109話「ブランチに魅入られた少女」
22:ブランチに魅入られた少女
・全国大会4回戦目。
対戦相手は旧栃木代表である大王者高校。
「・・・・」
控え室。ティラとラモンの試合を見ながらも
ライラの注意はパルフェに注がれていた。
昨夜パルフェはブランチによって大地のカードを渡された。
だが、気付いたらその手に握られていただけだという。
それだけでブランチの願いが叶えられたのか
それとも自分が来たことで中途に終わってしまったのか。
どちらにせよパルフェには強くそのカードを使わないよう言っておいた。
それでもブランチが干渉してきたというだけで警戒は上がる。
やはりこの大会にもブランチが手を出してきている。
そしてそれは恐らくパルフェ一人だけではないだろう。
いくら強力なナイトメアカードを渡されたとは言え
パルフェにはヒカリのような強い願望があるわけでもなければ
ユイムのように強い感情があるというわけでもない。
恐らくシキルやラウラのようにそれをサポートする役割。
だからパルフェの近くにはブランチの本命がいる可能性がある。
当然このことはキリエにも話した。
キリエには今警備隊と共に会場内を調査してもらっている。
そのキリエも専用の義手がなければ手でカードを扱えない。
だからソックスの中に蒼とフェザーのカードを入れている。
この2枚しか今は使用できない。
並みの選手が相手ならば問題ないかもしれないが
相手がブランチとなればキリエでも油断はできない。
X是無ハルトの家に来てまでわざわざナイトメアカードを渡したのだから
キリエが今両腕を使えないことも掴んでいるだろう。
(・・・いざとなったら僕がやるしかない。)
ライラがモニターを見やる。
いつの間にか試合は二人騎馬戦に発展していていた。
しかもティラと対戦相手にはゴスロリドレスが着飾られていて
ラモンとその対戦相手はひたすら穴掘りをしていた。
「・・・何だかすごい惜しいシーンを見逃してしまったかもしれない。
っていうか何があってあんな状況に!?」
「もうライラくん。今大事な場面なんだから静かにして!」
「そうですよ、先ほどのランバダ対決も見ものでしたが今回も・・・」
「・・・・・・・」
どうやら自分が模索している間に
パラレルカードという競技は異次元の領域に到達してしまったらしい。
それから第二ラウンド、第三ラウンドを続けて
最終的に大玉転がされ競争の末に引き分けとなった。
「そこまで~~~っ!!パラレルカード始まって以来の異色な試合でしたが
その結果もまた奇想天外!この勝負、引き分けだ~~~っ!!」
アナウンスがかかりライフが解除されて
「Satisfaction!!」
4人が舞台の上で肩を組んで拳を天に突き上げた。
「・・・すごい試合を見てしまった。」
「そ、そうですね・・・。パラレルって奥が深い・・・」
「・・・ではパルフェさん。行きましょうか。」
「は、はい。ライラ先輩。」
ライラとパルフェが控え室を後にする。
「いいですかパルフェさん。ナイトメアカードは、」
「はい。家に置いてきましたから大丈夫です!」
「・・・いや、ナイトメアカードはどこにあっても
所有者が望めば出現する仕組みになってるんですが。」
「えぇ!?そうなんですか!?」
「なので使おうと思うことすらダメですからね。
大丈夫です。昨日打合せしたとおりの戦術で
日々の練習成果を最大限引き出せれば絶対になんとかなりますから。」
「は、はい・・・!」
そうしていると正面からゴスロリ姿の
ティラと作務衣姿のラモンが歩いてきた。
「すごい試合でしたね。」
「うん。流石にこんなの初めてだったよ。」
「あんた達も頑張りなさいよ。」
「は、はい・・・!」
4人が廊下でハイタッチを済ませすれ違う。
「ではこれよりタッグ戦2を行います!
山TO氏高校は昨日義手が壊れてしまった
キリエ選手に代わって補欠選手の参加となります。
では入場お願いしましょう!
ユイム・M・X是無ハルト選手とパルフェ・可憐DOW選手です!!
対しましては水戸光国選手とゴッドキング・徳川・SWORDFISH選手です!」
4人が舞台の上に上がる。
自分以上に小柄な少女とミネルヴァ並か
それ以上にマッシブな大男が相手だった。
「それでは!見合って見合って・・・はじめっ!!」
号令と号砲。同時に4枚のカードが宙を切る。
「離・行使!!」
光国がカードを掲げると空から核融合エネルギーの塊が降ってくる。
「テンペスト・行使!!」
ライラが暴風雨を起こすがアトミックは大して
相殺できず舞台中央に直撃した。
「くうううううううう・・・!!」
二人が腰を低くして爆風に耐える。
と、その爆風に乗ってゴッドキングがドロップキックで飛んできた。
「パルフェさん!!」
「は、はい!大・行使!」
パルフェがカードを発動させるとその両手が巨大化して
突っ込んできたゴッドキングを叩き落す。
そして倒れたゴッドキングをライラがキャメルクラッチ。
しかしゴッドキングは両足を反らせてライラの首を後ろから閉める。
「な・・・・!!」
さらにそのまま足でライラを後方に投げ飛ばして立ち上がるゴッドキング。
「なんて滅茶苦茶な・・・」
「先輩!大丈夫ですか!?」
「平気です!だから集中を!」
「はい!」
パルフェが巨大化した両手でゴッドキングを握り締めて地面に叩きつける。
「フリーズ・行使」
と、その両腕が光国が発動させたカードで凍ってしまった。
「きゃ!!」
慌ててカードの発動を止めると解放されたゴッドキングが立ち上がり
パルフェに向かって突進する。
「ステップ・行使!」
と、脚力を強化させたライラが超スピードでやってきて
走るゴッドキングの足を横から蹴りつけ、その巨体を宙に舞わせた。
3回転ほどして頭から地面に突っ込むゴッドキング。
しかしそれでもほとんどダメージは無く当たり前のように立ち上がる。
本当に人間かと疑うレベルの耐久力だった。
けど前にもそんなことがあった。そしてラットンの顔が浮かんだ。
「・・・そうか・・・!機械人形・・・!」
生身の人間ではない、機械人形の技術で改造されている人間かも知れない。
むしろ生身の人間よりそっちの可能性の方が高い。じゃないと怖すぎる。
再び向かってきたゴッドキングの側面に
回り込みその脇腹に前蹴りを打ち込む。
「!?」
「・・・やはり、」
録画したビデオで見た地区大会決勝の時のラットン同様
ゴッドキングも内臓部分を機械化改造されているようで
今のキックで体内の金属部分が破壊されたのか
さっきまでの不死身ぶりが嘘のように苦しがって膝をついている。
「降参してください。
そうじゃないと命に関わってしまうかもしれませんよ。」
ライラがゴッドキングの肩に手を置く。
その瞬間だった。
「錬成・再行使」
カードの詠唱が聞こえた直後ゴッドキングの体がドロドロに溶けて
次の瞬間鋭く尖った細長い金属がライラの胸を貫いた。
「・・・金属を自由に操るナイトメアカード・・・」
光国がそのカードを見せると同時にライラは倒れた。




