騎士団
グラベルは王宮内にある執務室で地図を見ている。
「報告の内容はこれで間違いないか?」
ヨハンに聞く。
「はい。確認のため人を送りましたが、やはり間違いないと」
アーリシュが日程表をグラベルに渡す。
グラベルはその日程を確認する。
「日程はこれでいい。途中、騎士団によっていくので連絡をしておいてほしい」
「騎士団ですか?」
アーリシュとヨハンはどうして騎士団なのかと不思議そうにグラベルを見る。
「シャーリーに護衛をつけようと思う」
アーリシュとヨハンはグラベルが言いたいことを理解した。
「候補者を出すように団長に伝えておきます」
アーリシュが日程表を持って部屋を出ていく。
「診療所はどんな様子だ?」
「今、兵士たちを見張りに立たせています」
ヨハンの言葉を聞いてグラベルは一先ず安心する。
グラベルの元に資材を投じて設置した診療所が襲撃に遭ったと数日前に連絡が入った。
ここは民のための診療所では薬は薬室から支給している。国の管理下にあるため診療料金は無料。それが、近隣で治療所を営む者には都合が悪かった。
以前からこの診療所で処方された薬で病気が悪化したと難癖をつけていた。だが、今回は診療所を襲撃してきたのだ。
グラベルはその治療所の経営者を調べていくと、その者は流行り病が起きた後に治療所を始めていた。そして医学の知識も薬の知識もないことが分かった。
サイモン医師に聞くと、以前から噂はあったと言っていた。
医師と薬屋を許可制にするのならこの手の者たちの取締りもしなければいけない。
グラベルは薬室に戻った。
ローレンスがシャーリーと一緒に薬を作っていた。
「グラベル、どうだった?」
「やはり、知識のない者だった」
「最近、そんな噂をよく聞くよね。その為にグラベルが診療所を作ったのに」
ローレンスは不愉快だと言わんばかりに文句を口にする。
「明日、行ってこようと思う」
「こっちは大丈夫だから」
ローレンスはシャーリーも行っておいでと言っている。シャーリーは行ってもいいのかとグラベルに聞いてきた。
「診療所の様子を見ておいたほうがいいと思う。診療所で使う薬もここで作っているから」
「ここで?」
「騎士団からの依頼の中に診療所の薬も含まれている」
「それではホルック領の薬草もその診療所で使われるのですね」
ホルック領の薬草管理はシャーリーに任せようとローレンスが言っていた。それなら一度見ておいたほうがいい。そう考えての事だった。
「診療所のことも知っておいてほしい」
グラベルは明日、向かうと伝えた。
翌日、グラベルとシャーリーは騎士団へ向かっていた。
「どうして騎士団なのですか?」
シャーリーは診療所へ行くと思っていたが、その前に騎士団へ行くと聞いて不思議がった。
「シャーリーはこの先、ホルック領へ出向くことが増える。その時の護衛をつけようと思う」
護衛なんてとシャーリーは遠慮したが、グラベルが付き添えない時もあるからと言うと納得してくれた。
「騎士団の中にも診療所があるのですね」
騎士団について馬車から降りたときに、簡易で作られた診療所を見てシャーリーが聞いてきた。
「病が流行ると時や、冬風邪の時だけ診療所を設けている」
見てくるか?と聞くとシャーリーは喜んで診療所へ行く。グラベルはその間に、護衛候補に会うことにした。
「ケリーとハンスです」
騎士団の団長から二人の騎士を紹介された。
二人とも長身でケリーは細身の金髪、ハンスは骨太の体格で黒髪。二人とも二十歳だと言った。体力はありそうだ。
予め候補の人物像の書類を見えいたので、最終確認だけだ。
「カーネル伯爵令嬢の護衛を頼みたいがいいだろうか?」
騎士団に入ったということは本人たちには目標があるだろう。
伯爵令嬢の護衛となるとそこから外れることになるかもしれない。そこをしっかり確認しておきたかった。
「シャーリー殿が今度、新たに作られる薬草園の担当になるとお聞きしました。私たちも協力出来ればと志願しました」
二人は薬室に薬を取りに来る者たちで、シャーリーやローレンスたちとも顔見知りだ。
グラベルも二人の人柄はよく知っていた。だからこそ適任だと思っていた。
「では、来週からお願いできますか?」
グラベルは本人と団長に確認した。
アーリシュにこの後の手続き等を任せて、シャーリーのところへ行く。
「あちらの建物は?」
シャーリーは診療所にいた治療師に質問をしていた。
「あちらは以前、薬剤師がいた場所です。今は薬の保管庫として使用しています」
その後もシャーリーは幾つか質問していた。
その様子をグラベルは見ていた。
ローレンスが先日言っていた。シャーリーは例の本を全て読み終わったと、後は実際に経験するだけだと。
その為に必要なことだと考えて診療所へ連れていく。そのついでに寄った騎士団でシャーリーの成長を垣間見てグラベルは安心した。
この先、グラベルがシャーリーの側を離れる時が来てもシャーリーは大丈夫だと思った。
「グラベル様」
アーリシュと共にやって来たのは先程のケリーとハンス。
丁度、話終わったシャーリーもやって来た。
「この二人が今後、シャーリーの護衛をしてくれる」
グラベルがシャーリーに紹介する。
「ケリーさま、ハンス様」
「この先、シャーリー殿が行きたいところは私たちがお供します」
シャーリーは自分の身知っているものが護衛をすると聞いて安心したようだ。




