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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
109/158

108話「決戦前夜の少女達」

21:決戦前夜の少女達


・全国大会が続いていく。

2回戦目はタッグ戦二人が勝利したがシングルで

シュトラとラットンが敗北してケーラが敵の大将と激突。

ギリギリで勝利したことで無事3回戦に進出。

3回戦ではキリエの義手の不調が原因でX是無ハルトペアが負けるという

ハプニングがあったがシュトラとラットンが勝利したことで

無事何とかなった。

「何とか一日目を勝ち残れたね。」

帰り道。笑顔だがさすがに疲れがたまっている様子のティラがはにかむ。

大会参加者には近くのホテルが無料で貸し出されているが

キリエの義手を直す必要があるため

全員X是無ハルト邸に泊まることになった。

「まあ、チームのみなさんは構いませんが

どうしてあなた方まで来るんですか?」

スカイカーには升子、来斗の他に葵とリイラ、ユイムまで乗っていた。

会場から旧帝都までは一般のスカイカーでは何時間もかかってしまうのだ。

10人乗りだったが小柄な者もいるため

何とか全員乗り込めたが結構きつかった。

「いや、来るのはまだ許しますがどうして同じ車なのですか!」

「X是無ハルトの専用高級スカイカーに追いつけるスピードの

スカイカーなんてティラ以外の誰が持てるって言うのよ。

相変わらず姉さんは庶民の気持ちが分からないんだから困っちゃうよね。」

「ユイム、あなた戻りたがってなかったじゃないですか。」

「だってリイラちゃんまでこっちに来ちゃうと僕一人になっちゃうし。

それにお姉ちゃん一人に仕切らせたらどうなるか分からないもん。」

「何ですって・・・!?」

「あ、あの、出来れば狭い車内で

姉妹喧嘩はやめてほしいんですが・・・。」

姉妹喧嘩にいつものように仲裁を入れている間に

スカイカーはX是無ハルト邸に到着した。

「うわあ、何も変わってない~なっつかし~~~!!」

ユイムが屋敷の前で両手を広げて懐かしんでいる。

「言っておきますがあなたはここではライランド・円cryンと言う

来客として訪問するんですのよ?」

「チェンジを使えば問題ないでしょ?」

「1枚しかないチェンジではあなたと同じ姿の人間が

二人いることになりますわよ?」

「と言うかどうしてまだメイドさん達に言ってないのかなあ?

いくら他言禁止の勅命があるからって

同じ家に住んでいる以上家族だっていうのに

その家族にまで黙ってるなんて相変わらずお姉ちゃんは根暗なんだから。」

「ユ~イ~ム~~~!!」

チェンジで本来の姿に戻ったユイムが走り、

それを腕のないキリエが追い回す。

「・・・あの二人仲がいいのか悪いのか分からないね。」

「・・・きっと仲はいいんですよ仲は。・・・相性は別として。」

困った顔のシュトラにやはり困った顔のライラが答える。

と、そこに1台のスカイカーが飛来した。

「あれはミネルヴァさん?」

スカイカーが着陸すると中からミネルヴァと

中等部2年のパルフェ・可憐DOWが降りてきた。

「パルフェさん?」

「あ、あの、先輩・・・」

何やら緊張と焦燥の間に挟まれてどうしたらいいのか

分からないといった表情のパルフェ。

彼女の肩に手を置いてミネルヴァがライラの方を向いた。

「いや、もしもの時のために連れてきたんだ。」

「もしも?」

「そう。確かに公式試合では中等部の生徒は参加できないが

補欠として一人までなら参加が認められている。

それでさっきの試合でキリエの両腕の義手が壊れただろう?

だからもし明日までに直らなかった場合

この子に出てもらうために連れてきたんだ。」

「わ、私なんかがキリエ先輩の代わりでいいんでしょうか・・・?

