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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第5章 栗鼠と赤い髪と黒き竜
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57 白き少女


今話で、第5章は終わりってお話。


 キンタローの家が見えて来ると、門前には数人の衛兵と村人が待っていた。


「ジャン、あれは?」

「他の衛兵は既に指示を出して村人を避難させています。彼らは、キンタローさんの指示待ちです」

「オレの? なんで、また」

「私がそれが一番だと考えたからです」

「責任重大だな……」


 キンタロー達は、門前の衛兵の間を通り抜け家へと入っていった。


 プギーが迎え入れリビングへと案内すると、アレキサンダー村長と、ゴルザ、フラム、ハンスが待っていた。


「ごめん、待たせた。まず、状況の説明を頼む、ジャン」

「はい。丘から見張っていたタカさんを守っていた衛兵から私に連絡が入り、黒い竜が現れたと報告があり、聞いた大きさなどから竜であると判断しました」

「こっちに向かってるのは、間違いないのか?」

「街道上空なので、ナギ村かも知れませんが今からでは到底間に合わないでしょう。ですから……」

「最悪に備える……か」


 キンタローは、目を瞑り対策を練る。


(くそ! 空飛ぶ竜なんてどうすれば……)


 キンタローが目を開けて、指示を出し始めた。


「まずは、おっちゃん! 村人の避難が最優先だ。避難場所は、見張りの丘と山脈の間の森。上空からだと、見つかりにくいからな! それと、クマゴローも連れていけば、力になれる!」

『クマゴロー、ミカンも避難を手伝ってくれ! クマゴローは、歩けないお年寄りや、小さな子供を頼む。ミカンは、クマゴローの通訳! 頼むぞ』


「儂はどうすればいい?」

「村長も避難してくれ。手伝いたいだろうが不安な村人を支えるには、村長が適任だ」


「ジャン! ジャンは、食糧を確保してくれ。村人全員が良くて2日食べれるくらいでいい。あの丘の近くに小川があるだろう? それを汲む桶が必要になる! 炊き出し用の鍋もだ!」

「2日である理由をお聞きしても?」

「ん? 竜が何の目的で来るのかわからないけど、村人だろうが、村だろうが、保てるのは1日たろう?」

「わかりました。では、すぐにでも」


 ゴルザとクマゴローとミカンと村長、そしてジャンも、リビングを飛び出し、残ったのは、フラムとハンスとキンタロー。リビングの外にはプギー親子がいた。


「フラム」

「何? キンタロー」

「……オレはここに残って対策を考える。フラムとハンスとプギー親子で、まずはミネアさん達と合流してくれ」

「お義母さん、来てるの!?」

「ああ。そして、フラム達がミネアさん達と合流したら……」


 キンタローは、ばつの悪そうな顔をしている。正直これから言う事を躊躇(ためら)っていた。

 それは、自分の矜持を押し付けること。


「らしくないわね、キンタロー。ハッキリ言えば?」

「フラム……」

「私達は、家族でしょ?」


 キンタローは、自分の頬を2回叩くと表情が戻ってくる。 


「フラム達はミネアさんと合流後、一旦門まで戻って村中を回って逃げ遅れた人がいないか確認してくれ! オレ達()()が逃げるのは一番最後だ!」

「キンタロー、わかったわ! ハンス、行きましょう!」

「わかりました」


 フラムとハンスが急いでリビングから出ていこうと扉に手をかける。


「ハンス!!」


 突然、呼び止められたハンスがキンタローを見ると、その顔は、悲痛な表情している。


「ハンス、フラム達を頼んだ」


 ハンスの表情は、みるみる明るくなっていく。初めてキンタローに頼りにされた。その事がとても嬉しかった。


「キンタローさん、任せてください! お嬢達は、オレが必ず守ります!!」


 自分の胸を手でバン!と叩いたハンスを見たキンタローは、突然ニヤリと笑う。


「しっかり、聞いたからな。言質は取ったぞ」

「あー……いつものキンタローさんか……」


 ハンスは、ガックリ肩を落としてリビングを出ていく。


(ハンス……本当に頼んだぞ……)


 誰も居なくなったリビングで、1人キンタローは竜への対策を考えていた。




◇◇◇

 ゴルザは衛兵と、村人達を丘へと誘導している。


「ゆっくりだ! 慌てて走るな! いいか、家族や隣人がいなければ、衛兵に言え! 荷物もいらん! まずは、避難だ!」


 ゴルザは、声を張り上げ村人や衛兵に指示を出す。


「おかーさーん、どこー?」


 小さな女の子が、親とはぐれて泣き出しそうになっている。突然女の子の周りが暗くなり、見上げるとそこには自分を見下ろすクマゴローがいた。


「大丈夫なの~、クマゴローがお母さんの所に連れてってくれるの~」


 ミカンが、女の子に話かけ、地面に伏せたクマゴローの背中に乗るように誘導する。その背中には既に2人の子供が乗っていた。




◇◇◇

 ジャンも、商会の前で従業員に声を張り上げていた。


「倉庫の食料品を全て出しなさい! いいですか? 私達が村の人の生命線です! なるべく、ギリギリまで作業しますよ!」


 ジャン自ら、荷物の積み込みをしながら従業員に発破をかける。


「ジャン様~、大鍋もいくつか用意出来ましただ~」


 猫顔の獣人のリリが声をかける。


「リリは、馬車に乗って避難場所へ。積み降ろしは避難している人に手伝ってもらって、また戻って来てください!」

「わかっただー」


 リリは、馬車に乗り馬を走らせる。




◇◇◇

「くそ! ダメだ。空にいる竜の対処なんてどうしたらいいんだ? クマゴローに投げて貰うか? いや届かないか……」


 リビングで腕を組ながらジッと立ち考えるキンタロー。


「何とか地面に降ろすか、こっちから近づかないと…………」


 バン!!と、突然玄関の開く音が聞こえ、リビングから玄関へ出ると、そこには息を切らしたアンリエッタとニナがいた。


「はぁ……はぁ……キンタロー……大変なの!」

「フラム達と会わなかったのか?」

「ふぅ……はぁぁぁ……フラム姉さん達は門に向かったよ。それより、ちょっと来て!」


 息を整えたアンリエッタに腕を引っ張られ、庭へと出る。空の向こうには、キンタローでも竜を確認出来る所まで近づいていた。


「キンタロー、お父さんなの!」

「おっちゃんなら、村人の誘導に……」

「違う! アンじゃなくて、ニナちゃんの!!」


 そう言い、アンリエッタは空を指差す。その先には、また近づいている竜がいた。


「!! あの竜に、ニナのお父さんが乗ってるのか!?」

「違うよ! あの竜がニナちゃんのお父さんだって!!」


 キンタローがニナを見ると、コクリと頷く。




「………………はあああぁぁぁぁぁ!!!?」


いつもありがとうございます。


数話挟んで次は、第6章へと進みます。


続きが気になる方は、ぜひブックマークを。



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