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「では早速ですが、お困りのことがあると伺っておりました。どのようなことにお困りでしょうか?」
ドーンさんの背格好と雰囲気に流されそうになったが、流石にもう勘弁してほしかった。
「あの、ドッキリとかならそろそろ止めてほしいんですけど」
この言葉にドーンさんの表情は困惑したようなものから申し訳なさそうなものへと変わっていった。
「申し訳ございません。どっきり、というのが何なのか私は存じ上げないのですが、貴方様をご不快にさせてしまいましたことをお詫びいたします」
そう言ってドーンは胸に手を当てて軽く頭を下げた。
この対応に今度は俺が困惑してしまって内心に気まずいものが広がった。さっきのドーンさんの表情や態度からは嘘を感じなかったし、その声には悲壮感のようなものすら感じたからだ。
「すみません、ちょっとカッとなってしまいました。あの、まず先に聞いておきたいことがあるんですけどいいですか?」
ドーンさんの返事を待ってから、俺は自身が感じていることを洗いざらい矢継ぎ早に捲し立てた。ドッキリとは何か、何故そうと疑ったか。そして、怪我や病気の覚えがないのに何故病院にいたのか。何故あっさりと装置を外されたのか。その上、何故突然みんなが自分の母国語を話し始めたのか。『アーク』って何なのか、等々。
「ミエニシ様、落ち着いてください。全てお答えしますので、とりあえず一度落ち着いていただけませんか?」
ドーンさんの対応で口を噤んだ俺は一気に捲し立てたことを謝った。
「いえいえ、お気になさらずに。まずはお互いに座りましょう」
ドーンさんが部屋の隅に立てかけられていた折り畳み式の椅子を展開し、二人分を向かい合わせる形で設置してくれたのでそこに腰かけた。
「では、順番にお答えします。まず、今の状況はミエニシ様の仰られたドッキリというものではございません。次に、貴方様は大変なお怪我をされてこの病院に緊急搬送されたのです。そして、一日半ほどで完治されたので医療器具のすべてが外されたのです。最後に、私共が貴方様の母国語を話しているのではなく、貴方様が私共の言語を話されているのです」
(………………何言ってんだこの人?)
どこから突っ込めばいいのか分からない。
とりあえず、ドッキリではないことと大変な怪我をして病院に緊急搬送されたことについてはまだいい。しかし、緊急搬送されるような大怪我がたったの一日半で跡形もなく治る訳ないし、そもそも日本語以外の言語が話せないのは自分自身が一番よく分かっている。そんなどこぞの小説みたいな話を信じろだなんてあまりにも馬鹿げている。
「あの、そんな話信じられないんですけど?」
「そう仰られましても事実なのです。今からその証拠をご覧に入れます。こちらをどうぞ。今から再生される映像は少々ショッキングな内容が含まれますがご容赦ください」
そう言ってドーンさんから差し出されたタブレット端末の画面を見つめると映像が再生された。そこに映っていたのは、手術中の医者のような服装をした人たちが四人がかりで何かを台座に乗せたところだった。
「うえっ、何ですかこれ……」
「ここから早送りにします」
ドーンさんは俺の呟きに答えることなく、端末を操作して再生されている映像を早送りにする。
すると、台座に乗せられていた崩れた肉塊のような物体が急速にもぞもぞと蠢き出した。かなりグロテスクな過程であり、何度も目を逸らしそうになったが何とか堪える。そうこうしている内に肉塊から太くて白い棒状のものが三本くらい生えるとそれが手足になり、千切れそうになっていた足が繋がり、骨・筋肉・皮膚・髪の毛などが湧き出すように修復され見る見るうちに人間の姿を取り戻していく。そして――――
「俺……?」
完全に元の姿を取り戻したそれは、間違いなく自分であった。
しばらくして見知った顔の三人が部屋に入るとすぐに出て行った。その後は身に覚えのある場面が映り、映像は終わった。
「…………これって合成とか、CGとかですよね?」
ドーンさんは首を横に振る。
「いや、でもこんなこと起こる訳ないじゃないですか。漫画じゃあるまいし。それに俺はあの日…………」
ふと、そこで思い至ってしまった。




