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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
5章:パラレル交差する明日へ
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139話「Angel Halo・後編」

20:Angel Halo・後編


・突如地面から出現した巨大な筒状の物体。

「な、何だこれは・・・!?」

ライラ達はもちろん赤い天死も驚愕をしている。

遥か昔に存在していた列車が縦に立ち上がったようにも見える。

しかしそれにしては細いし全体的に丸みを帯びている。

まるで超巨大な鉛筆のようだった。

長さは200メートルほどで先端までよく見えないが

先に行くにつれてより細くなっている。

とりあえず生物でないことは確かだがそれが何なのかが分からない。

「・・・あれは何だ・・・?」

赤い天死が緋瞳を凝らして物体を視察する。

地面側に行くに連れて火薬のようなものが積載されているのが見えた。

「細長い鍋・・・?それにしては自力で空を飛びそうなほどの火薬料だ。」

「自力で空を飛ぶ火薬の塊ですって・・・!?」

ライラが反芻しながら再び目の前の物体を見やる。

数秒沈黙を続けると一度赤い天死を見やり

こちらへの警戒が薄れていることを確認すると2枚のカードを解除する。

「ライラくん・・・!?」

チェック行使サブマリン)!」

カードを発動するとスコープが出現してそれをライラが装着して

再びその物体を視認する。

スコープが物体の内部構造などを解析していきながら

ライラは己の中の知識を結集させる。

そしてその末に最悪の調査結果が浮かんだ。

「こ、これは・・・!」

思わずライラは尻餅をついて転ぶ。

「ライラくん!何がわかったの!?」

「あ、あれは・・・ミサイルです・・・!

しかもかつて世界を焼いたとされる世界最悪の兵器・核ミサイルです!!」

「核ミサイルですって!?」

この時代核ミサイルは愚か通常兵器自体ほとんど存在しない。

ミサイルも過去の産物で教科書で名前が微かに出てくる程度の知名度だ。

現在はもちろん過去にさえ存在していたと信じない人間も少なくないほどの。

しかし今ライラ達のいる場は1000年以上前の、

ミサイルが戦争において現役だった時代の軍事基地跡。

ミサイルの1つや2つが眠っていてもおかしくはない。

先ほどシュトラが放った水球が地面を穿った際に

地下深くに眠っていたミサイル発射装置が作動してしまったのだ。

当然1000年以上前の兵器だ。整備もされていない。

だから発射するはずはない。

しかし起爆自体は間違いなく可能で起こりうる。

そして今このミサイルは内部の火薬を作動させつつあった。

発射されることはなくその場で核爆発する可能性が高い。

「・・・この規模のミサイルが爆発すればこの自然公園はもちろん

山TO氏全域が焼き尽くされ、数十年は人が住めない場所になってしまう・・・!」

「そ、そんな・・・!」

「それに多分・・・今からじゃ避難勧告を出したとしても

多くの人は間に合わない・・・!当然僕達も・・・」

その言葉を聞きその場にいた全員が膝を折った。

赤い天死は片翼だ。

もしも両方の翼が健在ならば爆発前に範囲外に飛行することも出来ただろうが

片翼ではスピードはもちろん距離も全く足りない。

「スライトやシプレックの力でどうにかならないの!?」

「大きすぎるんです・・・!

下手に衝撃を加えてその場で起爆という事も考えられます・・・!」

「じゃ、じゃあどうするのよ!?

私達このまま何もしないでいい訳!?何もしないまま死ぬのを待つって言うの!?」

「・・・シュトラ・・・。」

「・・・今、何か手段がないか探します・・・!」

ライラが再びスコープをつけて対抗策を探す。

今度検索するのはパラレルカード。

十数秒の検索時間を終えて1枚のカードが候補に挙がった。

「・・・空間支配系カード・プラネット

このカードなら核ミサイルを不発に出来る計算です・・・。

でも・・・」

そのカードを持っているのはチーム風のカンナ・IS・モーランド。

当然この場にはいない。

「キリエさんのブルーじゃダメなの!?」

「屋外の支配力では山TO氏全域に広がる事は防げるかもしれませんが

それでもこの自然公園は消し飛びます。

・・・当然ブルーを発動させたキリエさんも・・・。」

「・・・なら僕がブルーを使う!

