魔力ゼロと宣告された日
⸻
その日、俺は“才能がない”と証明された。
「……魔力値、ほぼゼロ」
ざわり、と周囲がざわつく。
巨大な門の前。石造りの広場には、各国から集まった受験者たちが並んでいた。豪奢なローブ、煌びやかな装飾、いかにも“選ばれた者”って感じの連中ばかりだ。
その中で俺だけが、場違いみたいに立ち尽くしている。
「記録係、聞き間違いじゃないか?」
「いえ、測定器に異常はありません」
淡々としたやり取りが、余計に現実味を帯びる。
目の前の水晶球は、まるで壊れているみたいに、かすかな光しか放っていなかった。
「君、名前は?」
試験官が俺を見る。冷たい目だ。
「カナタです」
答えながら、拳を握る。
「カナタ。残念だが――君に入学資格はない」
あっさりと言い切られた。
「……っ、でも!」
思わず一歩踏み出す。
「まだ試験、何もやってないじゃないですか! 戦闘でも、筆記でも、なんでもいいから――」
「必要ない」
言葉を遮られる。
「魔力はすべての基礎だ。それが無い者を通すわけにはいかない」
ぐうの音も出ない正論だった。
だけど、それで引き下がれるほど簡単じゃない。
「俺は……どうしても、この学園に入りたいんです」
声が震える。でも、止めなかった。
試験官は一瞬だけ眉をひそめ、それからため息をついた。
「理由はどうあれ、規則は規則だ。帰りなさい」
――終わった。
その一言で、全部。
周囲から小さな笑いが漏れる。
「ゼロだってよ」「田舎から来たんじゃない?」なんて声が、耳に刺さる。
俺は唇を噛みながら、門から離れた。
……くそ。
拳を握りしめても、何も変わらない。
分かってる。分かってるけど、それでも――。
「面白いね、君」
不意に、声がかかった。
振り向くと、そこには一人の少年が立っていた。
薄い僧衣のような服に、首から数珠を下げている。年は同じくらいに見えるのに、妙に落ち着いた雰囲気だった。
「……何が?」
少しだけ棘のある言い方になった。
「普通は諦めるところで、まだ諦めていない顔をしている」
にこりともせず、淡々と言う。
「褒めてるのか、それ」
「さあ。少なくとも、嫌いじゃない」
変なやつだ。
「俺はノリト。旅の途中でここに寄っただけだけど……君は?」
「カナタ」
短く名乗る。
「そう。カナタ」
レンは「落第寸前の少年は、宝石の涙と出会う」
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その日、俺は“才能がない”と証明された。
「……魔力値、ほぼゼロ」
ざわり、と周囲がざわつく。
巨大な門の前。石造りの広場には、各国から集まった受験者たちが並んでいた。豪奢なローブ、煌びやかな装飾、いかにも“選ばれた者”って感じの連中ばかりだ。
その中で俺だけが、場違いみたいに立ち尽くしている。
「記録係、聞き間違いじゃないか?」
「いえ、測定器に異常はありません」
淡々としたやり取りが、余計に現実味を帯びる。
目の前の水晶球は、まるで壊れているみたいに、かすかな光しか放っていなかった。
「君、名前は?」
試験官が俺を見る。冷たい目だ。
「カナタです」
答えながら、拳を握る。
「カナタ。残念だが――君に入学資格はない」
あっさりと言い切られた。
「……っ、でも!」
思わず一歩踏み出す。
「まだ試験、何もやってないじゃないですか! 戦闘でも、筆記でも、なんでもいいから――」
「必要ない」
言葉を遮られる。
「魔力はすべての基礎だ。それが無い者を通すわけにはいかない」
ぐうの音も出ない正論だった。
だけど、それで引き下がれるほど簡単じゃない。
「俺は……どうしても、この学園に入りたいんです」
声が震える。でも、止めなかった。
試験官は一瞬だけ眉をひそめ、それからため息をついた。
「理由はどうあれ、規則は規則だ。帰りなさい」
――終わった。
その一言で、全部。
周囲から小さな笑いが漏れる。
「ゼロだってよ」「田舎から来たんじゃない?」なんて声が、耳に刺さる。
俺は唇を噛みながら、門から離れた。
……くそ。
拳を握りしめても、何も変わらない。
分かってる。分かってるけど、それでも――。
「面白いね、君」
不意に、声がかかった。
振り向くと、そこには一人の少年が立っていた。
薄い僧衣のような服に、首から数珠を下げている。年は同じくらいに見えるのに、妙に落ち着いた雰囲気だった。
「……何が?」
少しだけ棘のある言い方になった。
「普通は諦めるところで、まだ諦めていない顔をしている」
にこりともせず、淡々と言う。
「褒めてるのか、それ」
「さあ。少なくとも、嫌いじゃない」
変なやつだ。
「俺はノリト。旅の途中でここに寄っただけだけど……君は?」
「カナタ」
短く名乗る。
「そう。カナタ」
ノリトは一度うなずくと、門の方をちらりと見た。
「入れなかったみたいだね」
「……見てたなら分かるだろ」
「うん。だから聞いた」
本当に変なやつだ。
そのときだった。
――ガシャンッ!
何かが壊れる音が、路地の奥から響いた。
「……?」
思わずそっちを見る。
人通りの少ない裏路地。さっきまで静かだったはずなのに、妙な気配が漂っていた。
「行く?」
ノリトが言う。
「……当たり前だろ」
考えるより先に、足が動いていた。
――その先で、俺は“彼女”と出会うことになる。
それが、全部の始まりだった。一度うなずくと、門の方をちらりと見た。
「入れなかったみたいだね」
「……見てたなら分かるだろ」
「うん。だから聞いた」
本当に変なやつだ。
そのときだった。
――ガシャンッ!
何かが壊れる音が、路地の奥から響いた。
「……?」
思わずそっちを見る。
人通りの少ない裏路地。さっきまで静かだったはずなのに、妙な気配が漂っていた。
「行く?」
ノリトが言う。
「……当たり前だろ」
考えるより先に、足が動いていた。
――その先で、俺は“彼女”と出会うことになる。
それが、全部の始まりだった。




