第85話 クラブ
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
今回はセツの目線から、始めさせていただきます。
では、どうぞ!
〜セツSide〜
日付けか変わる30分前、アタシは指定されていたクラブの入場列に並んでいた。
列が出来る程に人気のあるクラブ、っという訳でない。
アタシが入ろうとしているクラブは、セキュリティ面が非常にしっかりとしているところだ。
「身分証明書の提示をお願いします」
アタシは在留カードを取り出して、スタッフに見せた。
「ありがとうございます。では、2.800円お支払いは何でなさいますか?」
「現金で」
薄い折りたたみの財布から、3.000円を渡して、200円のお釣りを貰い、その200円は、震災義援金と書かれた貯金箱に入れる。
「では、こちらのゲートをお潜り下さい」
金属探知機のゲートを潜って、アタシは奥へと向かい、防音がシッカリした扉を開けた。
薄暗いクラブの店内は、体に振動が伝わるほどに大音量の音楽が流れて、赤と青、緑色のレーザー光り、時スモークが噴射して会場を盛り上げる。
会話するのにも、耳元で喋らなければ聞こえない。
タバコと酒の匂いが鼻につき、大画面の前でDJ達がクラブを盛り上げる為にディスクを回す。
来場した者達は、音楽とDJの掛け声に盛り上がり、小躍りしたり、音楽に合わせてダンスを披露。
盛り上がりが高まった時、DJ達の前にあるお立ち台に、黒いセクシーな衣装を身に着けたダンサーが登って、艶めかしく腰をクネらせ、衣装をめくって観客のボルテージを上げ、おひねりが飛ぶ。
「一万円もらいましたー!!」
大画面には10.000と大々的に出されて、盛り上がりがさらに高調する。
ダンサーの胸元、網タイツ、衣装のスカート縁に一万円、五千円、千円札が挟まれて、気分を良くしたダンサーがさらに艶めかしいダンスを踊る。
約束の時間まで少し時間がある。
アタシは酒が提供されてるカウンターに行って、コロナビールを買って、瓶に口を付けて一気に飲み干した。
何人かの男達の視線が刺さる。
どうせ、「胸は無いけど、良い尻してる」とか言ってんだろうな。
飲み干した瓶をカウンターに返して、指定された場所で待とうとした時、正面から地雷系のファッションをした女の子が、アタシに声を掛けてきた。
「あの、セツさんで合ってますか?」
「……アンタは?」
「お迎えです♡」
なんだよあの野郎、既に来てたのか?
「VIP席で待ってますよ」
可愛く案内してくれる地雷系の女の子に連れられて、アタシは2階のVIP席へと足を運んぶ。
少し進むと、そこではソファの上でふんぞり返ってる男と、その両隣を清楚系とギャル系の女の子2人を侍らせていた。
「相変わらずの女好きだな?」
「イヤイヤ、ここはこうやって楽しむところでしょうがw」
「基本的にダメなんだよ」
VIP席は、プライベート空間に近い。
仲間の男達の隣にも、タイプの違う女の子が1人付いていて、コイツ等は女の子の胸や尻を揉んだり、対面座位で座り合って大人のキスをしたり、酒を回し飲みして楽しんでいた。
無論、本来ならそういう事はやっちゃダメだ。
「で? 依頼してた情報は仕入れられたのか?」
「もちろん、ちゃんと調べたけど………Yo, what the hell exactly estás nach was bist du chasin' za quoi tu poursuis, huh?」
女の子達にセクハラしながら、目の前の男"Grey Ghost"は、アタシに問い掛けた。
英語に聴こえるが、コイツの扱う言語は独自のモノ。
英語をベースにしているが、イタリア語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、日本語と5つの言葉を混ぜて創った造語。
たとえ翻訳しようにも、この言語を翻訳するなら10年くらい時間がかかるし、AIで翻訳しようにも、いずれかの言語に引っ張られておかしな文章になってしまう。
スラングも入ってるから、尚の事難しいだろう。
『あの女、何をどうしても必ず尾行に気付かれた。部下も10人くらいは死んだと思う』
『思う?』
『死体どころか、遺留品すら見つからなかったからな』
思ってたよりも多く死んだか………。
アイツは自身の周りを、霊で監視してるからな。
情報を得ようとしても、即座にバレる。
事前に話しておいても、そのくらいの犠牲は出たか。
『事前に聴いてたとはいえ、まさかここまでの被害が出るなんて、夢にも思わなかったよ』
『そりゃ悪かったな』
『まぁ、事前に聞いていたから、死んでも問題無いクソを使った。コッチに実害は殆ど無いから、別に構わねえよ』
捨て駒にする奴は、ちゃんと選別していたらしいな。
そしてGrey Ghostは、1枚の封筒とRainでダウンロードデータのURLを送る。
アタシは封筒から1枚の紙を取り出して、URLをタップしてカメラモードを起動する。
そして封筒の紙を、ある手順にそって折っていき、折り紙のツルを作り上げた。
ソレをカメラに読み込ませると、"認証"の文字が出て、それをタップする。
