61 エルフの思惑
エルフ久々じゃね?ってお話。
各場所で修理と復興が始まった。
キンタローとゴルザは、二手に別れ門と森に向かう。
森ではノイルが黒い竜に戻り燃えた木々を除けながら、ゴルザの指揮で地面を掘り起こし、畑で使える様にしていく。
門の様子を改めて見たキンタローは、修理ではなく新たに門を作る事を提案した。
今までの様なただ門があるだけではなく、もっと大きく森の木々の高さより高くして、内側から門の上へと上がり、見張りを置ける様にする。門自体は観音開きにして、平時は常に開けておき、緊急時は滑車を使いすぐに閉めれる様にした。
もちろんキンタロー自身には、建築に関して詳細な知識はない。しかし、ドワーフの職人達は今まで見た事の無い珍しい提案に、目を輝かせ試行錯誤を行い、図面を引いていく。
この事が、後にドワーフの職人の何人かがキタ村に滞在する要因となった。
門の建築や新しい開墾などには、キンタローの提案で、元々はピッグの現在は村預りとなっていた奴隷達が、労働者として働いている。
長い間、奴隷根性が染み付いている者達への社会復帰を兼ねていた。
◇◇◇
その夜、キンタローの家のリビングには、ノイルから話を聞くべくゴルザ、村長、ジャンも来ていた。
「親父さん、そもそも疑問に思ったのだけど、ニナがこの村にいるって、誰から聞いた?」
「あぁ、魔人族の村でニナを探しているワシに偶然出会ったエルフが教えてくれたのだ」
ノイルの言葉を聞き、リビング内に動揺が走る。ノイルは何故、そこまで動揺しているのかわからずにいたが、ジャンがキンタローとクマゴロー、そしてエルフの関係について教えた。
「親父さん、もしかしてエルフのヤツに『竜人族の女の子がキタ村に奴隷としている』とか似たような事を言われなかったか?」
「あ、あぁ確かにそう言われたが……」
キンタローは、思わず机をバン! と叩いた。
「あんた、馬鹿か! そもそもあんたが竜人族って何でエルフが知っているんだよ! 村に居たんだろ? 今の姿で? それに、ニナも竜人族ってどうしてわかる? 少なくとも魔人族ならともかく、少数種族も少数種族の竜人族だとわかったヤツは、この村に一人も居ないぞ!」
「…………あ!」
「『あ!』じゃねぇ! それぐらい気付け!」
隣にいたジャンがキンタローを落ち着かせる。しかし、その表情は険しかった。
「キンタローさん、これは……」
「あぁ……不味いことになったな」
「キンタロー、不味いってどういう事なの?」
キンタローとジャンの険しい顔を見て、フラムが割って入ってくる。
「もし、仮にエルフが偶然親父さんを竜人族だと知っていたとしよう。なら何故、ニナがこの村にいるのを知っている? 奴隷商の店は、ナギ村にあるんだ。教えるならナギ村だろう? だけど、親父さんに教えたのは、ここキタ村だ。変だろう?」
「つまりは、偶然じゃないって事かしら?」
キンタローは、椅子の背もたれに寄りかかり天井を見上げる。
「そういう事。ニナがこっちに来たのを知っていたのも説明出来る。オレを奴隷として売ったのが、エルフだ。
ナギ村にいたエルフが、直接なのか間接的にかはわからないが、親父さんに教えたんだろ? 要は狙いがナギ村かキタ村かはわからないが、親父さんに襲わせる計画だったって事だ」
「他にも問題はあります。ニナさんを拐って売ったのは、エルフの可能性が出てきました」
「なぁにぃっ!!」
キンタローとジャンの説明を聞いて、自分が踊らされていた事を知り、ノイルは立ち上がり怒りを露にする。
ノイルの隣にいたゴルザが落ち着かせて、座らせるとキンタローにオンドリーの捕縛を提案し、衛兵に指示を出した。
「やっぱり、あのオンドリ頭、何か隠していると思った」
「すいません、キンタローさん。私が温情をかけたばかりに」
「あの時点じゃ仕方ないよ、ジャン。オレも想像出来なかったし」
珍しく落ち込みを見せるジャンを励ますと、キンタローは一旦お開きにする。
『クマゴロー、ミカン』
『どうした、キンタロー』
『どうしたの~?』
キンタローは、誰にも気付かれない様に、そっとクマゴローとミカンに話しかける。
『2人のうち、どっちか必ずフラムと一緒にいてくれ。何かあったらすぐに知らせてくれ』
『フラムを……か?』
クマゴローは、予想外の頼まれ事に疑問に感じた。
『以前、フラムがエルフに襲われただろ? 初めは盗賊かと思ったが、今回の事で別の思惑も出てきた。
オレが捕まった時は、金貨目的の可能性があったが、ニナに関しては説明がつかない。
オンドリーがピッグにニナを売った時、ニナを竜人族だとは言わなかった。オンドリーが知らない、それはエルフがわざと教えなかったって事。金目的じゃないのを証明している』
『エルフは、初めからフラムを狙ったって事か!?』
『あぁ、だから2人とも頼んだぞ』
クマゴローとミカンは、お互いに顔を見合わせると真剣な表情で、キンタローの頼みを引き受けた。
◇◇◇
ここは、キタ村からナギ村を経由して、ドワンゴ村への丁字路を越えた東側の魔人族の住む土地へと向かう街道。
そこの端に一台の荷馬車が倒れて、荷物が散乱しており、その周りには数人の遺体が転がっている。
何からか逃げるように、街道の脇にある森の中を走るメンドリー=オンドリーがいた。
「はぁ……はぁ……な、なんで、あたしが……こんな……目に」
オンドリーは、肩の傷を押さえながら懸命に走り続ける。
「な……何が……保護して……やるだ……騙しやがって──」
その時、今まで受けた事のないような激痛がオンドリーの右足を襲い、もんどり打って倒れた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!! あたしの足が、足がぁぁ!───あ」
オンドリーは右の太股を押さえながら、離れた場所にある右足を見て、パニックになる。しかし、それもほんの一瞬。
森の中から、緑色の光の竜巻が昇っていくとすぐに消えた。
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