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【性的魅力1】のチー牛、美少女魔王の暗殺者になってクラスを崩壊させることにした  作者: N


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第7話

 

「だいたい予想はつきますが、なぜあなたは、こんな無謀な方法で魔族領に入ってきたのですか?」


 真剣な目で、マオに問われた。俺はここまでの話を、どもりながら、一言ずつ絞り出すように説明した。


 地球という星からクラスごと召喚されたこと。その前からこの容姿や性格のせいでいじめられていたこと。そして、クラスメイトから暴力を受けて、魔王城の前にゴミみたいに捨てられたこと……。


 マオは俺の話を最後まで聞くと、ゆっくりと頷いた。


「説明ありがとうございます。どの世界の人間も、争いは絶えないのですね。弱者を踏みにじることでしか快感を得られないのでしょうか」


「マオ様、人間は所詮、そういうものなのです」


「……う~ん、チハル様も、弱者を踏みにじるのはお好きなんですか?」


 ……急にド直球な質問。いや、これなんて答えるのが正解なん?確かに、俺だって人間だ。自分より弱いものを見れば、踏みにじりたくなる気持ちがゼロだとは言わない。でも、それは相手による。


 自分と同じ境遇のチー牛なら、助けたいし同情もする。そもそも、今の俺より物理的にも立場的にも弱い人間なんて、ほぼいない。……というか、弱者だろうが強者だろうが、俺に敵対する奴はぶっ殺す。それだけなんだが。


「えっと、まあ答えにくいでしょうし、今は良いです。とりあえず、あなたの事情は分かりました。こちらの事情も分かっていただけたでしょうし、本題に入ろうと思います」


 マオは椅子から立ち上がり、後ろの棚から何か魔法陣のようなものが描かれた紙を持ってきた。再び椅子に座ると、俺に向かって話を切り出した。


「私たち魔族と、手を組みませんか?」


「……え?」


 俺は口を開けたまま固まった。魔族と手を組む? 聞き間違いか? いや、でもこの話の流れなら、なくはないのか……。


「まあ、その反応にもなりますよね。私たちは一刻も早くこの争いを終わらせて平和を取り戻せる。あなたは自分を陥れてきたクラスメイトに復讐ができる。……利害の一致じゃないですか?」


 まあ、確かにその通りだけど……。マオはそのまま声のトーンを少し落として、続けた。


「というかですね、チハル。あなたに残された選択肢は二つしかないんですよ? 一つは……ここで死ぬ」


「ひっ!?」


「もう一つは……私たちと手を組んで、平和をもたらすこと。どちらが一番良い方法かは、明白ですよね? 先ほども言いましたが、本来敵であるあなたを、ただで返すわけにはいかないんです。ご理解ください」


 怖くて手が震える。


 さっきからこんなに可愛い見た目をしてるのに、言葉に一切の躊躇がない。平気で「殺す」とか「死ぬ」とか。なんなんだよ、これが魔族?さすがは魔王だ。


 温厚な種族とは言っても、やるときはやるってことか?そもそも、マオの言う通りだ。手を組むのが一番いい選択肢なのは俺も分かってる。……というか、他に何がある? 逃げる? 今のボロボロの体で、そんなことが出来るわけもねえ。


 俺は最初から、こうなる運命だったのか。……そう思うと、無性にイライラしてきた。


 この顔に生まれたかったわけじゃない。それなのに、地球にいた頃から何度も俺をいじめて、自己肯定感をズタズタにして。この世界に来ても、躊躇なく俺を殴って、魔王城の前に捨てた。


 俺の存在価値は、こいつらにとってゴミ以下。


 ……魔王と手を組めば、俺を陥れてきた奴らを殺せる?何を迷ってるんだよ。俺を本気で殺そうとしてきた奴らだぞ?


 怒りと憎悪で、強く握った拳が震えた。……なら、やってやろうじゃねえか。「生きて帰ってきたら認めてやる」? 棒緑、お前がそう言ってたな。

 ああ、認めさせてやるよ。お前らを全員殺してな。


 俺は決意して、まっすぐマオを見た。……けど、0.5秒で目を逸らした。コミュ障は決意してもコミュ障のままだ。


「俺は……えっと、それでいいです。その、手を組みます」


「……はい。よろしくお願いします」


 マオはニコッとはにかんだ。


 さっきから、行動と言葉が一致しなさすぎて、何を考えているのか分からない怖さがある。でも、ほんの少しだけ、「面白そうだ」という好奇心が湧いている自分もいた。


 マオは俺に握手を求めてきた。俺はその手を……取らずに、軽く頭だけ下げた。だって、怖いもん。


 ---


 その頃、棒緑たちは転移魔法陣で城の中に戻っていた。各自の部屋に戻るため、薄暗くて静かな廊下を歩いている。


「ていうか、大丈夫なん? あのチー牛勝手に殺してさ、岸にマジギレされない?」


 魏屋琉はそう言いながらも、楽しそうに笑っている。


「まあ、そこは大丈夫ですよ。この城から魔王城までの距離ははるか先ですし、バレることはないですよ。まあ、あのチー牛が人質に取られれば分かりませんが……そもそもです、そんな手間をかけてまで、職業『ニート』のチー牛を捜索などすると思いますか? この世界では、死は身近ですからね」


 半寒は前髪をかき上げながら、自信ありげに答えた。


「そういうことだ。この世界じゃ、力こそが正義なんだよ。間違って殺したとしても、大事にはならねえ。それに俺たちは勇者だぜ? 何しても問題ねえよ」


 棒緑は半寒の肩を組みながら豪快に笑った。半寒はやれやれと溜息をついている。


 だが、モブ崎だけは、ずっと何かを考えるように下を向いて歩いていた。モブ崎は、あの時に気づいていた。千温のステータスプレートが、”隠蔽”で偽装されていることに。


 あの時、一瞬だけ見えた職業は、確実に”暗殺者”だった。”ニート”は、何かしらのスキルで偽装しただけだ。そうなると、千温は他にもスキルを隠し持っている可能性がある。


 もしそれが本当なら、あの程度で死ぬだろうか。棒緑たちを恨んで、もし魔族と手を組んでいたら……?いや、あの時の千温は死にかけだった。普通に考えれば、もう死んでいるはず。


 だが、どうしても気になる。あいつが、どうなっているのか。


 棒緑がそんな様子に気づいて、声をかけた。


「どうした、モブ崎。テンション低くね?」


 モブ崎は事情を話そうか迷ったが、なんとなく、隠しておいた方がいい気がしてはぐらかした。


「あ、ああ、いや。……今あいつがどうなってるのか、楽しみでさ。直接見たくなったんだよ。ちょっと様子、見に行っていいか?」


 棒緑は顔を歪ませたが、特に否定はしなかった。


「あ? お前も性格わりいなあ。まあいいけどよ、すぐ戻ってこいよ。俺は怖えから行かねえ」


「あはは、棒緑らしくない言葉でウケる。でもアタシも同意だな~」


「僕も同意だね」


「あ、ああ、すぐ戻るわ」


 モブ崎は不安を抱えながら、再び転移魔法陣の部屋へと駆け足で戻っていった。そして魔力を注ぎ、転移魔法陣を起動させた。




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