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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
5章:パラレル交差する明日へ
122/158

121話「光の残滓」

2:光の残滓


・3月。すっかり寒風が支配していた風の色にも

暖かな芽吹きの風が混じり始めた季節。

「ゆ、ユイムさん・・・」

「もうダメだよ?声までは隠せないんだから。」

そんな山TO氏高校の職員室前の廊下に二人。

ステルスのカードで景色には含まれていないがライラとユイムがいた。

もちろんただ透明で突っ立っている訳ではなく

「ゆ、ユイムさぁん・・・・」

微かにこぼれた液体が床に落ちていく。

そのわずか数センチ横を何食わぬ顔で他の生徒達が歩いていく。

スカートの下の決して人には見られたくはないモノ。

「ねえ、さっきから何か聞こえない?」

「え?そう言えば・・・なんだろうね。」

「・・・・っ!!」

ちょうど向かいで話す二人組がその音を聞いてしまった。

「お、ライラくん。また反応が良くなったよ?

見られて嬉しいのかな?見せて感じちゃうのかな?

そんなえっちなライラくんにはもっと気持ちよくなってもらっちゃおう。」

「ううううっ!!」

また命を作り出す熱量が放たれた。

「じゃ、またやろうね。」

後始末をすべて済ませてからステルスを解除して

何食わぬ顔でユイムはどこかに去っていった。

「・・・はぁ、」

ライラもステルスを解除するが先程まであのようなことをしていたのに

それを見せていた少女が二人何気なくこちらに視線を向けるだけで

頭が噴火しそうになったため慌てて逃げるように走り去ってしまった。

「・・・はあ・・・はあ、さ、流石にユイムさんやりすぎだよ・・・。」

屋上。沸騰しそうなほどの体温を風で冷ましている。

もう昼休みも終わりに近いからか周りには誰もいなかった。

そのはずだったのに、

「本当ですよね。まさか廊下であんなことするなんて。」

「え!?」

確かに声がした。

慌てて周りを見るが確かに誰もいない。

「げ、幻聴・・・?」

「違いますよ先輩。姿がないだけです。」

「ま、また!?・・・と言うか今の声どこかで聞いたような・・・」

ステルスを使っているのか、周囲の魔力を探ってみるが

その気配はなく間違いなく今ここには自分しかいない。

「先輩も相変わらず用心深いですね。

でも流石にどんな魔法のカードでも科学で作られた代物じゃ

こんな心霊現象は対処できないでしょう。」

「し、心霊!?・・・って言うか今の声で分かりましたけど、

あなたもしかして・・・ヒカリさんですか・・・?」

「はい!そうです!ピンポーンです!

ヒカリ・軽井沢・SKAちゃんですよ!先輩。」

明るい声が脳裏だけに響く。

「ど、どうしてヒカリさんが・・・!?

お亡くなりになられたはずでは・・・」

「うん、私もそう思ってたんですけどね。

キュアで私の命を使ってユイムを生き返らせたワケですが

あの時一緒に私の体も消えたじゃないですか?

どうやら蘇生に必要なのは命じゃなくて肉体だったみたいです。

けど先輩のその体って非常にひっじょぉぉぉ~~~に不安定じゃないですか。

ユイムになったり先輩になったりで。

なので中々私の意識が出てこられなくなってたみたいです。

でもやっとその体の持ち主が先輩に統一されたので

こうして私の意識が出てこれるようになったわけです。」

「そ、そうだったんですか・・・」

「そうなんです。80話ぶりくらいの出番ですけど。」

「ヒカリさん。いくら死を経験したからといって

急にメタキャラにならないでください。」

「でも先輩。流石に声しか出せないと不便ですし

先輩もこうして先輩にしか聞こえない見えない相手に

話しかけていると変人扱いされると思うので

私の体をどうにか再生できませんかね?」

「・・・えっとそれってまさか僕に死ねと・・・?」

「それしか戻れないのなら仕方ありませんけど

何も失ったあのぷりちーなボディを

そっくりそのまま返せっていうわけじゃないです。

何かナイトメアカードで私の新しい肉体を作れませんか?」

「えぇ!?いや、そんなこと言われても

いくらナイトメアカードだからって新しい肉体を用意出来るような

何でもアリなカードがあるわけが・・・」

「あるぞ。」

「え!?」

声。振り向けば更衣室の方向からボコボコになった剣人が走ってきた。

「け、剣人さん・・・今どこから・・・」

「まあまあそんなことよりだ。とにかく新しい体が欲しいんだろ?

