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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第5章 栗鼠と赤い髪と黒き竜
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20000PV記念SS クマゴローの脳内日記

祝20000PV記念。


 これはクマゴローが、フラムの弁償のためにキンタローと別れ、手伝に付いて行った直後のお話。




◇◇◇

「フラム、何やってるの~?」


 フラムが一息ついて何かを書いているのが気になり、オレとミカン覗き込むと、フラムは慌ててそれを身体で隠した。


「あははは、ミカン、クマゴロー、見ないでちょうだい」

「えー、何なの~? 気になるの~」


 ミカンが、フラムの周りを飛び回り困っているフラムを見てオレは、ミカンを捕まえる。


「ありがとう、クマゴロー」


 そう言って、フラムが隠していたのを仕舞った。


「一応言っておくけど、ただの日記よ」

「日記?なの~?」

『ミカン。何だ、日記って?』


 オレはミカンに聞いてみるが、ミカンも知らないみたいだな。


「日記っていうのはね、その日あった事を書いておくの。そうすれば、後から見直すとね。昔あった事を改めて思い出すのよ。クマゴローもやってみる?」


 ミカンから話を聞いたオレは、手のひらをフラムに見せる。


『オレが、熊型の魔獣って事を忘れてないか?』

「あ!あはははは……」


 フラムのやつ、笑って誤魔化しやがった。




◇◇◇

 オレ達は、やる事を終えて家に戻ってくると、リビングってとこに入った。


 フラムは椅子に座り、ミカンと喋っている。オレは、1人部屋の隅でお茶を飲みながら、日記の事を考えていた。


「器用ね」

「器用なの~」


 オレを見て、フラムとミカンが何か言ってやがる。まぁ別に構わない。オレはカップの中のお茶を飲み干した後、ポットのお茶を新たにカップへと注いだ。


「何で、あんなに自然なのよ」

「不思議なの~」


 まぁた、何か言ってやがる。

 しかし、日記か。オレは文字が書けないから、そうだな頭の中で書けばいいな。忘れちゃ駄目だから、定期的にやってみるか。

 オレは一番古い記憶を思い出を引き出していく──




◇◇◇

 オレの一番古い記憶。それはやっぱり、キンタローがウチに来た時だろう。父さんと母さんが珍しく2人で狩りに出掛けてオレと兄弟は、留守番をしていた。


 両親が戻って来ると、父さんの手には2つのエサを持っていたんだ。そう、初めは珍しいエサだと思ったんだ。これはキンタローに知られてはいけない気がする。

 兄弟が、キンタローの腕をしゃぶり味見しているのを見て、オレもちょっと舐めてみた。


 そしたら急に動き出したから、思わず母さんを呼んじゃったんだよなぁ。

 母さんが、兄弟をキンタローから剥がすとキンタローはオレ達の兄弟になると話してくれたな。

 良かった、噛らずに舐めるだけにしといて。


『キンタロー、まだかなぁ……』




◇◇◇

 外から、子供の騒ぐ声が聞こえてくる。

 懐かしい。オレやキンタローや兄弟でよく遊んだ。

 そういや、ミカンに会ったのも遊んでいた時だったっけ。森で迷子になってたのをキンタローが見つけたんだよ、確か。


 オレはミカンをチラッと見る。

 変わってない。昔も今も姿形も性格も変わっていない。

 妖精って変な奴が多いな。


「キンタローに、会いたい……」




◇◇◇

 オレは、思い出したくもない、けど忘れる事の出来ないあの日の事を振り返る。

 キンタローとオレから大事なものを奪っていったあの日の事を……


 あれは長い雨が止み、久々にキンタローと2人で、果物を採取しにいった帰りだった。

 オレがエルフと血の臭いを嗅ぎ、急いでウチに戻ったオレ達の目の前で行われた事にオレは頭に血がのぼった。


 忘れられない…………


 ぐったりとなった兄弟と、父さんの死を。

 そして、小さな体で必死に、飛び出そうとしたオレを抑えながら、涙を浮かべるキンタローの顔を。

 本来聞こえる筈のない距離から聞こえた、母さんの最後の言葉を。


 ぐすっ……


(い、いかん。涙が出てきた!)


 オレは腕で、目を拭いた。誰も見てないよな?


「はぁ…………キンタロー……まだかなぁ……」




◇◇◇

 オレは、またミカンをチラッと見る。フラムの周りを飛び回り、木苺をねだっている。

 ほっとこう……


 でも、ミカンには感謝もしている。

 あの後、ミカンに合わなければ妖精族の庇護は受けられなかっただろうし。

 オレは、カップの中のお茶を再び飲み干した。


 そういえば、キンタローが寝たあとに長老とよくお茶を飲んだな。初めは上手く持てなかったけど、今はこの通り。

 オレは片手にカップの乗った皿を持ち、ポットでお茶を注ぐ。


「やっぱり器用ね」

「器用なの~」


 また、2人がこっち見て何か言ってる。


『あっ!!』


 オレは思わず声を出してしまった。

 思い出した!! いやぁ、日記付けるのいいな! 忘れてたよ!

 そうだ、あれは妖精族に庇護を受けてしばらく経った時だ。オレとキンタローとミカンは、森で薬草の採取をしていて他の熊型の魔獣の一家に会ったんだ。


 キンタローが、『ちょっと待ってろ』って言って、その一家と話をしに行ったんだ。そのうち、キンタローがその家族の1人だろう、若いメスを連れて来たんだよ。

 そしたら、そな若いメスはオレを見るなり怒りだして家族と共に帰っていった。

 キンタローが言うには、オレと“お見合い”をさせようとしたんだと。

 なんでも“お見合い”ってのは、(つがい)にさせるために引き合わせる事らしい。


 オレは、相手の気持ちがわかる。オレだって相手の立場だったら怒ってた。


 だってよう──────



 キンタロー、()()()()じゃ(つがい)になれないよ。

 知らなかったのか?




◇◇◇

 キンタローが、オレの探知範囲内に入ったのに気付くとオレはソワソワしているのが自分でもわかる。


 キンタローがリビングに入ってきて、背負っていたニナをチキンバードに渡すと、オレは飛びついた。


『キンタロー、キンタロー、キンタロー~~~!』




 キンタローだ。オレの大好きな大事なキンタロー。

読んで下さりありがとうございます。


最新話からの下の方に、レビューと評価を書くところがあるよ。

さぁ、レッツとらい( ゜_ゝ゜)ノ

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