真・エピローグ
※閲覧注意:グロテスク・自傷描写を含みます。
ふと思いついたので書き起こしました。多分、本当にこれで終わりです。
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本田が千温とともに世界の虐殺を謀ってから数年後。
マオはあの日から、崩壊した世界を、いろんな国々を回って人助けをしながら、魔王城を目指していた。
マオは千温の告白を断ったあの日以降の記憶がうっすらとしかなかった。世界が一気に闇に飲まれ、次々と人々が殺されていく。マオは魔族と人間族との戦争から解放され、今まで張りつめていた緊張感が一気に解かれていた。
そうして休んでいるうちに異変が起きた。マオの目の前で、シロとクロが何者かに立ち向かい、そしてマオはどこかも分からない場所へ転移させられていた。
国々を助けながら、こうなった原因も聞き込みをしていたが、全ての元凶は二人の人間の仕業らしい。一人はぱっとしない容姿の暗殺者、もう一人は小柄な少女。その二人が魔王城を乗っ取っているという。
マオはそれを聞いて、罪悪感に苛まれた。
(私が、チハルを振ったから……頑張ってくれたチハルを受け入れてあげられなかったから……)
恐らく小柄な少女とは、チハルを時々助けていったというサイコパス、ホンダの事だろう。
マオはそこで決心した。私のせいでチハルは道を外してしまった。チハルに謝ろう。そしてもう一度やり直す。チハルを受け入れる。きっと、シロとクロも生きているはず。あの二人が簡単にやられるわけがない。
そしてマオは一人で旅を続けながら、ついに、かつての故郷だった魔王城にたどり着いたのだった。
王城の間で待っていたのは、千温と本田。魔王の座に千温が座り、その膝の上に、千温に支えられるようにして本田が座っていた。この二人が、世界を絶望に作り替えた魔王。
マオは怒りを堪える。チハルはかつて、魔族を人間族から救ってくれた英雄。しかし、私自身がそのチハルの告白をないがしろにしたことで、ホンダがその傷心に付け込み利用し、世界を崩壊させた。
この世界を取り戻すには、私がチハルの告白を受け入れるしかない。そうすればきっと、チハルも元に戻ってくれる。チハルは私たち魔族を救ってくれた英雄、それを壊してしまったのは私。
本田は、恐らく話し合いにすらならない、全ての元凶。すべての指示は本田によるものだろう。
(なんとかして、チハルをこちら側に引き抜き、ホンダを叩き潰す)
マオは心でそう誓った。そして一歩前に踏み出す。本田はそんなマオを冷たく見下ろしていた。
「あれ?もしかして、あなたは元魔王さんですよね?私たちの愛の巣に入り込んできて、何か用でしょうか?」
「白々しいですよ、私がここに来ることくらい分かっていたくせに」
「フフ、バレちゃいました?」
「貴方の相手は後です。チハル、本当にごめんなさい。チハルが魔族を救ってくれた努力を無下にして、あなたの期待に応えられませんでした。あの時は、どう答えればいいか分からなくて……もう一度、あなたと一緒にいたい」
「嘘ですよね?元魔王さん?貴方は千温君を振ったんですよ?その行為に嘘偽りはありませんでした。貴方が、千温君の心を殺したんです。私は、千温君を愛し、そして愛され……この腐った世界を一緒に――」
「貴方に聞いていません。それに、騙されないでください、チハル。貴方はその人間の女に利用されているだけです。貴方のその傷心に付け込み、千温君を利用してこの世界をおもちゃにしようとした。その女に、チハルへの愛も何もありません」
「何を言っているんですか?騙されないでください、千温君。私は千温君を愛しています。だから、私は身体を許したんですよ?そ・れ・に」
本田はそのまま立ち上がり、千温の口元へ強引に自分の唇を押し付けた。
「こんなことだって、あなたの前で出来ちゃいます。これが、愛じゃなければなんなんですか?元魔王さん?」
「ち、違う!キスなんて、仕事であれば、私だってできます!お前は人間不信のチハルを信じ込ませるために、その傷心に付け込んでキスをしただけです!」
「言いがかりはやめてくださいよ。そんな、私が誰とでもキスできるみたいな言い方。それに、今の元魔王さんの言い方だと、まるで千温君には、キスするだけの魅力がないような言い方じゃないですか?」
「そんなことは一言も言ってません!なんなら、今からお前からチハルを取り戻してキスして見せます!」
「千温君は渡しませんけど?元魔王さん、あなたが千温君をこうしたんです」
「違う!」
「てめえら少し黙れや!」
その時、千温が初めて大声を出してその場の空気を一瞬で変えた。
「ああ、つまり、お前らは俺を、心の底から愛してはくれていないってことだよな?」
「違う、チハル、騙されないで」
「まずお前だ、マオ。お前の今抱いている俺への好意は好意なんかじゃねえ。ただの罪悪感の押し付けだ。お前が俺を振ったことでこの世界がこうなった。自分のせいかもしれない、だから私は俺を愛さなきゃいけない。それだけだろ?」
「違う、本当に私はチハルを」
「お前ら魔族を救った俺を振ったのに?俺はすごいことをしたよな?魔族を救ったんだぞ?なあ、俺は大して強くない、でも戦略を駆使して魔族を勝利に導いた。これだけのことをしたってのに、じゃあ、何をすればお前は俺を振らなかったんだ?魔族を救う以上のことをすればよかったのか?それってなんなんだ?教えてくれよ!俺が生理的に無理だったんだろ?ただ単に、男として見れなかったんだろ?正直にそう言えよ!」
