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薬剤師の試験 後編

 筆記試験合格者が集まられている。


 ここは昨日まで筆記試験が行われていた教会だ。合格者にクジを引いてもらい前半と後半に分かれて試験が行われる。

 今日はシャーリーn他にローレンスとカルロが応援に来ていた。薬室長から試験の説明がされている。さすがに、筆記試験を通っただけある。みんな真剣に試験内容を聞いていた。


 先日、薬草園に入って来ていた二人もいたが、二人とも一瞬、シャーリーを見ただけでその後は薬室長の説明を真剣に聞いていた。


「ここから何人が脱落するかな」


 カルロが小声で言う。


「グラベル様がやろうとしていることを考えると半分くらいは残ってもらわないと困りますね」


 シャーリーは一人ひとりの顔を見る。


「それだと、僕たち五人ほど受け持つことになるけど?」


 カルロは思い出したくないことを言う。


「そうでした。五人は辛いです。私は人に教えることはまだ経験がないので」


 シャーリーは不安を口にする


「ホルック領の薬草園では上手く説明出来ているけど不安なの?」


 カルロは何を言っているのかという顔で見てくる。もしかして、それを見越してグラベルと薬室長はホルック領の薬草園をシャーリーn担当にしたのか?

 上手くのせられている気がしないわけでもないが、どうあっても自分の部下とも言うべき人たちがこの中にいると思うとシャーリーの目は必然的に真剣になってくる。


 前半の試験は明日から始まる。薬室のメンバーはこの後、薬室に戻って明日の準備をすることになっている。

 漸く解散となって、ローレンスとカルロt共に明日から受験者たちが生活する場所を確認して回った。

 教会の奥にある屋敷に宿泊してもらい、それぞれ試験に必要な場所と道具渡される。

 受験者同士の会話は一切禁止。騎士団から派遣された騎士たちがその見張りをしてくれることになっている。


「そういえば、私の時はこの試験の後に薬作りまでしましたが、今回の試験ではどうなんですか?」


 丁度、そばにいたローレンスに聞いてみた。


「えっ? ああ、薬作りはない。今回受かった者たちは暫く薬室での作業を覚えてもらってから薬作りをすることになる」


 やはり、シャーリーは特別だったのだと実感する。以前カルロから聞いた薬室の薬は皇族も使うものだからしっかりとした技術がないとダメだと。実際、陛下の薬はグラベルか薬室長が作っている。シャーリーも作ってはいるが、立会人が必要だ。それだけしっかりと管理されているのだ。下手な薬を出すわけにはいかない。


 シャーリーは父から逃れるためと、薬があれば助かる命があると言う理由で薬剤師を目指したが、今では薬草を育てることも薬を作ることも楽しくてそれが当たり前のようになっている。

 ここにいる人たちがしっかりとした知識を持って、この国の人たちを助けられるようになってくれるといいとシャーリーは願った。


 薬室に戻るとグラベル講師による臨時薬剤師教室が開かれていた。


「この薬草とこちらの薬草の違いは分かりますか?」

「葉かしら?」


 年配の女性が言う。


「花が少し違うように思います」


 若い女性も答えている。


 グラベルが女性に囲まれている。

 カルロが可笑しそうにイザベラに声をかけた。


「イザベラ様、何をしているのですか」


 振り返る女性たちを見てシャーリーは驚く。


「グラベルが一人で試験の準備をしていると王妃に聞いて手伝いに来たのよ」


 皇太后が楽しそうに答える。皇太后がそんなに気安く薬室に来ていていいのかと疑問に思うが側にいる侍女や護衛たちは特に疑問を呈していないようだ。


「明日の準備をしていたらお二人が来られて、手伝ってくださいました」


 グラベルが指す方に明日使う薬草が準備されていた。皇太后たちに明日の試験の話をしていたら、どう違うのかと聞かれ余った薬草で説明していたのだという。


「皇太后様、王妃様出来ましたら、薬剤師の試験に受かった者たちに労いの言葉を書けていただけないでしょうか」


 薬室長がせっかくだからと願い出る。


「それはいいわね」


 皇太后が乗り気で返事をする。その後を続いて、イザベラも同意してくれた。


「どんな人が合格するのかしら、楽しみね。シャーリーみたいな子が来てくれるといいのだけど」


 皇太后はシャーリーを見て微笑んだ。


「皇太后様、シャーリーは特別です」


 イザベラが皇太后に意見する。二人の関係はうまくいっているようだ。だが、特別とはなんだろう。


「そうね、いないわよね。もっとも、シャーリーが何人もいたらグラベルが可哀想ね」


 皇太后は頬に手をあてて残念そうに言う。

 可哀想とはどう言うこと?


 ん?


 シャーリーは皇太后、イザベラの順に見るが、みんな笑っているだけで何も言ってくれない、グラベルを見ると何故か苦笑いをされた。


 んん?


 もっとわからない。私は何かしただろうか。私に似た人がいたらどうしてグラベルが可哀想なのか。

 後ろでクスクスと笑い声が聞こえて振り返るとカルロが笑っている。その隣でローレンスが笑いを堪えて肩を震わせていた。

 何かを察したのか皇太后がイザベラに声をかけていた。


「邪魔をしたら悪いから、そろそろ帰りましょうか」

「はい、皇太后様」


 イザベラは返事をして皇太后と一緒に薬室を出ていく。

 薬室を出るとき、イザベラがカルロに小さく手を振るのが見えた。


なに?


 カルロを見るとカルロもまたイザベラに手を振っていた。

 シャーリーはキョロキョロと周囲を見るが誰一人としてシャーリーの疑問に答えてくれなかった。


 翌日、薬草を教会に届けて試験が始まると、監視は騎士たちにお願いしているのでシャーリーたちは薬室に戻った。


 午後から、イザベラがやって来てローレンスとカルロに今回の試験のことを聞いていた。

 理由は薬室長が提案した労いのことだが、こうたいごうにどんな試験をするのか詳しく聞いて欲しいと頼まれたと言っていた。その皇太后は来客があるためくることができなかった。


「薬草は十種類用意します。その中に毒草が二種類、薬草とよく似た毒草を用意しています。昨日、グラベルと話していた内容とよく似ています。見分ける特徴を知らなければ出来ません。毒草を選んだ時点で不合格です。薬草を選んでも処理を間違えていたらそれも不合格です」


 カルロが薬草を見せて丁寧に説明している。

 実際、今日毒草を選んだ者は六人いた。この時点で今日試験を受けている者は十人になった。この中から最後まで残るのは何人になるのだろうか。


 カルロの説明を真剣に聞いているイザベラを見ながら陛下も使う薬を知識のない者は出せない。そう考えるとこの試験で合格した者でなければ安心できないだろう。それにグラベルが推し進めている許可制なら、街で薬剤師を名乗ることになっても王宮と同等の知識を持っていて欲しいと考えるのが妥当だ。一人前の薬剤師になるとはそう言うことだとシャーリーはグッと手を握りしめた。

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