第二十話 冒険者登録
受付のお姉さんに渡された用紙とペンを受け取って、俺はサラサラサラ・・・っと、必要事項を記入した。因みに登録する名前はエリシアのみで、貴族位を表す『フォン』と家名の『アルゲート』は記入しなかった。
そして特技の欄には剣術と魔法、解体と当たり障りのないものを記入した。
「はい、これで良いと思います」
俺はそう言って記入した用紙を受付嬢に差し出すと、受付のお姉さんは用紙をしばし見て(途中で何故か目を見開いたが)「はい、これで良いですよ」と頷いた。
「では、少しお待ちください」
そう言って受付のお姉さんは用紙を持ったまま席を立って奥へと向かった。
そうして待っていると、酒場の方から誰かが近づいてくる気配を感じ取った。
そちらを向いてみると、顔を赤くした筋骨隆々なおっさんがいた。
「なぁ嬢ちゃん。冒険者になるなら冒険者の心得ってのを教えてやろうか?」
「心得・・・ですか?」
『ポーカーフェイス』のスキルの力を借りて顔が顰めっ面になるのを抑えて尋ね返すと、おっさんが俺の肩に手を置いて顔を近づけて来た。・・・って、酒くさっ!?
「おう、そうだよ。その代わり・・・夜は楽しませてくれよ」
そう言っておっさんが俺の臀部・・・お尻へと手を伸ばして来た。
嫌悪感の湧いた俺は・・・
「ガアッ!?」
おっさんを投げ飛ばしていた。
「・・・あ」
や、ヤベー!つい手が出ちまった!
恐る恐ると周囲を見ると、周囲の人達が信じられない様に驚愕を滲み出しながらこちらを凝視していた。
「・・・お、おい嬢ちゃん。今、一体何をしたんだ?」
「えーっと・・・勝手に躓いたのでは・・・」
「そんな訳無いだろう!?本当のことを言え!」
硬直が解けた冒険者の一人が聞いてきたので誤魔化そうとするが、やはり無理だった。
「あら?一体何があったの・・・?」
カードを持って戻ってきた受付のお姉さんは状況が分からなかったらしく首を傾げていた。
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「・・・それで、エリシアさんがラガートさんを投げ飛ばしたんですね?」
「あ、ああ。俺にはそう見えたぞ」
戻ってきた受付のお姉さん・・・ハーマインさんに先程話しかけてきた冒険者・・・ダストがさっき起こった事を説明した。
「・・・ラガートさんはまた問題を起こしたので降格処分ですね」
「まぁ、そうなるよな・・・流石に俺もそれが良いと思う。ラガートの奴は実力はあるのに、これまで何回も乱闘やら問題を起こしたし、流石にセクハラはなぁ・・・。嬢ちゃん、大丈夫だったか?」
「あ、はい。触られる前に投げましたので」
「そ、そうか・・・」
ダストが心配そうに聞いてきたので大丈夫だという事を伝えた。
・・・しかし酷い名前なのに良い奴だな、こいつ。
「それより、早くギルドカードを渡して欲しいのですが・・・」
「あ、そうでしたね。・・・はい、こちらがエリシアさんのギルドカードです」
俺の言葉を聞いたハーマインさんが俺に持っていたギルドカードを渡してくれた。
これで今日から俺も冒険者だ!
「えっと、ギルドカードの説明は要りますか?」
「あ、お願いします」
俺はそう言ってハーマインさんに頭を下げた。
因みに、俺が投げ飛ばしたおっさん・・・ラガートは気絶していた為医務室に運ばれました。