すると、画面にバグり散らかしたような文字の羅列が出てきた。
一見すれば、スマホにウィルスが入り込んだと思うだろうが、画面の四隅を指でなぞって、ZAYGとスマホ画面に書くと、バグってた文字が"報告書"になっていく。
「相変わらず、面倒くさい暗号の解き方だな」
「大切なメシのタネだからな」
情報漏洩のリスクとはいえ、よくこんな面倒くさい事を考えるもんだよったく。
愚痴りながら、アタシは報告書を読み進める。
あの時、フレネの腕を治す為に"アソコ"って言ってた。
アイツ等の言う"アソコ"は何なのか、アタシはこのGrey Ghostに依頼して情報を集めさせていた。
そしてフレネの情報を渡して、アイツと接触のあった人物が誰なのか探ってもらっていたが……
「殆どパパ活オヤジじゃえねか……」
いつ、どこで、ナニをしてたのか、詳細に書かれててウンザリしたが、何人か気になる人物もいた。
1人は、大手の中古車販売修理会社の社長。
過去、修理費を水増し請求したり、修理箇所をスタッフが作って、無理矢理請求金額を上げたり、売りに来た車を安く買い叩いたりしてたことがスッパ抜かれてた。
今は社名を変更して、先代社長から今の社長になったと聞いていたが、社内体質は変わってなくて、今も同じような事を、隠蔽しながら営業している。
そしてもう一人は………
「……官僚?」
そう、日本の庁舎に勤める"ある官僚"と書かれた一文だった。
コイツだけ名前が分からず、住んでる場所も分からない。
「コイツだけは、何をしても分からなかった。分かったことは、日本のどっかの官僚って事だけ」
政治家なら顔を公開しているから分かるのだが、官僚となれば別だ。
奴等は国家公務員のエリートで、国の中枢を担う連中。
そんな奴がフレネと接触してるんだ。
嫌な予感がする……。
この事はとりあえず、頭の中に入れて置いて、次の情報を見ていくと………
「!!」
ある部分が目に留まり、アタシの心臓が少し跳ね上がった。
「オイ」
Grey Ghostに声を掛け、奴の眼と合わせる。
「コレは、間違いナイんだな…?」
射殺しそうな目つきで、Grey Ghostに問いを投げる。
奴は少し間を置いてから「間違いないよ」と肯定した。
(ワォ、久しぶりだなぁ、あのブレッドウィッチが怒るなんて)
店内のボルテージが上がり、周りの人間が喜声を上げて、盛り上がりを魅せる中で、アタシの周辺だけ、温度が5℃程下がっていた。
書いてあるものに、アタシをこの闇の世界へと誘った、元凶の名前がそこにあった。
2026年8月1日
グリムネストの幹部数名と接触。
ワゴンの中から、数名の幼い女の子を提供。
バキッ
怒りのあまりに、スマホを握り潰してしまう。
「………連中は、今どこだ?」
「悪いが日本にいないぜ」
「そうか、なら追加依頼だ」
アタシは殺気を込めた視線を、Grey Ghost向けた。
「子供達が、どこに居るのか調べろ」
「りょーかい、前金よろしくね?」
やり取りを終えると、アタシは握り潰したスマホを床に放り投げて、踵を返してクラブから出て行った。
ある程度、アタシの事情を知っているGrey Ghostは、アタシが店から出て行ったのを見送ると、冷や汗をドッとかいた……。
「ハァ、ヤバすぎだろアレ?」
そう言うとコイツは、コロナビールを一気に飲み干してから、さっきの事を忘れる様にして、酒とタバコと女の子に興じていったが、
(コリャ適当な仕事は出来ないなぁ、下手すりゃオレの命が危ねえわ)
アタシのヤバさを身を持って再確認して、前金を確認次第、仕事に取り掛かろうと決めた。
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その帰り道、路地裏に入り込んで、アタシはタバコに火をつけてクールダウンしていた。
ガラムのキツい香りが広がり、パチパチ音を上げながら肺にガツンとくる。
が、全然怒りが収まらない。
「クソが……」
今だから、まだこの程度で済んでるが、あの変態共が、この日本に来ていると知って、自分が奴等にされた事が、否応無しに蘇ってくる……。
アレからずっと、グリムネストの連中を殺してきて、数も減ってきた。
グリムネスト以外にも、こういう組織はゴマンといるが、奴等だけはアタシが絶滅させると決めてる。
このまま帰ったら、部屋の中で暴れ回りそうになる。
(落ち着け……落ち着け……)
心の中で自分にそう言い聞かせて、タバコも5本くらい一気に吸って、ようやく落ち着いてきた。
そして、仕事をしてくれたGrey Ghostに対して、殺気を向けてしまった事を後悔してた。
アイツは仕事をしてくれただけだ。
そんな奴に対して、殺気を向けるてしまったのは、ただの八つ当たりだ。
少しづつ、前に進んでるとはいえ、アタシもまだまだだな。
そうやって反省会をして、もう一本タバコを吸ってから帰ろうとした時だった…。
「よぉ、探したぜねぇちゃん?」
路地裏の影から、複数の半グレみたい男達がやって来る。
それも挟み打ちで。
「なんかようか?」
「ねぇちゃんさ、あのクラブのVIP席から出て来てただろ?」
「なんかあったのかな〜って思って、心配して付いてきちまったんだ〜w」
どうやら、クラブの中にいた連中のようだな?
