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灰色のバックソード  作者: Hegira
第三者
35/95

営業シェイカー

 ゆらゆらゆれる。

 とても簡単に。

 幸いにも朱夏サンは歩いてくれていたので僕が追いつくのは簡単だった。


「ぜい、はあ、they,her……」

「…………」

「何か言って!」


 置いてけぼりばかり追いかけてばかりの僕だった。

 そして、僕と朱夏は地図の場所にたどり着いた。


 骨董屋。

 いかにもな木造で、古めかしい以外にほとんど特徴のない建物だった。二階建て、一階の瓦屋根の上に〝轟骨董〟と、看板が立て掛けられている。既に開いているが、入り口はやかましくガタガタガタッ! という音を立てそうな、木の枠にガラスという、やはり古めかしい引き戸だった。

 中には、僕の語彙では『おばちゃん』としか表現のできなさそうな女性がそのまま飾り気のない普段着という装いで展示スペースでもある土間の向こう、地面から数十(センチ)高い床に正座で座り込んでいた。


「いらっしゃい……なんだ、高校生のお客さんかい。まあたまには若い顔と会っておくのもいいさね。ああ、ここは年中無休――いやいや、有休で悠久に暇な轟骨董(とどろきこっとう)さね。あぁあぁ、無給と言っても差し支えないさね」


 差し支えないのか。


「何かに(ひび)が入ってそうな店名だな……って、あまり歓迎されていない?」


 何気に失礼な僕を、朱夏は『大体こんなところで寂しく古物商やってる時点で気づかないかなあ?』という目で見ていたが(もう僕の株がいくら落ちようと知ったことか)、おばちゃん(暫定)に向かって襟を正し、挨拶を始めた。


「私は志士島朱夏って言う跡路高校の二年生です。あなたは?」


 それに対しておばちゃんが、今気付いたかのような反応で口を開いた。


「……ふぅ、これもまた因果かねえ……あぁあぁ自己紹介されたら応えるのが日本人ってもんだろうね。おっと私も日本人だったさ……私は車三つの間と書いて(とどろき)(あわい)と言うもんでさ。見ての通りこんなところで骨董屋をやってる偏屈でございますよ。改めて、初めましてシシジマアヤカちゃん。良い名前さね」

「ありがとうございます」


 ……その丁寧を僕にも少し、向けて欲しいよ。

 ということを曖……あれ? 『おくび』って言おうとしたのに出てこない……! 何!? シフトJISに載っていない!?

 ご覧の小説の制作はシフトJISコードを基準にしているのに! おくびがない!

 ちくしょう! 伝わらないぞ! 『口』に『愛』と書いて『げっぷ』という意味の楽しい漢字なのに!

 うおあああシフトJIS! しっかりしてくれ!

 ……ゴホン。

 ともかく、そんな愁嘆を口愛(おくび)にも出さずに僕は努めてはっちゃけて振る舞う(この文だけ横向きに読んでネ!)。


「そして僕は四手統那、今をときめく高校2年生さ!」


 キラーン…………

 むなしい虚空。

 むなしい虚空、発生中。


「…………」

「あぁそう……良い名前さね」


 見事なまでに滑る滑る。

 朱夏のまるで半魚人(しかも不細工な面)を見るような冷酷無比な視線が痛い。居た堪れない。いた『たまれな』い。……痛いと居た堪れないに共通項があったからどうしたと言うんだ、僕は。


「……どうも(ホントにどうもすいません。ボケが、潤いが足りないんです)」


 せめてもの轟さんのレスに言葉以上の感謝の念を送った僕。

 まあ、まず届かないだろう。


「さてさあ、お二人さん見たところ何か探し物さね?」

「というか……ここって何があるんですか?」

「ん? まあそうさねえ……見たまんまと言うかね、古い物だったら何でも扱うことがあるさね」


 そう言う轟さんの後ろに、叩いて直りそうなテレビが2〜3台あった。ホコリは被っておらず、現役でチャンネルを回せそうだった。


「骨董というより、古物を扱う感じか……」

「そうさね。希少さや美術的な価値より何より、古さがあれば買い取っているもんだから、趣味でやっているようなもんさ」


 ここで僕の思考は立ち返る。

 一体、窓枠ちゃんは何でこんなところに案内したんだろうか……?

 平成生まれの少年少女に昭和大正明治江戸以下省略〜、の情緒を堪能しろと?


「一人でやっているんですか?」

「いやいやそんなことはないさアヤカちゃん。普段は私一人だけど、休みの日には双子の子供達も手伝ってくれるのさ。それはいいんだけどね、どっちもやんちゃでねえ。こないだなんか授業中にまでクラスの垣根……あぁあぁ実際は一続きのベランダさね、それを越えてまで兄妹喧嘩するもんだからもう参ったのさ。まったくお互い誰に似たんだか……おっと、これじゃあ愚痴を聞いて貰っているようなもんだね。やれやれ、年ってのは厄介さねえ」

「いや、もう長文はがっつり頂いたことがあるんで」


 あれって、文字数だけで原稿用紙四枚超だったよな……

 読書感想文の長さだった。


「そうかい? 最近の高校生は短気だって聞いたことがあったんだけど、えー、トウナくんは違う様さね」

「……いえ」


 気が長い人は突発的に人殺しはしないだろう。いくら朱夏を『守るため』とはいえ。

 僕が黙り込んだのを機と見たのか、轟さんは自分の話を進めた。


「ふうむ……さっきからのお二人さんの様子を見る限り、探し物という訳ではない様さね……じゃあどうしてここに来たのさ?」


今回は書くネタが……、うーん、そうですね……作者なりの考え事でも。


面倒ですが、(あいだ)との混同を避けるために(あわい)と書く時は全てルビを入れます。

困る例。

『その間』:前後の文脈にもよりますが、これだけでは『あいだ』と『あわい』の区別がつかない。


まあこれは作者の意地悪な不備を勝手にフォローしているだけなのですけど、たまに他の作者の作品を拝見させていただいている時に明らかな不便でしかない書き方があるんですよね。

(ここからはもっとつまらない話です)

例えばこの小説で使った漢字を使うと、『僕は吃驚した』とかが突然出てくるようなものです(まず書くことがない上に読み方が複数あったりするのが輪をかけて問題になったり)。まあ調べれば済む話なんですけど、さすがに日常で頻繁に仮名書きされているようなものを難しい漢字にしてほったらかしにするのはどうかなー、と。

ちなみに自分は『咄嗟』の読みが咄嗟に出てこないような阿呆で五月蝿い鬱陶しい木偶の坊です。

……これ以上はさすがにやめときます。ただ、それぐらいには真剣に書いている、ということでどうかご容赦を。


……すいません。最近、ストーリーが良さそうなものを見つけては読みづらくて途中で投げちゃったというのが多かったもので。プロならともかく、自分も含めて、アマはしょうがないですよね……

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