そ、それに初めての試合が全国大会なんて・・・!」

「大丈夫です、落ち着いてください。」

パルフェの手をライラが取り、安心させるために目を合わせる。

「・・・あと、1つ質問いいでしょうか?」

「何ですか?」

「・・・どうしてユイム先輩が二人いるんでしょうか・・・?」

「・・・あ。」

視界の脇ではまだユイムとキリエが追いかけっこをしていた。

どうやらこちらに気付いていないのかユイムは本来の顔のままだ。


・X是無ハルト邸。食堂。

住み込みのメイド含めた全ての人間がそこに集まった。

そしてライラとユイム、キリエによって事情が話された。

当然驚かれたが一部のメイドは

キリエがライラをその名で呼んでいるのを何度も聞いていたためか

おおよその推測がついていたという。

そしてパルフェに関しては驚きのあまり過呼吸になりかけてしまっていた。

「けど確かに私の腕は明日までに間に合わないかもしれませんが

その時はあなたが出ると思っていましたのに。」

「流石に年齢がな・・・。」

キリエがミネルヴァに愚痴る。

「パルフェさん。」

「え、あ、あの、ユイム先輩・・・じゃなくてライラ先輩・・・!?」

「そんなに緊張しないでください。」

「え、いや、その、でも、先輩はユイム先輩じゃなくて

男の人で、でも実は生えてるだけの女の子で

息子さんまでいて天死でそれであのあの・・・」

流石に情報量が多すぎたのかパニックになっている。

確かに比較的最初の方から順序よく状況を説明されていた

シュトラ達に比べて不運な事にどんどん悪い状況が増えていくためか

事情を知るのが遅ければ遅いほど

情報量が増えていって混乱するのも無理はないだろう。

この様子じゃきっと冬休みに行く予定の泉湯王国アク・サスファンテでも

またシキルに対しての状況説明で苦労しそうだった。

ともかく部屋で落ち着いてもらおうと思ったのだが。

「ユイムさん、部屋どうします?」

「え?あ、そっか。いま僕の部屋ライラくんが使ってるんだっけ。」

そう。本物のユイムが戻ってきたのだから部屋はユイムに返すべきだろう。

しかしそうなると自分はどこに行けばいいのか。

「・・・・・・・・・・・・・」

猛烈なほど升子が視線でアピールしてきているのが怖い。

「・・・拓也と紘矢が知ったらさぞ悔しがるだろうな。」

一方で葵はあまりにラッキーすぎる状況からか

ついうっかり普段のクールが崩れていた。

「・・・やっぱり男ね。」

リイラがぼそっとつぶやいたのを聞いて

慌てて表情を整えるがもう遅かった。

それから夕食後にライラはパルフェとフォーメーションの確認をした。

ミネルヴァやシュトラが推すだけあってパルフェは中々才能があった。

タッグ戦向きの能力ではないがそれはライラも同じ。

だから無理にタッグ戦向きのカードや戦術を用意するよりかは

お互いの戦術を確認して潰し合ったりしないように

発動のタイミングや範囲の確認などを重点的に行うことにした。

呼吸の確認をしてからパルフェの地力を上げるために

軽い組手も行うことにした。

「・・・家でパラレルの練習が出来るなんてX是無ハルトはすごいわね。」

リイラが紅茶を飲みながら練習風景を眺めた。

「・・・人の家のメイドを勝手に使って

そう呑気に出来ることも中々すごいと思いますわよ。」

とりあえずキリエが袖でリイラを叩いた。

それから女子は全員で風呂に入ることとなる。

「・・・見張りなどしないでいいというのに。」

「私の暇つぶしも兼ねているのですからお気になさらず。」

キリエは葵と非戦闘用義手でチェスの対戦をしていた。

「・・・うう、まさかユイムさんとお風呂にまで入れるなんて・・・。」

「ライラくんまだ慣れていないの?もうその体になって9ヶ月。

セックスまでした仲だっていうのに健気だね。」

「ユイムさん、ライラくんの草食度を舐めちゃいけませんよ。

私とは同じ学校同じクラス部活も同じ部活では

裸でシャワーもあるというのに

一度もライラくんの方からはしてくれませんもの。」

「・・・そこ3人。小学生もいるってこと考えてくれるかしら。」

「中学生も二人いるのよ。考えなさいクソユイム。」

「うう、リイラちゃんも升子ちゃんも厳しすぎるよ・・・」

「と言うかその中学生の一人は

今まさに自分の子供を抱きながら何生娘ぶってるのよ。」

「升子、もうちょっと丁寧な言葉遣いをしたほうがいいと思うよ・・・?」

「・・・ケーラよ、最近の女子校生は怖いもんだねぇ。」

「あの5人が特別なだけですよミネルヴァ姉様。」

口論を完全に無視してケーラ、ミネルヴァ、ティラ、ラモン、ラットン、

パルフェが湯船に浸かっている。

それから風呂を上がり全員がそれぞれ貸し与えられた部屋に向かう。

「・・・何でバカ兄貴と同じ部屋なのよ。」

「まあまあ・・・。」

円cryンの兄妹は同じ部屋となった。

ユイムの部屋には当然ユイムとシュトラが。

それ以外は一人1部屋ずつだ。

「・・・何だか眠れないな。」

夜中。ライラが起き上がる。

隣にはリイラが眠っている。こうして妹と一緒に眠るのは久し振りだった。

その妹を起こさぬまま部屋を出てリビングに水を飲みに向かう。

「・・・・ん?」

廊下。一瞬だけだがブランチのような黒い影が見えたような気がした。

「・・・夢であってほしいけど・・・」

念のためそのブランチがいた場所に向かう。

そこは確かパルフェに与えられた部屋だった。

「パルフェさん、いいですか?」

扉をノックして中に入る。

「ライラ先輩?」

パルフェは起きていた。

布団の上に立ち上がって1枚のカードを握っていた。

「・・・それはまさか・・・」

慌ててそのカードを見る。

そこには大地ガイアスの文字が刻まれていた。

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