「…心配してくれるのはありがたいが、だったらこんな狭い所に、そんな人数で来なくてもよくないか?」
「え〜?だってさ〜、男1人じゃこのあとの展開がさ、盛り上がらねぇじゃん?」
「そうそうw このあと楽しむんだから、いっぱいいた方が良いでしょって話し♪」
そう言うと、男共はポケットやカバンから、ナイフや強化プラスチックの警棒を取り出してきた。
………あぁ、コイツらそういう連中か。
アタシがVIP席に行って、そこから出て行ったのを見て、尻軽とでも勘違いしたか。
しかも、良からぬことを考えてるみたいだな?
「そろそろ帰る所なんだ、退いてくれないか?」
優しく言ってる内に、引いた方が身のためなんだが、どうやらこの馬鹿には通じなかったみたいだな。
「ダ〜メ! ちょっと気持ちいい事と、お金になる動画を撮らせてくれたら、帰してあげるからさ!」
今までこうやって、脅してきたんだろうな。
手慣れた動きで、アタシの首にナイフを突き付けてきた。
気持ち悪いし、気分悪いし、今夜は踏んだり蹴ったりだな。
それに、ナイフや警棒を出したんだから、ちょっとアタシの八つ当たりに付き合ってもらおうか?
手始めに、アタシは首にナイフを突き付けてる馬鹿の手首を掴むと、小手返しで一気に投げる。と同時に、馬鹿の後頭部がコンクリート当たる瞬間に、アタシの厚底で顔面を踏み抜く。
「ゴペッ!?」
そして一足飛びで2人目の眼前まで迫る!
「え、はや……グゲッ!」
顎を蹴り上げて脳を揺らした。
その拍子に、男の前歯にヒビが入って、歯茎から血がしたたり落ちる。
一拍置いてから、残りの男共が激昂してアタシに襲いかかる。
けど、こんな狭い路地裏で道を塞ぐようにして襲い掛かったら……
「なっ、飛ん…ブッッ!?」
「ぐぎゃっ!?」
三角跳びの要領で、一気に背後を取って踵を落とす。
頭頂部にある"百会"というツボににクリーンヒットしたら、男の耳から血と透明な液体が出てきた。
最後の1人は警棒を振り上げてきたから、振り切らせた直後、伸びきった肘を逆に折り曲げてから、流れるようにして鳩尾に猿臂…まぁ肘を捩じ込んだ。
アッという間に半グレどもを制圧して、多少はイライラも解消出来たな。
「ずいぶんと強い姉ちゃんだな?」
………今日はよく声を掛けられるな。
声のする方向を見ると、見るからにヤクザといった風貌の男共が、路地裏の影から沸いて出てきた。
今日は厄日かなんかか?
「おっと、警戒しなくていい。
俺達は壬生組の者で、俺は片山 旭ってもんだ」
片山と名乗ったヤクザは、両手を上げて、アタシに害は及ぼさないとコミュニケーションを取ってきた。
まぁこの態度とか色々見る限り、確かにその気は無さそうだが……いったい何の用だ?
そう疑問に思っていると、片山というヤクザは、アタシが叩きのめした半グレを渡してくれと言ってきた。
「コイツ等、ここら辺で悪さをしてた連中でな、粛清する為に探してた所だったんだ」
どうやら、アタシにやったような手口で、女の子を脅して、その動画をネットで売りさばいてたらしい。
その中に、壬生組ボスの娘までもが入ってたとか。
ご愁傷さま、としか言いようがないな。
「偶然とはいえ、そこのクソ共をコッチに渡してくれたら、ありがたいんだが」
片山は眼光鋭く、アタシを睨みつける様に、だが口調は優しく言ってくる。
こっちとしては、このゴミを処分してくれるのならありがたいと、どうぞどうぞとアッサリ引き渡した。
「礼を言う」
「かまわねぇよ」
片山が指示すると、部下達はそそくさとゴミを担いで、路肩に停車しているバンに詰め込んでいく。
帰り際に片山が、私に名刺を渡して「もし何かあったら連絡をくれ」と言い残して去っていった。
とりあえず、今日知った事は龍太郎や朱里と共有するか。
あと、壊しちまったスマホの再契約だな。
あのデータは、ベアードのクラウドに自動保存されてるから問題無い。
でも、スマホ一つで30万かぁ………。
金はあるとはいえ、痛い出費だ。
自業自得だけど…。
久しぶりのグリムネスト。
どう絡んでくるのか、お楽しみに∠(`・ω・´)




