勝ったのは?
「ふざけるな……!」
アルベールが叫ぶ。
体勢を崩しながらも、無理やり魔力を引き上げる。
「こんな……こんな連携で……!」
足元の魔法陣が、さっきよりも強く光る。
空気が震えた。
――本気だ。
「来る!」
俺は叫ぶ。
「ノリト、防御! リディア、無理しなくていい!」
「了解」
ノリトが短く答える。
リディアは一瞬だけ迷って――
それでも、前を向いた。
「……大丈夫」
小さな声。
その瞬間。
アルベールの魔法が放たれた。
眩い光。
轟音。
――直撃すれば終わり。
「……ッ!」
ノリトが前に出る。
「――転」
力を“流す”。
だが――
「……重い」
完全には逸らしきれない。
「リディア!」
呼ぶ。
彼女の目が、こちらを見る。
その中に――迷いはなかった。
ぽとり。
涙が落ちる。
今度は、迷いのない涙だった。
ダイヤが、瞬時に展開する。
防ぐだけじゃない。
鋭く、研ぎ澄まされた結晶が――
一直線に伸びる。
「――ッ!?」
アルベールの魔法を、貫いた。
静寂。
煙が晴れる。
そこに立っていたのは――
俺たちだった。
アルベールは、膝をついている。
「……ばかな」
かすれた声。
教官が一歩前に出た。
「そこまで」
静かに、でもはっきりと告げる。
「勝者――」
一瞬の間。
「……カナタチーム」
ざわっ、と観客が揺れる。
「マジかよ……」
「ゼロが……?」
俺は、立ってるだけだ。
何もしてない。
でも――
「……勝った、のか?」
ぽつりと呟く。
「うん。勝ったね」
ノリトがあっさり言う。
「いやいやいや!」
思わずツッコんだ。
「俺、何もしてないんだけど!?」
「してたよ」
「え?」
「全部、繋いでた」
さらっと言われる。
「いや意味わかんないんだけど」
「そのうち分かるよ」
適当すぎる。
そのとき。
「……ありがとう」
小さな声。
振り向くと、リディアがいた。
さっきより、少しだけ表情が柔らかい。
「助けてくれて」
「……いや、俺は――」
何も言えなくなる。
「それでも」
リディアは、少しだけ目を逸らしながら言った。
「……悪くなかった」
それだけ。
でも――
なんか、すごく嬉しかった。
「おーいカナタ!」
後ろから声。
さっきの学園の男(先生っぽいやつ)が、こっちに歩いてくる。
「随分派手にやったな」
「……すみません?」
とりあえず謝る。
「謝る必要はない」
男は、くすっと笑った。
「むしろ歓迎する」
「ただし」
一瞬で、空気が変わる。
「調子に乗るな。君はまだ“落第候補”だ」
「……はい」
即答。
「あと」
男は、周囲を見渡してから――
「訓練場、半分壊れてるんだが?」
「……え?」
俺たち、同時に固まる。
「修理費、どうするつもりだ?」
「いやいやいや無理無理無理!!」
「私知らない」
「因果的には半分くらい君かな」
「なんでだよ!?」
――こうして俺の学園生活は
初日から借金スタートになりそうだった。




