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ピザを食べた後、三人でリビングに置かれていたテレビとゲームを繋げて遊んでいる。本当は旭日さんとラノベの話やら、ラノベを読もうって話になっていたけど、西宮がいる。西宮も楽しむにはラノベの話は出来ない。
ということで、ゲームでもするか、ということになり今に至る。今、遊んでいるのは世界的に有名なカーレースゲーム。キャラクターを操作しながらアイテムを取って出た種類によって順位が激しく入れ替わるのが醍醐味の大人気ゲームだ。俺も家で一人で遊ぶことがある。
「あー、お兄ちゃんがまた邪魔してきた」
「作戦と言ってもらおうか」
ソファで横に座る西宮が不満を漏らし、椅子に座る旭日さんが得意気に口にした。
「東野くん。その甲羅でお兄ちゃんをやっちゃって」
「任せろ」
「深夜くんっ!?」
「すみません。レースなので」
「ああああっ!」
一位を独走していた旭日さんが俺の使ったアイテムのせいで一気に順位を落とした。その隙に西宮が旭日さんを抜かしていく。西宮に続いて俺も旭日さんを追い抜こうとしたタイミングで旭日さんが横からぶつかって邪魔してきた。
「さっきの仕返し」
「くっ……大人げないですよ」
「ごめんね。レースだから」
俺が使うキャラと旭日さんが使うキャラががんがんぶつかりながら前に進んでいく。走りづらい。その隙に西宮がゴールした。一位だ。続いて俺か旭日さんのどっちかがゴールする。と思っていた瞬間、コンピューターで動くキャラが爆弾を投げ込んできた。
俺と旭日さんが使うキャラは爆弾に直撃。宙を舞う。落下しても数秒、混乱で走り出すことが出来ない。その間にコンピューターのキャラに次々抜かされていった。
結局、俺と旭日さんは下位でゴール。旭日さんにはコンマの差で負けた。
楽しい。昔もこうやって遊んでたけど、最近は一人かオンライン通信で顔の見えない相手と遊ぶだけだったから、こうして相手の顔を見ながらワイワイして遊ぶのがスゲー楽しい。
「もう一回。もう一回やりましょう。次は勝つ!」
「東野くんが燃えてる」
「望むところ。時間はまだまだあるし、何回でもやろう」
三人で交互に勝ったり負けたりを繰り返しながらレースを進める。次に走るコースは急カーブが多いコースだ。家で遊ぶ時はカーブを曲がり切れず、コースからよく落ちている。正直言って、苦手なコースだ。
「このコース難しくないですか?」
「分かる。めっちゃ難しいよね。ボク、いっつも落ちちゃうんだ」
「俺も。西宮もそうだったんだな」
「まだまだ学生の諸君には俺のドライビングテクを見せてあげよう」
「お兄ちゃんも学生でしょ。あ、先に謝っとかなきゃ。ごめんね、東野くん」
「え、俺は何を謝られたの?」
西宮が俺に不安を与えた直後、レースが始まる。西宮の謝罪に気を取られて俺は出遅れた。アイテムも使いながら順位を追い抜いていく。苦手だからといって、最初から勝負を諦めたりはしない。ゲームは誰でも勝てるように設定されている娯楽なんだ。それに、何が起こるか分からないんだし。
「え?」
西宮が俺の肩に頭を乗せてきた。その後すぐにもたれてくるように体を寄せてきて、体重を預けにきている。と思えば、すぐに離れた。そして、またこっちに来ては同じことをする。近付いては離れ、離れては近付く。何度も同じことをする西宮に俺はすっかり指を動かせなくなり一気に最下位に。
「ごめんね。ボク、昔から急カーブを曲がる時は体も一緒に傾いちゃうんだ」
「日向の昔からの癖だよな」
「ああ、そうなんだ。なるほどなるほど。熱中してたらそういう時もあるよなうん分かった」
昔、友達だった中にも二人くらい同じことをしていたのを思い出す。さっきから俺にぶつかってきてたのはこのコースの急カーブを上手に曲がり切ろうとしているかららしい。理解した。とはいえさあ、最初からそう教えてくれないと何が起こったのか分かんないじゃん? 謝るだけじゃなくてさあ!
そんな叫びを飲み込んで気にしないようにゲームに集中……なんて、なかなか出来るもんじゃない。西宮本人がぶつかってくる度、びくっとなる。ぜんぜん真っ直ぐコースを走れない。
「あー落ちたっ!」
せめて、俺をドキドキさせている責任として西宮にはゲームを頑張ってもらいたいのに西宮がコースから落下した。何のために体ごと傾けてるんだ。
結局、このコースは旭日さんの運転さばきが上手で旭日さんの勝ちとなった。
「ん〜悔しいっ! このコースでもう一回!」
「……え!」
「え、嫌だった?」
「嫌じゃないけど……他のコースは?」
「他のコースでもいいけど、ボクにとって今日はチャンスなんだよね。いつもお兄ちゃんに負けてるけど、今日は東野くんがいる。協力したら勝てると思うんだ」
「俺は二対一でも構わないよ〜学生諸君が手を組んだところで……ねえ」
「うわ……舐めてきてる」
「ね。腹立つでしょ。だから、一緒にギャフンと言わせたいの」
「そういうことなら」
西宮がぶつかってくるからってなんだ。ゲームに集中してるだけだし、いちいち気にする必要なんてない。それよりも、憎たらしい旭日さんに西宮と一緒に一矢報いたい。
気合いを入れてレースに挑んだところで俺の心臓が急に鋼になったりするはずがなく。協力している西宮の力になりたいってのにぜんぜん役に立てないでいる。
だって、西宮がずっと近いんだもん。さっきまでは人一人分は間隔を空けてソファに座ってたのにいつの間にか真横にまで近付いてきてて。おまけに、体の傾けを少しでも減らそうとしているのかほとんど俺に体を預けるようにもたれてきてて……もう、心臓がバックバク。
男友達同士なら肩を組んだりこの距離でゲームで盛り上がるってこともあるのかもしれない。でも、西宮は女の子だ。友達とはいえ、性別は別。友達の距離感じゃない。
横目で西宮を盗み見る。西宮はテレビに集中していて俺との接触を気にしてる素振りがない。西宮は平気でも、俺は平気じゃないんだ。友達なのに緊張するんだよ。
「あー、また負けた。次こそ勝つよ!」
「次も負けねえよ〜」
燃える西宮と旭日さん。一人だけ同じ熱になれない俺は西宮のことをつくづく女の子として見てるんだなと改めて思わされた。