方法ならあるさ。前に俺がその体を破壊する代わりに

新しい体を用意するって言っただろ?

この造物オブジェのカードを使えば自由に肉体を作り出すことが出来る。

そしてこの移植インストールのカードを使えば

その作った肉体に精神を移植できる。」

「本当ですか!?」

「ああ。・・・ただし使えるのは2400時間に一度だけ。

1年に3回くらいしか使えないわけだな。

さあ、今なら2枚セットで2450万だ!」

「え!?お金とるんですか!?今までタダでくれたのに!?」

「・・・まあ、俺も不老不死とは言え生きている人間だ。

金があって困るわけじゃない。むしろないと困る。割とマジで。

今も更衣室に行って下着・・・じゃなかった財布を盗もうと思って・・・」

「・・・あなた本当に聖騎士ですか!?」

「まあ半分は冗談だが。

しかし流石にタダでやるってわけにもいかない。

俺が使えない希望フューチャーのカードならともかく

オブジェもインストールも使いどころを間違えたら大変だからな。

だから何か交換条件が欲しい。

前回の件でお前は個人的には信頼に値すると感じたが

ナイトメアカードの司界者としてはもう少し慎重でいたいからな。」

「・・・交換条件ですか。

と言っても僕に出来ることなんてそうそうありませんよ?

あ、他の女子の痴態を盗撮しろとか下着を盗んで来いとかはダメですからね?」

「俺が痴漢に見えるとでも!?」

「女子しかいない学校の更衣室から殴られながら出てきた人を

痴漢以外の何だって言うんですか!?」

「お、お前だって女子更衣室に入り乱れているじゃないか!?」

「僕は一応女子なんですよこれでも!

・・・で、何をしてくればいいんですか?」

咳払い一つして本気度8割の漫才を終えてライラが改める。

「・・・ああ。お前の後輩にガイアスを連れた子がいるだろう?」

「パルフェさんですね。」

「あの子と一緒に純闇カオスを探して捕まえてきてほしい。」

「カオス・・・?」

「そう。キマイラ、ガイアスに並ぶ3体しかいない

召喚系ナイトメアカードの1体だ。

天死もほぼ絶滅しブランチも手をこまねいている今

あまり戦力は必要ないかも知れない。

だが、俺のカンが告げているんだ。

・・・きっと今までにない大きな力がこの先俺達を襲うかも知れないと。

だから今まで数百年も自由にさせていたあいつらの力を今一度借りたいんだ。」

「・・・分かりました。必ず見つけられると約束は出来ませんが

可能な限り力を使いたいと思います。」

「・・・助かる。じゃあまた希望のカードをさずけよう。」

剣人が希望フューチャーのカードをライラに渡した。

「このカードもそんなに多くはない。

お前なら心配はないかも知れないあまり適当に使うなよ?

あと聞いてるかどうかは知らないが使えるからって

複数のナイトメアカードを同時には使うな。

司界者である俺やパラディンならともかくそれ以外の人間が

ナイトメアカードを使うのはDNAや細胞レベルで良くないんだ。」

「・・・はい。心得ています。

この一年間で僕はユイムさんのカードで

何度もナイトメアカードを使ってしまった。

今度は自分の体だからといって適当にはしません。

・・・これは可能な限り機会を選んで使いたいと思います。」

「そう、それでいい。

それでカオスの居場所だがガイアスなら知ってるかもしれない。

あいつは大地を通じてあらゆるカードの居場所を

知ることが出来る能力の持ち主だからな。」

「そんなすごい能力が・・・分かりました。」

「あ、あと出来ればお前の下着も・・・」

「それは大断りですっ!!」

とりあえず剣人に大腰、コブラツイスト、バックブリーカー、山嵐、

地獄車、チョークスリーパー、発勁で叩きのめしてから

キャメルクラッチを仕掛けておいた。

剣人は本気で痛そうな表情に歪めて去っていった。

「・・・愉快な人だねぇ。」

「それだけならいいんですけどね。」

聞こえたヒカリの声に返す。

「と言うか先輩やっぱり女の子だったんですね。」

「・・・まあ、否定はしません。」

「半日くらいだけだけど先輩の体を

借りた時にもしかしたらとは思ったんだよね。」

「シキルさんやラウラさんはもう知ってますよ。」

「・・・・・そうなんだ。

ねえ先輩。先に言っておくとラウラには気をつけたほうがいいよ。」

「え?」

「・・・分かってると思うけどラウラって人間じゃないから。」

「・・・・え?」

その能天気な声で語られた言葉をライラは理解できなかった。

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