嵐の名残り(皇帝の計画)
「よし。今年の新年は忙しくなりそうじゃ。ヒメラ領地の討伐は春まで延期しよう。それまでにキャラニ周辺の状況を安定させるように努めてもらいたいのじゃ。わしも交渉で解決できるかどうか試してみるつもりじゃ。多くの貴族が首鼠両端じゃ。表向きは皇室に忠誠を誓いながら、密かにヒメラ領地に物資を提供しているのじゃ。中には軍隊を派遣して、志願者として支援している者もいるのじゃ。彼らは皆、これは家族から独立した子弟の個人的な行動だと言っているが、わしには手が出せないのじゃ。前線の状況はどうか知っているか?」皇帝陛下が尋ねた。
「ダシアンが私を迎えに来てくれ、前線の戦況について話し合いました。ヒメラ伯爵は五人の男爵と三十人以上の騎士を従えており、領地軍隊の主力は400名余りの重騎兵と600名余りの軽騎兵です。領地の人口はおよそ20万人で、平民を動員すれば最大二万余りの部隊が集まります。部隊の規模だけを見れば、普通の辺境伯爵領と同じです。しかし、最近彼らは他の貴族の支援を受け、大量の物資を備蓄しています。さらに400名以上の貴族からの志願者が加わり、これらの者たちは皆騎士や精鋭の重騎兵としての戦闘力を持っています。アウレルの反乱時に皇城の空を封鎖したグリフォン騎士たちも彼らに加入し、グリフォン騎士の数も100名以上があります。これらのグリフォン騎士は非常に厄介で、空中から攻撃を仕掛けてくるため、我々の歩兵が陣を組むのが困難です。私たちのペーガソスライダーも頻繁に阻止されています。現在陛下の部隊の主力はダシアンが率いる辺境軍です。人数はおよそ3000名、そのうち重騎兵は600名余りです。さらに周囲の貴族領地から約2000名の部隊が派遣され、私も1000名の部隊を禁衛軍団から選抜し、彼らに派遣しました。人数では優位に立っていますが、地形では我々は完全に劣勢になっています。さらに、我々の兵士は異なる部隊から集められていますから、貴族領の部隊も戦意が不足しています。そしてヒメラ伯爵領が動員した民兵を加えると、むしろ我々が劣勢に立たされているのです。ダシアンの現在の部隊ではヒメラ伯爵領を平定することは難しいと思います。」父親が言った。
「では、ヒメラ伯爵の反乱を平定するにはどうすればよいと考えているのか?」皇帝陛下が尋ねた。
「陛下、率直に申し上げます。反乱を平定すること自体は容易ではありません。ヒメラ伯爵領の西側にはパイコ領の山々があります。南北の両側は他の貴族領との境界であり、巨大な山脈が広がっています。山脈を越えるのは現実的ではありません。我々は東側からしか攻めることができませんが、ここではクラシス川の渓谷を越えなければなりません。平時には橋を渡ることができますが、今は橋がすでにヒメラ軍によって破壊されました。川を渡れる場所は限られており、ダシアンは何度か試みましたが成功しませんでした。現在クラシス川の東側を封鎖するしかありません。」父親が答えた。
「攻め込まなくて、封鎖だけを続けるとどうじゃ?」皇帝陛下は眉をひそめながら尋ねた。彼は明らかに考え込んでいた。
「ヒメラ伯爵領はもともと穀物の産地であり、いくつかの盆地で構成されています。城は最大の盆地に位置しています。クラシス川は盆地をつなぐが、途中には多くの滝があり、航行は不可能です。したがって、ヒメラ伯爵領の穀物を外に運び出すのは難しく、平時でも裕福ではありません。ですが穀物の大産地として、彼らは封鎖されても恐れることはないでしょう。しかし、彼らは現在100頭以上のグリフォンを飼っている。それが彼らの財政と家畜にとって災いとなるでしょう。ヒメラ伯爵領はこれほど多くのグリフォンを養うことができないと思います。そう遠くないうちに、グリフォンたちは自ら飛び去っていくでしょう。」父親は分析した。
「本当に飛び去ってくれたらいいのじゃ。どうやら交渉で問題を解決するのは難しそうだ。大幅な譲歩をしない限りはな。しかし、彼らがどんな条件を出してくるのか、わしも興味があるのじゃ。」皇帝陛下は言った。
「いずれにせよ、私は陛下に勝利をもたらすことを喜んで行います。」父親が頭を下げて言った。
「その時はお前がキャラニを守り、主将はダシアンかマティアスになるだろう。」皇帝陛下はお茶を一口飲んだ。
「失礼ながら申し上げます。ダシアンは防衛に適していますが、マティアスは教科書通りに指揮するだけです。マティアスの選択はすべて正しいが、最終的な結果が良いとは限りません。」父親は厳しい表情で言った。
「それでも仕方がないのじゃ。辺境の貴族領と比べると、明らかにキャラニがより重要じゃ。この件はその時に決めるとしよう。わしの話は以上だ。軍隊が戻るまでに、レオンティオとイオナッツを見舞った後、しっかりと休むように。軍隊が戻るにはまだ二日かかるじゃのう。」皇帝陛下は不満げにもう一口お茶を飲んだ。
「ありがとうございます、陛下。今日は私のリュートをお聞きください。ルナ、あなたは私の踊りの伴奏をしてくれますか?」父親が突然言った。えっ、聞いていないよ、そんなことは!
