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そばにいてくれてありがとう。  作者: けふまろ
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第二十七話 お祭りのお誘い。

「どうしたの? こんな時間に、珍しいね」

「……えへへ。悠矢と一悶着あって……」

 一悶着、という言葉をいつどのように使うのか分からなかった私だが、とりあえずこう言っておいた。

「……ふーん」


 よかった、晴樹君、私に触れない。一悶着っていう使い方、合ってたのかな。

 ホッとする私を横目に、晴樹君はとんでもない一言を口にした。



「……もしかして、告白?」



「へ? えぇぇぇえぇぇえっ!?」



 何で、何で知ってるわけ!?

 私は思い切りのけぞって、ブランコからずるっと落ちる。

 どすっという音がして、私は思い切り「いたぁ!」と変な声を上げる。

 晴樹君は「ふふっ」と噴き出した様子。

 何で噴き出すのかなんて思ってたら、晴樹君はそんな私の心の内を見透かしたかのように言った。


「悠矢君、惚れるんじゃないかって、昨日、言ったでしょ」


 いきなり笑顔を引っ込めてそんなことを言うもんだから、私は一瞬、びくっと肩を揺らした。

「……告白されちゃった的なやつか」

 晴樹君がそんなことを言って、私はこくりと頷く。

 すると晴樹君は何故か眉を潜めて、「気をつけた方がいいよ」と呟いた。


「何で?」

「そのうち、悠矢君、何するか分かんないよ。僕のこと、殴るかもしれないし」

「何で?」


 一回目と二回目の「何で?」は違う。悠矢が何故、晴樹君を殴るの? 晴樹君は何も悪くないのに。

「何で、晴樹君のことを悠矢が殴るの?」

「うーん、何でだろうね」

 晴樹君は苦笑いしながら、頭をガシガシと掻く。

「……しかし、あっついよなー」

「だね」

 いきなり話題を変えた晴樹君に、私はついていく。


「遥乃さんは、さ」

「ん?」


 晴樹君はいきなりしゃがみこんで、私を下から覗き込む。

 うっ、そんな風に下から好きな人に見られるなんて、生まれてこのかた、一度だってなかったのに。……いや、そもそも好きな人が出来なかったからなんだけど。


「……悠矢君のこと、好き?」


「……へ、へぇ!?」

 そんなこと、聞くものなの?

 だって、姉弟だよ? 仮にも親族だよ?

 そんな人を好きになるなんて、ちょっと私も珍しいとかおかしいとか思ったほどなのに。


「違うよ、私の好きな人は……」


 そこまで言ったところで、ハッとなって口をつぐむ。

 そうだ、晴樹君の目の前で、「晴樹君のことが好きです」って言うなんて、「貴方のことが好きです」と告白しているのと同じようなもんじゃない。


「遥乃さんの、好きな人は?」


 晴樹君も、どんどん私に顔を近づけてくる。

 ……も、もう、晴樹君、本当に……。



「わ、私の好きな人、は、はる……はる……き……君なの……」



 思わず、言ってしまった。

 晴樹君が間近で目を見開いているのが分かる。


「……わ、わわ、ご、ごめんね? と、突然、変なこと言っちゃって……」


 そうだ、よく考えたら、私は悠矢以外から、告白されたことなんてなかったのに。

 晴樹君に、告白してしまったんだ。

 迷惑以外の、何でもないよね。


「……ご、ごめん、晴樹君! 晴樹君、私のこと、別に好きでもないでしょ?」


 晴樹君は、私を見つめるのをやめて、立ちあがり、くるっと後ろを向いて、俯いていた。

「……晴樹君?」

 告白して、相手の迷惑だと分かっていても、やっぱり私は、好きな人の心配をしてしまうんだ。


「今度の土曜日……」

「え?」


 晴樹君が突然、そう言った。

 今度の土曜日……。


 夏祭りの日にち?

 私がそう思った矢先、晴樹君は振り返って、こう言った。



「今度の土曜日に、東麻呂夏祭りに、来てほしい」



 晴樹君は、目元をほんの少しだけ下げて、悲しそうな笑みで、言い放った。

 私はこっくりと頷いて。


 晴樹君は、「じゃあ、土曜日に」と言って、去っていった。

 多分、次が最終回です。

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