屋外でも魔力で無理矢理支配力を上げれば・・・!」

「無理ですわ。」

と、そこへキリエ達がやってきた。

「空間支配系カードは選ばれた人間にしか使うことが出来ない。

ブルーを使えるのは世界でただひとり、私だけですわ。

・・・あなた達はスカイカーで可能な限り離れなさい。」

「・・・お姉ちゃん何をするつもり・・・?」

「先ほど彼女ライラが言ったでしょう?ブルーを使えば爆発の範囲を狭めることが出来ると。」

「でもそうしたらお姉ちゃんが・・・!」

「私も世界を守る政府議会の一員。

X是無ハルトの後継者も見つかったことです。

心置きなく任務を果たすことが出来ます。」

「そんな・・・!」

肩を落としながらも言葉を探すユイム。

その横顔は今までにないほど悲壮に満ちていた。

「・・・・・・」

「ミサイルは飛ばすもの。」

「え・・・?」

拳を握るライラの肩をラウラが叩く。

「無害な場所まで飛ばしてしまえばいい。」

「け、けど、そんなことどうやって・・・」

「あなた達にはあの力が、希望パラレルの力がある。

あの力なら不可能はないんじゃないの?」

「そんな簡単に言われてもまだどうやったら

あの力を使えるのかも分からないのに・・・」

しかしライラを囲むように他の5人が足を運んだ。

「皆さん・・・」

「やろうよライラくん。」

「何もしないまま諦めるのはよくない。」

「力を振り絞りましょう。」

「絶対諦めたくないんだから!」

「みんなで守ろうよ・・・!お姉ちゃんもこの街も!」

5人の顔が自分だけを見つめている。

無意識の手が懐から希望フューチャーのカードを顕にした。

すると希望のカードが宙に浮かび上がり6人が手を結ぶ。

さらにその6人と1枚を囲むように全員のカードが宙を舞う。

(・・・皆の鼓動を感じる・・・)

(・・・あたし達にしか出来ないこと・・・)

(・・・それ以上理由なんていらない。)

(・・・危険スリルなんて望んでいない。)

(・・・生き残りたい。守りたい・・・!)

(恐れるものはない、限りない力がここにあるから・・・!)

6人の心と鼓動が交差していくと

やがて6人とカード達が光に包まれていく。

同時にミサイルの中で火薬が作動したのか底面から業火を放ち始めた。

その爆炎が間近にいた6人を消し飛ばす。

「ユイム!」

キリエが声を上げる。

次の瞬間。

希望パラレル行使サブマリン)!!」

爆炎を数百倍にまで強化したアクアのカードの力で打ち消し、

勢い余って空から雨のように降り注ぐ無数の水の中、

6人が一人になった姿・パラレルが姿を現した。

パワーウィング双行使ツインエミッション!!」

カードを持たずして2枚のカードを数百倍にまで強化して発動。

数万トンものミサイルを持ち上げ背中から生やした翼で空へと飛翔する。

最初は少しずつだったが要領を掴んでからは加速して一気に成層圏まで飛び上がる。

しかし、どんどん推力が足りなくなっていきそれ以上飛べなくなってしまう。

「・・・くっ・・・!」

アクアで爆炎を相殺させているがそれでもかなりの熱量が彼女を襲う。

チェックで内部を観察するにもう数秒ほどで爆発するだろう。

だが現在の腕力では持ち上げるだけで精一杯で投げ飛ばすのは難しい。

そして投げ飛ばせても成層圏を超えることが出来ず

その爆発に巻き込まれてしまう可能性も。

それを理解したのはパラレルだけではなかった。

「いい友を持ったようだな。」

「!?」

彼女の横、そこに赤い天死がいた。

その片翼は千切れそうなほどボロボロになっていた。

よほど無理をしてここまで飛んできたのだろう。

あるいはその右腕に全ての力を込めていたからか。

「あなたは・・・!」

「お前は絶望をせずに生き抜け。仲間と共に。」

彼女は地面に向かってパラレルを全力で殴り飛ばす。

自然とその手からミサイルが離れてしまい、

宇宙を背にミサイルと赤い天死だけの姿が視界の中でどんどん小さくなっていく。

そして米粒ほどの大きさになったところで大空と宇宙をバックに炎の花が咲いた。

天使の輪のようにも見えた。


「・・・あ。」

気付けばライラ達6人はそれぞれの姿に戻って地面に倒れていた。

どうやら落下の衝撃で6人に戻ってしまっていたようだ。

パラレルが衝撃のほとんどを相殺していたからか6人に怪我はほとんどなかった。

空を見れば既に紅に染まっていた。

一瞬爆炎かと思ったがしかし日常の夕暮れだった。

周囲を見渡すが昨日までと何一つ変わり無い日常が広がっていた。

・・・日常は守られた。

ひとりの天使の命と引き換えに。


その夜。

政府議会によって再び6人の身体検査が行われた。

やはりパラレルになっていた時の状態は不明で

特に6人に変化が見られなかった。

だが、

「あれ?」

ライラがふと瞬きをした瞬間に視界が変わったことに気付いた。

まるで緋瞳を発動していた時のようだった。

しかし次に瞬きをするとまた通常の視界に戻る。

「これは・・・」

次に故意に緋瞳を発動させてみる。

発動して視界が情報化される。

そして緋瞳を征して元の視界を望むと通常の目になった。

「・・・天死の力を使えるようになってる・・・?

まさかパラレルに合体したから・・・?」

次に緋瞳を発動させ両腕を変貌させ背中から翼を生やす。

しかし理性に変化は見られない。

意識も正常だ。

「・・・・・」

唾を飲みゆっくりと元の自分の体をイメージすると

緋瞳は通常の目に戻り、両腕も人間のそれと同じになり、

背中の翼はまた背中に収納された。

「・・・間違いない。天死の力を制御出来るようになってる!」

そのための犠牲を考えれば不謹慎かもしれなかったが

しかしライラは素直にこのことを喜んだ。

ただ、せっかく不眠不休で準備をしていた剣人はそれを知ると不貞腐れ、

またストレス解消のために女子更衣室巡りを再開させるのであった。

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