第二話 銀の英雄
立派ではないが小さな教会が建っていた。リーチェはキャリーを引き摺りながら教会の入り口に立つとそこから若い黒いローブを着た女性が立っていた。女性はにこっと微笑む。
「貴女がリーチェね?私の名前はミークと言います。アウレス殿からお話は聞いています。どうぞお入りください。」
「はい、ありがとうございますミーク。」
リーチェは小さく頷くとミークは笑顔で此方こそと挨拶をする。中に入るとそこは普通の教会であり前には教壇そして十字架に張り付けられているイエス像がそこにはあった。
「聞きました。リーチェさんは神を召喚するのですね。」
いきなりの発言だったためリーチェは驚きの声を発してしまった。
「あっ!ご安心を、私はアウレス殿から頼まれて少しだけサポートをしてくれと言われました。誰かには言いませんので。」
「ありがとう。ミークシスター、安心できます。」
リーチェの言葉が嬉しかったのかミークは笑顔を見せる。リーチェはふと疑問にミークに聞く。
「...そういえばここはミークシスターだけなのですか?ほかの者は?」
リーチェの言葉にミークは少し困った顔をしながら言う。
「すみません。ここの教父であるコアノ神父は北の方に行ってますの。」
「北...ですか?」
「はい、何でも小さな子供たちが次々に失踪しているらしくその原因を確かめに行ってますの。」
ミークの言葉にリーチェは俯くがミークは両手を顔に出し両腕を振る。
「心配しないで。コアノ神父はいつも無事に帰ってきます。あの人は銅の魔法使いなので。」
「そうなんですか。それなら安心ですね。」
ミーク言葉にほっとしたのかリーチェは静かに微笑む。
「はい!まぁ、私は半人前なので黄の魔法使いですけど。」
「なるほど...しかし子供が行方不明ですか、心配ですね。」
「...はい、とても。コアノ神父無事でいてくれればいいんですが。」
リーチェはミークに笑顔で頷く。
「...さてこの祭壇使っても?」
リーチェは祭壇の前に立つとミークははい。と返事をする。
「コアノ神父からも手紙で返事を貰ったので平気かと。」
「わかった。早速、準備を始めようか。」
リーチェはリュックサックから召喚術に必要な魔導具を出してくる。ミークは黙ってそれを見つめていた。
「えっと、次に魔方陣か。」
リーチェは神獣の骨で作ったチョーク、水銀、チェコの実などの伝説の実、聖水で次々と魔方陣を描いていく。
「...できた!」
リーチェとミークは顔を見合せ笑い合う。二人の下には巨大な魔方陣が描かれていた。
「...よし、始めるとしよう。ミークは危ないですから後ろに下がって。」
リーチェがそう言うとミークは頷き、後ろに下がっていく。
「――我が名は銀を司る魔法使い、汝、空を統べるし天空の一族リロイドに応じよ。英雄の力を我に示せ、その力を持ってして空を突き、未来を我に示したまえ。総てを無に還し、汝に二度の生を与えん。いざ、此処に我が騎士となる者よ!!」
◇ ◇ ◇
「あっ?」
クーはその時、トラックの荷台に乗せられてフランスパリに向かっていた最中。...しかし今、誰かに呼ばれた。嫌...喚ばれたのだ。その時、一瞬で神であり大英雄のクー・フーリンは消えたのだった。
◇ ◇ ◇
リーチェが呪文を唱えた後、眩い光が二人を襲う。あまりの銀色の光に二人は目を閉じる。少しして光が消えてゆき目を開けるとそこには―――銀色の髪と槍、身に付けている銀の鎧を着た一人の青年がリーチェの前に立っていたのだった。
「あー、初めまして?クー・フーリンと申します。」
銀色の青年はリーチェを見ると綺麗な笑みを見せながらリーチェに手を差し伸べたのだった。