表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

第1話 異世界バニー騎士姫がやってきた(12)

 夜。

 一日が終わろうとしていた。

 入浴後のフィリアは、俺が貸したTシャツ姿のままベッドへ腰掛けている。

 銀髪は少し湿っていて、石鹸みたいな甘い香りがふわりと漂っていた。

 正直、目に毒だった。

「……では」

 俺はドアの前で振り返る。

「おやすみ」

 フィリアがきょとんとした顔をする。

「……終わりか?」

「え?」

「そ、その……」

 フィリアは視線を泳がせる。

「何もしないのか……?」

 一瞬、心臓が止まりかけた。

 だが俺は、なんとか平静を装う。

「今日は疲れただろ」

「……」

「ゆっくり休んで」

 フィリアは目を丸くしていた。

 まるで予想外の返答だったみたいに。

「で、でも私は……」

「じゃ、おやすみ」

 俺はあえてその先を聞かず、軽く手を振る。

 そして別室へ移動した。

 パタン、とドアが閉まる。

「…………」

 数秒後。

 俺はその場にしゃがみ込んだ。

「危なっっっっ……」

 心臓がうるさい。

 いや無理だろ。

 あんな反応されたら普通に勘違いする。

 フィリアは、たぶん。

 もし俺が望めば、拒絶しなかった。

 世界を救うため。

 そんな理由で、自分を差し出そうとしていた。

 しかも。あの不思議な力。

 命令すれば、彼女を無理やり従わせることだってできるのかもしれない。

「……でも」

 俺は天井を見上げる。

「そんなの、絶対違う」

 フィリアは人形じゃない。

 世界を救うための道具でもない。

 ちゃんと笑って。

 怒って。

 恥ずかしがって。

 クレープ食って喜んでた。

 だから。

 大切にしたいと思った。

 少なくとも、自分の欲望だけで傷つけたくはなかった。

「……はぁ」

 深く息を吐く。

 だが。

 問題はそこじゃない。

「むしろ欲望高まってる気がするんだけど」

 今日一日。

 かわいい姿を見せられ続けた。

 デートして。

 笑い合って。

 満員電車で密着して。

 名前呼ばれて。

 おやすみまで言われた。

 無理だろ。

 男として。

 むしろ悪化してる。

 俺は布団へ倒れ込む。

 顔を覆った。

「……異世界の皆さん」

 誰に向けてかも分からず呟く。

「ごめんなさい」

 たぶん。

 あなたたちの世界。

 まだしばらく平和になりません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