「私は隠し通路が怖いです。アウレルがその隠し通路を通って兵士たちを引き入れたの。」私は本来の声で小声で言った。
「心配しなくても大丈夫じゃ。親衛隊に隠し通路を点検させておいたのじゃ。ちょうどそのことを伝えようと思っていたのじゃ。親衛隊に隠し通路を再整備させるつもりじゃ。ルナ、お前の服はそこのキャビネットに入っている。」皇帝陛下は顎で会議室のキャビネットを指した。えっ、なぜ私の踊りの衣装が内閣の会議室に置いてあるの?考えると、毎回内閣が私の踊りの衣装の隣で会議をしているのだと気づき、私は顔が真っ赤になった
父親は笑顔で立ち上がり、そのキャビネットからリュートを取り出し、私の衣装も取り出してくれた。私は彼を睨みつけたが、結局隠し通路に行って着替えた。蝋燭にしっかり火を灯した。隠し通路は前回に比べて血痕が増え、血の匂いもすごし残っていた。皇帝陛下がこんな場所で寝るとは思わなかった。少し同情した。
私は衣装を着替え、父親もリュートの調弦を終えた。彼は私を見つめ、「ルナ、今日はリノスの剣舞を披露しよう」と言った。
「でも今日は的もリンゴもありません。」私は答えた。
「最後の動きは省略すればいいさ。」父親は言った。確かに、私はこの技を使って皇帝陛下の目の前でアウレルを倒した。それを再び彼に見せるのはよくないだろう。
「ルナ、今日はなぜウィッグを着けていないのじゃ?」皇帝陛下が尋ねた。
「今日は頭に傷があり、そして剣舞では髪を振り回す動きがないからです。」私は説明した。
父親が前奏を奏で始め、私は剣舞を踊り始めた。同じ皇城で、数日前には命がけの激しい戦いが行われ、その痕跡が今もそこかしこに残っている。しかし、今は父親の伴奏に合わせて、子供の頃リノスの宮廷で踊っていたように、優雅に舞うことができる。戦闘時の緊張感は全く感じられない。なんて不思議なことだろう。父親が戻ってきたからだろうか。えっ、いつから私は父親の側にいるだけで安心感を覚えるようになったのだろう。数年前には彼を見ただけで緊張して息を忘れてしまったというのに。
違う、違う。なぜ私はキャラニの皇城でヤスモスの城の気持ちを感じてしまうのか?私は頭の中の考えを押し込み、剣舞の動作に集中した。父親のリュートの音色と私の動きに合わせ、皇帝陛下も目を半閉じして揺れ始めた。ふと、皇帝陛下の目から涙がこぼれ、頬を伝い、服に落ちたことに気づいた。しかし彼はそれを気にせず、私の舞いを見つめながら静かに頭を揺らしていた
「父親。フィドーラ殿下が以前、私にグリフォン軍団に入ることを希望していると言っていました。グリフォン騎士の訓練を受けさせていただけますか?」私は舞い終わり、服を着替えた後、再び会議室に戻って朝食を食べながら尋ねた
「もちろんだ。現在グリフォン軍団にはヒメラ伯爵領に逃亡した者が多く、人手不足に悩んでいる。ロレアノに知らせておこう。ああ、彼はグリフォン軍団の新任軍団長だ。」父親が言った。
「ありがとうございます、父親。陛下、父親、もう一つお話ししたいことがあります。フィドーラ殿下が以前、ルナとシルヴィアーナに会いたいと言っていました。また、ユードロスがルナの婚約を解消するよう陛下にお願いし、フィドーラ殿下がルナとユードロスを結ぶよう私に頼んできました。私はどうすればいいでしょうか。」私は尋ねた。
「それで、お前はどうしたいんだ?これはお前が女性の身分に戻る機会かもしれない。」父親は食事をしながら言った。
「どうしてですか?」私は尋ねた。ルチャノとしての役割を果たす必要はないのでしょうか。
