第八話 第三王子
「第三王子っ・・・!?」
道理で何処か見覚えがあるはずだ。双子の兄のカストル殿下に似ているのだから。
「・・・何か御用でしょうか?」
俺はそう首を傾げながら尋ねた。ポルックス殿下は「ふふふ」と小さく笑い声を漏らしながら手を振った。
「いやぁ、七歳で悪魔殺しを成し遂げた未来の英雄に興味があってね」
「そうですか・・・」
俺は曖昧な笑みを浮かべながらそう返した。
「僕は病弱でね。デビュタントの時も体調が悪くて出ていなかったんだよ」
「そうですか」
「だから噂の悪魔殺しの戦いを見れていなくてね、その未来の英雄さんって呼ばれる御令嬢に会いたかったんだ」
「そうですか・・・」
俺は頷きながらふと、ポルックス殿下の目を見た。彼の目に潜んでいる恐ろしい何かを・・・。
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俺はポルックス殿下の目の中に潜んでいた何かを感じ取ると、理由を付けてそこから離れた。そして今は一人で廊下を歩いていた。
「あの目の中にあったのは一体何だったんだ・・・?」
俺はふと足を止め、その疑問を呟いた。
あの目に潜むモノが今後、何かしらの波乱を巻き起こす。俺は何故かそんな予感がしていた。
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エリシアがオレの前から逃げた後、オレは廊下から移動して、人気の無い空き教室に居た。
「・・・やっぱり流石は英雄ってところか。オレに気付くなんてな」
オレはあの女の態度が途中で変わった事が分かった。そこであの女が、ガミジンを殺した女がオレがいる事に気付いた事に気付いた。
「まぁ、オレの正体までは気付いてないようだがな」
「クククッ」とオレは笑みをうっすらと顔に浮かべた。
「・・・しかし、この国の奴らは馬鹿ばかりだな。王族の中身が全く変わっているって言うのに」
オレはやれやれと首を振ると時計を見た。
「・・・そろそろ次の授業が近いな。そろそろ行くか」
オレはそう呟くと、アストリア王国第三王子としての猫を被った。
「しっかし、任務とは言え既に知っている事を習わなくちゃいけねぇのかなぁ・・・。まぁ、やるっきゃ無いか」
「はぁ・・・」とオレは溜息を吐くのだった。




