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「ここから先はこのセグウェイに乗って行こう」
「セグウェイ...ですか?」
「君がどんなことを想像してるかは知らないがこの肋骨街では、この先セグウェイに乗っていくのが普通だ。むしろここでは常識と言ってもいい。郷に入っては郷に従えだ」
あまり納得はしてないが、セグウェイに乗ろうとする。
「ちょっと待て。今君のセグウェイが来るから」
「えっ?これじゃないんですか?」
そう言っていると、奥から禍々しい見た目のセグウェイが現れた。なにやらトゲトゲしている。まさかあれに乗るのだろうか。
「君のが来たからこれに乗りなさい。かっこいいだろう?」
「は?」
人生で一番素晴らしい「は?」が出た。言い換えるなら今世紀最高の「は?」とか、ここ10年で一番の「は?」だろう。それくらい心の底から出た。
「君の「は?」はボジョレーヌーボーかね?」
「心を読まないでください!」
「はは。すまないね。まあ黙ってこれに乗りならさい」
このまま言い合ってても仕方がないので乗る。意外と乗り心地はいい。
「準備はできた?それじゃあ行きましょう」
向こうから肋骨さんが可愛らしいゴシックなセグウェイに乗ってきた。
「この肋骨街ではみんなマイセグウェイを持っているのよ。全員こんな感じで自分で改造しているわ」
「へぇー。肋骨さんのも自分で改造したんですね」
「あら。莉無でいいわよ。読みづらいから」
「読みづらい?まあわかりました。これからは莉無さんってことで」
格好はゴリゴリのゴスロリだが、中身はかなりフレンドリーのようだ。さっきもあのクソ上司が優しいと言っていた。
セグウェイに乗って少しすると、大きな門の前に来た。門には窓口が付いており、その中に人が一人いた。
「お疲れ。これ僕の住民証ね」
「鴨居潤様と肋骨莉無様ですね。そちらの方は?」
「あ、こっちのは新しく入居するの。今から手続きって出来る?」
「出来ます」
「じゃあやってもらおう」
鴨居潤は上司の名前だ。
「じゃあ、そちらの。名前と年齢を言ってもらってもよろしいですか?」
「はい。女目森十って言います。漢字は女に目に森でめめもり。十時の十でとおって読みます。年齢は23です」
「女目森十さんね。年齢が23っと。次に...」
その後も様々な質問が続いていて、終わったのが30分ほど経ってからだった。
中に入って、まず思ったことがひとつあった。
「あの、誰もセグウェイ乗ってなくないですか?」
「そりゃそうだろう。だってセグウェイ乗ってるなんて嘘だもん」
「は?」
人生で一番素晴らしい「は?」は、早くも更新されてしまった。嘘だと。意味がわからない。
「えっ?だって莉無さんもセグウェイを...」
「私もカモの嘘に乗っかっただけだ。それにそんな明らかな嘘に騙される方も悪いだろう」
「まあいい。これから他のメンバーとの顔合わせだ。リラックスしておけ」
「まあいいってなんですか。まあいいって」