「ユードロスはオーソドックス貴族の出身だ。彼の保護を受ければ、他のオーソドックス貴族もお前に手を出すことはできない。しかし、その場合は私が新しい後継者を探さなければならないかもしれない。」父親は言った。私はよく分からないまま頷いた。ルチャノが消えるなら、父親は確かに新しい後継者を必要とするだろう。しかし、なぜオーソドックス貴族が私に手を出さなくなるのだろうか。
「オーソドックス貴族たちは権力を失いたくないために、旧王国の王族を殺害したのじゃ。わしは本来、旧王国の王たちを帝国の公爵にして、帝国内でオーソドックス貴族以外の勢力を育てようとしていたのじゃ。その計画が成功すれば、オーソドックス貴族が内閣と議会を支配する現状を変えることができるかもしれなかったのじゃ。オーソドックス貴族の最高位は侯爵であり、旧王国の王たちは領地を持つ公爵になることができた。旧王国も帝国との経済的な結びつきを深めることができたのじゃ。商路が国境線によって遮断されることはなくなったから。旧王国の王族にとっても旧王国にとっても双方に利益がある状況だった。オーソドックス貴族だけは権力を失い、土地も増えなかった状態じゃ。リノス王国を除く北方諸国の王族は、わしの条件に密かに同意していたのじゃ。それがわしが統一戦争を開始した理由じゃ。戦争とはいえ、むしろ進軍だけじゃ。しかし、その後の出来事はお前も知っている通りだ。オーソドックス貴族たちは王たちを殺害し、平和な統合は戦争に変わってしまった。だからこそ、お前がリノス公爵になるようにしたかったのじゃ。それがわしの最初の目的だったからだ」皇帝陛下は語り、最後にため息をついた。私は黙っていた。まさかこのリノス公爵の地位が、皇帝が父親に残してくれたものだったとは思わなかった。
「それなら、なぜ私がユードロスと結婚すれば安全になるのですか?」しばらくの沈黙の後、私は尋ねた。
「そのようにすれば、お前はオーソドックス貴族の庇護を受けて、辺境伯爵の妻となるのじゃ。お前がリノス王国の公女であると公然と宣言しない限り、誰も君の身分に疑問を抱くことはないだろう。エリュクス伯爵派のオーソドックス貴族は、お前がリノス公爵になることを望んでさえいるかもしれない。その時にはリノス公爵が彼らの陣営に属することになるからじゃ。しかし、ダミアノスがリノス地域から来た隠し子の娘を持ち帰って、彼女が赤髪と赤い瞳を持っている場合、オーソドックス貴族たちはそれを容認できないだろう。これが立場の違いによるものじゃ。」皇帝陛下は続けた。
「それも悪くないと思います。それで私は誓いから解放されることができます。」父親は微笑みながら言った。
「えっ、どんな誓いですか?」私は尋ねた。
「その時が来たら教えてあげるよ。今はまだ早い。」父親は皇帝陛下をちらりと見ながら言ったが、わざと私を見ないようにしていた。何だそれ!私は口を尖らせて不満を示した。
「帝国の主が皇帝なのか、それともオーソドックス貴族たちなのか。見分けるのは本当に難しいのじゃ。わしは時折、自分がオーソドックス貴族たちのために働いているだけではないかと感じるのじゃ。自分の考えを貫くのは本当に難しい。アウレルの件もそうだのじゃ。幸いにも反乱を起こしたのはミラッツォ侯爵派に過ぎなかったのじゃ。でなければ彼はもう成功しただろう。でも結局のところ、ミラッツォ家を助けた貴族たちの大半を見逃すしかなかったのじゃ。」皇帝陛下は感慨深げに言った。どうやら帝国の皇帝も楽ではないようだ。
「これからはさらに慎重に行動する必要があります。」父親も同感した。
「だからこそ、親衛隊の再建が急務じゃ。ルチャノ、適任かどうかはもう言うな。お前もわしのためにもっと責任を担ってほしいのじゃ。」皇帝陛下はため息をつきながら言った。
「承知しました、陛下。私は全力でお役目を果たします。」私は頭を下げて答えた。
「ユードロスの件については、どう答えるつもりだ?」皇帝陛下は私に尋ねた。
