79 アリエルの趣味、変わらず
アリエルは、ゆっくりと話を始めた。
「イズーリアの多くの事、アルメイダが関わってる。キンタロー、キミも」
「《不運》か……」
「それだけじゃない。考える。《不運》はいつから?」
いつから……キンタローは、昔を振り返る。自分が八雲だった頃、施設に入る前、母が父を殺し自殺して自分は孤児になった。
「もしかして……オレが産まれた直後から……か」
アリエルは、頷き肯定する。キンタローの手のひらは、汗でびっしょりになっていた。つまり八雲としての人生は、アルメイダの手のひらで踊らされていた人生だったのかと、そして転生してからも、もしかしたら……
キンタローに最初に訪れたのは恐怖……しかし、キンタローを転生後育ててくれた両親や兄弟、そして夢の中とはいえ、この後起こる事態がアルメイダによるものかもしれないに、沸々と怒りが込み上げてきた。
「アリエル、アルメイダは何処に行ったらぶっ飛ばせる?」
「それは、向こうに任す」
「向こう?」
アリエルの返事の意味を考えるが思い当たらない。キンタローも、アルメイダーをそう簡単にぶっ飛ばせるとは思っていないが、それがまた歯痒い。
そんなキンタローを見たアリエルが、提案してきた。
「キンタローは、幸せな生活を送ればいい。アルメイダにとっての嫌がらせになる」
「い、嫌がらせ!?」
「そう。アルメイダは上手くいかないとこんな顔をする」
そう言うと、アリエルは両方の人差し指で自分の目尻を引っ張って見せると、キンタロー達は突然の行動に思わず吹き出してしまう。
「この顔を見るのが、ワタシの趣味」
「い、嫌な趣味だな」
アリエルは、とてもいい顔で親指を立てた。
「アルメイダ自身をどうにかは出来ない。だけど、キミが20年幸せに生活すれば、この顔にさせれる」
「20年?」
──20年は、頑張って生きてくださいね──
転生直前、アルメイダに言われた言葉を思い出した。
「そう。20年。初めはわからなかったけど、おそらく20年経ったら何かしてくる。それを防げば……」
「この顔になるっていうわけか」
キンタローも、両方の目尻を横に引っ張ってみせた。
◇◇◇
「キンタローさん! 緊急です!!」
アリエル達と話をしている最中、突然ジャンが息を切らせて現れた。
珍しく慌ている様子に、何事かと緊張感が漂う。
「はぁ……はぁ……ふ、フラムさんの陣痛が!!」
「!! 本当か!?」
キンタローは、ジャンに駆け寄って行く。ジャンによると、陣痛が始まってすぐにノイルに頼みここまで来たと言う。
キンタローはすぐにでも駆けつけたかった。
しかし、今はアリエルの話を聞かないといけない。どうするか思い悩んでいると、アリエルは行ってくるように伝えた。
「話なら何時でも出来る。それにキンタローが動かないとアルメイダに嫌がらせにならない」
フラムが子供を産めば魔人族の村へと向かわなければならず、その後は、夢を覆さなければならない。
次はいつ来れるかわからないが、もたもたしているとアルメイダに先手を取られかねない。
「また、会いに来るよ」
長老に向かってそう言うとキンタロー達は、この場をあとにした。
「また……か」
アリエルは、長老の側にいき横にしてあげて、長老の手を握る。
「心配いらない。あなたはワタシだもの」
長老は、それを聞いて一度大きく目を開くがすぐに目を瞑り眠りについた。
「おやすみなさい。サフィエルをよろしく」
誰も居なくなったその場所で、1人アリエルは呟いた。
◇◇◇
「婿どの、遅いぞ!」
待ちくたびれて愚痴を言うノイルに、キンタローは足を蹴った。
「こっちも色々ありすぎたんだよ。さっさと行くぞ! ミカンもいつまで寝てやがる!」
軽く頭を揺すってやると、寝言を言い出す。
「う~ん、キンタロー止めるの~! 変な所触らないでなの~」
思わぬ寝言にその場にいた全員が固まり、視線がキンタローに集まる。
キンタローは、懐からミカンを起こさないように出すと、木の蔓でぐるぐる巻きにして、もう片方をノイルの角にくくりつけた。
「親父さん、行こう。飛ばしてくれ」
ノイルは羽を一回大きく羽ばたかせ、その後素早く動かし上昇していき、出発した。
「なんなの~! これ、なんなの~!! 怖いの~! 落ちるの~!!」
まるで鯉のぼりのように、ノイルの角にミカンがぶら下がっていた。
◇◇◇
ノイルは全力で飛ばし、あっという間にキタ村の上空に着く。
「このまま、家の方に行ってくれ」
キンタローの指示に、家の上空へと来るとキンタローは1人飛び降りた。
「先に行ってくる!」
地面へと落ちていく、キンタロー。足で着地する様に態勢を整えて両足で綺麗に庭へと着地した。
スキルのお陰で痛みはあるものの、すぐに走り出し家に入る。物凄い音が外からした為、プギーが慌てた様子で出てきた。
「キンタロー様、二階のお部屋です。ブヒ」
プギーは、一瞬で全てを理解しキンタローにフラムの居場所を伝えた。
二階へと駆け上がり、自室の前に着く直前、思わず足を止めてしまった。
「おぎゃあーー! おぎゃぁーー!!」
部屋の中から、元気な声が聞こえたからだった。
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