マオは黙りこくった。認めたくはなかったが、図星を突かれていた。
「そうです、元魔王さん?千温君はそんなあなたに失望したからこそ、私を選んだ――」
「お前も黙れよ」
「ひうっ!?」
「俺は本当に振られた時、ショックで頭が真っ白になってた。何も考えられなかった。誰でもいいから、温もりが欲しかった。そんな混乱していた俺に声をかけたのはお前だった。誰でもよかった。正直、お前も見た目とか好みだったし。何かと俺を助けてくれていたから、好意があるかも、本当に俺を愛してくれてるかも、なんて脳が勝手に認識しちまってた。ああ、マオのおかげで目が覚めた。俺みたいなチー牛を愛してくれる人間?いるわけねえわ」
「千温君?そんなことはないですよ?」
「いや、お前のは愛じゃない。お前にとっちゃ俺は都合のいい玩具にすぎない。お前のその感情のない、狂気的な目を見ればわかる。お前は俺が自分にとってつまんない玩具に成り下がれば、俺を平気で殺す」
「そんなことしません!千温君、私で童貞捨てたくせに、どうしてそんな事言うんですか?」
「俺のことを洗脳していたくせによく言うわ。じゃあ、なんでお前は棒緑達に俺を殺すように仕向けた?」
「え?」
「お前が言ったよな?俺の実力を試すために、棒緑達に魔王城への転移魔方陣を教えたって。俺は奴らに殺されかけ、魔王城に捨てられた。お前があいつらにそんな囁きさえしなきゃ、こんなことにはならなかった」
「それは、だから、千温君のことを試したくて……」
「それで俺が死んだらどうだった?また別の玩具を探していたんだろ?自分だけは怪しまれない安全圏から人を操り、自分の満足する物語として消化していたんだからな。それに、お前は平気で人を殺せる。半寒を殺す際も普通に協力してくれた。清楚の事も、自分の計画を邪魔するやつは平気で挑発し殺せる。お前は人を人として見ていない。お前の都合のいい物語の一部にすぎない。俺もクラスメイトを何度も殺してきた身だから偉そうには言えないが、お前はサイコパス、異常者だ」
「千温君……ち、違うよ?本当に愛してなかったら、キスもああいうことも――」
「黙れ。お前らは、なんも、俺の事なんか見てねえ!俺を愛してる?好きだ?ふざけんなよ、俺の事なんかはなから見てねえくせに、生理的嫌悪感は隠してねえ、俺を面白い玩具としか見てねえ、俺は結局だれにも愛されねえんだよ!魔族救っても、ポチを一生懸命世話しても、何しても、全部無駄!無駄なんだよ!……ああ、疲れた。頼む、少し一人にさせてくれ」
そう言って、千温は玉座から立ち上がり、奥の部屋へととぼとぼと歩いて行った。マオはその寂しげな背中を、ただただ見送ることしかできなかった。そして、視線を本田にずらした瞬間、マオは恐怖に震えた。本田は目を見開き、充血させ、ただ、マオを見つめていた。
「あ、あはは、あはははははははっ!ああ、あああ、私の、私の千温君が、壊れちゃったです!おまえのせいだ、おまえがああああ!お前がいなければ……ああ、やっぱり速攻お前を殺すべきだったんです、あは、私の千温君を、奪った、女、ああ、あの根暗魔族女とイケメン魔族男のように、殺しておくべきだったんですよ……」
「……それって、クロとシロのこと?」
「そうじゃないですか?シロは最後までお前を盾として守り、クロはお前を安全な場所に転移させました。むかついたから私が殺しちゃいましたけど」
「あ、あなたという人は……やはり人間は……」
マオは剣を抜いて、本田に向ける。本田はそんなマオに笑顔を向ける。
「やりますか?元魔王さん?」
「今ここで、あなたを殺します」
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決着は、マオの勝利で終わった。本田は僧侶ではなく、それはただの偽装だった。他人の能力をコピーし、自分のものにする"模倣者"。僧侶の偽装も、回復魔術も、ポチの念話も、すべて自分のものにしていた。
様々な能力を扱いながらマオを圧倒していた本田だったが、戦闘経験の差でマオが本田を追い詰め、胸の前に剣を突き出す。
「フフ、流石元魔王さん、ですね。それで?私を殺すんですか?私も千温君の暗殺を何度も手助けしてきて、結果的に魔族を救うことができたんですよ?」
「過去は過去、今は今です。今、この世界はあなたのせいで崩壊してしまった。あなたを殺せば、みんなの仇を討てる。きっと、この世界も元通りに」
「どうでしょうね?」
「は?うぐっ!?」
本田はマオの一瞬の迷いの隙をついて、マオの剣を蹴り飛ばし、そのまま精霊術を使い、蔦でマオを力強く拘束した。その間に本田は千温の向かった奥の部屋へと駆けこんでいった。
「ま、待ってください……」
マオは何とか追いかけようと、力を振り絞り蔦を破壊した。そしてなんとか本田の向かった先へと走って行った。扉を開けると、その先の光景に、マオは呼吸を荒げた。心臓が早鐘のように打っていた。
「え?……え?」
……床に転がっている千温の生首、鮮血、何かしらの薬、恐らく痛覚を遮断するクロの開発した薬だろう。……千温の手には自らの首を斬ったであろう、赤く染まった短剣……そして、暗殺者の手際だろう、驚くほど綺麗に斬られた、首のない千温、その亡骸を呆然と見つめる本田だった。