「陛下、私はユードロスを拒否したいと思います。よろしいでしょうか?」私は尋ねた。
「なぜじゃ?」
「私はすでにフィドーラ殿下との婚約を結んでいます。まだ彼女に私の秘密を伝えていませんが、彼女も今では婚約を受け入れてくれました。私は誓いを裏切りたくありません。」私は顔を赤らめて、頭を下げて小声で言った。恥ずかしい、なぜ私にこんなことを言わせるのだ。
「ははは、それもいいだろう。そうすればお前もタルミタ侯爵派に加わることになるのじゃ。ロインもお前を守ってくれるだろう。では、フィドーラにはルナの家族が婚約を放棄することを望んでいないと伝えておこう。」皇帝陛下は言った。
「でも、もしフィドーラ殿下が真実を知って受け入れてくれなかったらどうしよう。」私は顔を上げて皇帝陛下に尋ねた。それが最近私が最も恐れていることだった。
「そうだな。昔のフィドーラなら、間違いなく受け入れていただろう。彼女は相手の地位と能力だけを気にしていたからじゃ。」皇帝陛下は言った。
「しかし、彼女は陛下の後継者になりたいのです。最近、私は自分が彼女にふさわしくないのではないかと考えています。彼女は普通の相手と結婚をするべきで、私でなければ、彼女が陛下の後継者になる可能性はもっと高くなるのではないでしょうか。」私は陛下を見つめて言った。
「それはわしには分からないのじゃ。彼女が本当に皇帝になる時、わしはすでに死んでいるだろう。しかし、お前も心配することはない。フィドーラが皇帝になれば、彼女は複数の夫を持つこともできるのじゃ。お前が彼女に子供を生ませることはできないが、帝国には女帝もいないわけではない。血統に関係なく、女性皇帝の最初の子供は自動的に第一皇夫の子となるのじゃ。だからお前の秘密はフィドーラの後継者競争に影響を与えないだろう。ただし、彼女が女性であるため、後継者競争では最初から不利な立場に立たされるのは確かだ。」皇帝陛下は言った。
「ありがとうございます、陛下。」私は頭を下げて言った。陛下が私のせいでフィドーラが後継者競争で不利になることはないと認めてくれた。それでしばらくは安心できるだろう。もし私のせいでフィドーラ殿下が夢を実現する機会を失ったなら、私は彼女の側を去るしかない。
しかし、もしフィドーラ殿下が私の秘密を受け入れてくれたとしても、彼女が皇帝になれば、他の夫も持つことになるだろう。フィドーラ殿下は愛人を持たないと言っていたし、私が愛人を持つことも受け入れられないと言っていたが、帝国の後継者を残すことも彼女が皇帝として果たすべき義務だ。私は一夫多妻の制度を受け入れ難いが、複数のパートナーを持つことで、複数の貴族と婚姻関係を結ぶことができる。一夫多妻の制度は皇帝として実際に役に立つ。それもフィドーラ殿下が避けられないことなのだろう。このことを考えると嫉妬の感情が湧いてくるが、それを表に出さないように自分を説得しようとしている。正妻の器量を持たなければ。
食事の後、父親と皇帝陛下はしばらく政務について話し合った。皇帝陛下は父親に対し、ヒメラ領地に向かった軍隊が戻った後部隊を派遣し、陛下の使者たちを護衛して畿内の貴族を一軒ずつ訪問させ、武力を見せつけるよう命じた。辺境の貴族は強力な軍隊と広大な土地を持っているが、それは蛮族の侵略を防ぐ必要があるからだ。しかし、辺境に位置するため、爵位が高すぎると皇帝陛下が眠れなくなる。だから伝統的に、辺境の領地貴族は伯爵と子爵しかいない。辺境伯爵は通常ヒメラ伯爵のように、千人前後の常備軍を持っている。子爵領は少ないが、通常は500人前後だ。畿内貴族は最低の男爵から最高の侯爵まであり、土地は辺境の貴族よりもはるかに小さく、蛮族を防ぐ任務もないため、軍隊の規模も小さい。侯爵領でも常備軍は百人程度しかないことが多い
