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難産
今後もこのくらいのペースで
少し歩いて建物の前で止まった。肋骨街の真ん中の道から外れて細い道に入ったところにある小さめの建物だ。
「ここが事務所だ。もう他のメンバーは待ちかねているよ」
「はあ」
「大丈夫。私たちが人間に対して友好的だと判断した者しかいないからね」
つまりこの街には人間に友好的でない者もいるのだろう。やはりとんでもないところに来てしまったようだ。
建物の中でも一際瘴気を放っている扉の前で止ま
る。まさかこの部屋の中にいるのが、他のメンバーなのだろうか。
「まさかこの部屋に入れって言うんじゃ...」
「もちろん」
「えっ!?」
「この部屋の中にいるのが他のメンバーだよ」
やっぱりか...。絶望がこみ上げる。もうすでに嫌になってきた。せっかく地元から上京してきてこれでは悲しくて目も当てられない。
そんなことを思っていると、上司がドアを開けてくださりやがった。入りたくないが待ってくれているらしいので入る。
中には女の子が三人いた。まずは嫌でも目につくだろう青髪に、よくわからない宇宙的な服装の子。金髪ツインテールで眼帯をしているこれまたゴスロリの子。最後にツギハギ赤髪ナース服の子。かなり濃いメンツだろう。
「じゃあ自己紹介から。右からね」
「はいはーい☆私縁馬宇宙なのー☆担当楽器はー☆ドラムざうるす☆宇宙人やってますぴよー☆」
いきなりキャラが見た目以上に濃い。語尾が安定してないのを、なぜ誰も突っ込まないのだろうか。すでに胃もたれしそうだ。
「やりたい音楽はサブカル系☆尊敬するミュージシャンは平沢進師匠とー☆大槻ケンヂー☆よろしくばろー☆」
かなり古い上に厄介な音楽を聴いているものだ。これらを聴いている人は、一癖も二癖もある人物というかメンヘラが多い。
「次はアタシだなー。えっと桔花弥沙鬼。担当はギター。悪魔だけどよろしく」
さっきのに比べれば話は通じそうだ。
「じゃあアタシはロックポップが好きだ。尊敬してるのはオーイシマサヨシ。別にアニメは好きじゃねえぞ!好きじゃないからな!」
ああ。この子もオタクだ。それに自分はオタクじゃないと思ってる系の。やっぱり面倒くさそうだ。
次のが最後だ。最後ぐらいはまともな子であって欲しい。見た目は一番アレだけど。
「私は狂イ咲魔梨威。ホムンクルスですの。希望する楽器はキーボード。よろしくお願いしますわ」
まともじゃない。まず名前がおかしい。なんだ狂イ咲魔梨威って。名前中の「い」すら統一できていない。
「好きな音楽は私もロックンロールを好んでおりますの。尊敬するミュージシャンは忌野清志郎と甲本ヒロトですの」
前言撤回。すっごくまともだ。音楽の趣味が少し古いだけで、聴いているものは至極真っ当だ。
「あらっ?」
ポロっと言う音と同時に狂イ咲さんの首が落ちた。しかし何事もなかったかのようにくっつけている。
「最近季節の変わり目なのか取れやすいですわね。首も買い替え時なのかしら」
首とは季節の変わり目に取れやすいものなのか。首を買い替えることはできるのか。謎が深まる。
「ギャーっ!!!」
少し経った。私はまた気絶していたようだ。部屋の端っこに置いてあったソファに横たわっていた。
「大丈夫?☆怪我とかしてない?☆」
「てゆーか首が取れただけでびっくりしすぎだろ。上だと首って取れないのか?」
首とは普通取れるものではない。やはりおかしい。
「目覚めたところで私の自己紹介といきましょう」
莉無さん。待っていてくれたのか。
「だってこの子たちにしたって無駄じゃない」
それもそうだ。
「まあ名前は知ってると思うけど肋骨莉無よ。この街の主人をしているわ。担当はベース。これからよろしく」
「尊敬するアーティストはhideと小林写楽」
小林写楽って誰だ。hideは知っているが、小林写楽は知らない。私の知識不足だろうか。
「あら。小林写楽とは誰だって顔ね。まあ簡単に言えばヴィジュアル系のバンドのボーカルよ」
唖然。ビジュアル系とか聞くんだ。
「ヴィジュアル系よ。「ビ」じゃなくて「ヴィ」」
細かい。
「まあそんなことはいいのよ。次はあなたの番よ」
私の番か。考えていなかった。まあなるようになるだろ。
「私は女目森十って言います。担当するパートとかは決めてないです。よろしくお願いします」
「あら。言ってなかったわね。あなたはボーカルよ」
は?何故ボーカル?こんな濃いメンツの中でボーカル?フロントマン!?
「だって当然でしょ?あなたはこの中で一番見た目が地味だもの」
ちなみに私の外見だが、黒い髪に普通のスーツ。たしかに地味と言われてもしょうがないだろう。だが会って数十分の相手に言われたくなかった。




