者め! ぐぅっ」
アザーテュは左手で軽く王の頬をぶった。王の口の端からは血が流れ始めた。
「ニンゲン、少々口の利き方がなっておらんのではないか?」
月の光に照らされて、アザーテュの瞳は恐ろしいほど鋭く光った。
「も、申し訳ない!」
「うむ、まあ良かろう。儂は器が広いのじゃ」
うーむ、と考えにふけりだすアザーテュ。
他の王族たちはヴァンパイアに頭を鷲掴みにされたクーデル王を心配そうに見ていた。王が殺されれば次は自分の番かもしれぬ、と。
そこに馬の蹄の音と金属がぶつかり合う音がし始めた。乗馬した騎士が見えるだけでも30人程見える。どうやら軍がやってきたらしい。
「王ー! 御無事でいらっしゃいますかー!」と、先頭で馬を走らせる男が言った。100メートル以上離れていたのにもかかわらず、男の声はしっかりと聞こえた。
「どうやら潮時みたいじゃな」
その言葉に王は気付かれないようにそっと胸を撫で下ろした。
「小僧、名を何という?」
「は?」
「名じゃ名」
「ク、クーデル・シューディン・レラ・ユーバスで、である」
「そうかクーデル、名は覚えたぞ」
アザーテュは王の口の端から流れる血をぺろっと舐め上げた。
「意外と美味であるな」
子供や若い女の血を啜ると言われる吸血鬼、そのアザーテュに男である自分の血が美味いと言われ、気味の悪さのあまり王は声にならない悲鳴を上げた。
アザーテュはそんな王を怪訝な目で見た後、王の頭を放してやった。王は無様にも膝から崩れ落ちた。
しかし他の王族たち、そして逃げ遅れ、事を見守っていた王国民もそれを咎めたりしない。自分たちも無様な恰好をしていると気付いているのだ。かのアザーテュに対し口を利けるだけでもクーデル王は剛健であると、心の中で皆王を賞賛していた。
アザーテュがすっと目を閉じる。
それだけで周りにいる王族と王国民には気温が5度も10度も上がり、先ほどから感じていたアザーテュの圧力も一回りも二回りも小さくなったように感じ、安堵の溜息をついた。しかし次の瞬間、彼らの顔は驚愕の色に染め上げられる。
アザーテュが背中から全長4メートル程の大きな翼を生やしたのだ。
彼女の翼には妖しい光沢が認められた。誰もがあの翼が、自らの信仰する神が持つ翼と同じものだと瞬時に理解した。世界を御造りになった原初の神の、いと尊き翼がそこにはあった。
しかし彼らは混乱した。その翼が神聖な白ではなく腐り始めた肉の様な赤なのだ。
自らの神が侵されている様で虫唾が走ったが、腐ってもやはり神の翼、皆がその翼に心を奪われた。
アザーテュは長年の封印から解放された自身の腕の鈍りを確かめているかのごとく、翼を二度三度はばたかせてみせた。
「使えるのか心配じゃったがどうやら大丈夫な様じゃの」
アザーテュは月に向かって一直線に飛び立った。 齧りかけの林檎と抜け落ちた数枚の羽根を残して。
自業自得ですが、アザーテュってタイプしづらい。
次話は21時予約投稿します。次話では1つお決まりをやります。期待していてください。