それに比べ、皇帝陛下直属の軍隊ははるかに強い。帝都に駐屯する近衛軍団の野戦部隊だけで4万人以上がいるし、総督たちが指揮する辺境軍団もいる。だから近衛軍団の野戦部隊がキャラニにいる限り、畿内貴族が帝都で皇帝陛下に正面から挑むことは絶対に不可能だ
しかし、辺境の貴族が同時に反乱を起こせば、彼らは本当に近衛軍団を辺境で殲滅し、キャラニの近郊まで攻め込むことができる。歴史的にも実際にそういう事態が起こったことがある。しかし、皇帝もまた直轄領の平民を動員し、すべての貴族たちに参戦を呼びかけることができる。帝国の歴史によれば、約200年前西方の貴族たちは蛮族と手を組んでサヴォニア川沿いにキャラニを攻めた。彼らは北西総督が率いる辺防軍を打ち破り、最終的にはキャラニの近郊で近衛軍団、畿内貴族、南北の辺防軍が組んだ連合軍によって敗北した。
「現在首相の職務はスタヴロスが一時的に担当しているので、後で彼と話してみるといい。それからレオンティオとイオナッツもじゃ。イオナッツは軍営の中にある部屋に行って、レオンティオは邸宅で療養しているのじゃ。内閣は議会が開催された後に選出される予定じゃ。最近わしは内閣大臣たちの再選に忙しいのじゃ。」皇帝陛下は額に手を当てながら言った。確かに、部下を選抜するのは本当に難しいことだ。この間私も体験した。
「承知しました、陛下。」父親は頷いた。
「まもなく12月になるのじゃ。12月中旬からキャラニでは一連の儀式が行われ、議会もその期間中に開催される。ダミアノス、ルチャノ。新年の行事期間中の安全をしっかりと守るようじゃ。親衛隊の再編も新年の行事が始まる前に完了させなければならないのじゃ。」皇帝陛下が言った。
「承知しました、陛下。しかし、12月中旬まであと十数日しかありません。この短い期間で本当に間に合うでしょうか?」私は心配そうに尋ねた。
「イオナッツが言うには間に合うとのことじゃ。詳細は彼に聞いてみるといい。」皇帝陛下が言った。本当に難しい仕事だが、仕方がない
陛下との会見が終わり、私は今日の軍官昇進を午後に延期することに決めた。午前中はまず父親と一緒にイオナッツを訪問し、その後スタヴロスとレオンティオを訪ねることにした。イオナッツは相変わらずだったが、筋肉の輪郭が少しぼやけているように感じた。しかし、医師によると傷口は癒えており、春が来る前には回復するだろうとのことだった。父親と彼は皇城と帝都の警戒について話し合った。イオナッツは出征中の近衛軍団が戻れば、志願兵の募集が可能になると私に教えてくれた。12月まであと数日近くあり、この期間に志願兵の募集と親衛隊軍官の昇進が完了するだろう。その後は10日間の集中訓練で十分だ。親衛隊の新兵でも戦闘経験があり、親衛隊の制度についての訓練だけで済むという。
「ラドたちの指示に従ってやればいいんだ。お前がするべきことは会議に出席し、書類に署名することだけだ。」イオナッツがまとめた。
「分かりました、イオナッツ様。親衛隊副隊長の仕事はただの犬でもできる仕事ですね。私は番犬のように席に座り、ラドが渡してくれる書類に爪を出して印を押せばいいんです。」私は少し嬉しそうに言った。
「そうだが、そんな犬を見つけるのも簡単ではないぞ。野良犬を家の番犬にすることはないだろう?」イオナッツは寝転んで言った。
「ワンワン!」私は彼に向かって犬の鳴き声を真似て不満を伝えた。イオナッツと父親は共に笑った。イオナッツの体からハーブの入った皿がまたいくつか落ちた。しかしこれも悪くない。この仕事は思っていたよりもずっと楽だった
「これは番犬の声ではない。明らかに猟犬の声だ。」父親は笑いながら指摘した。まあ、猟犬も悪くない。




