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11話 ラヴィアンレーヴは血に染まる

 闇夜に乗じて奇襲をする事にしたヘリオトロープ軍は首都を囲む黒い森を進軍している。  

 軍団は4方角から別々に奇襲をする。

 狙いは混乱状態になっている首都ラヴィアンローズ。既にその首都は内戦の様相を呈する。

 しかし領主やその他の富裕層は、安心安全な部屋から指差組と軍隊の血まみれの殺戮に愉快そうに高みの見物を決め込む。奴らが死のうが自分達には関係ない事。指差組など最初から家畜同然の畜生の集まりだと処断しているのだ。 

 そこにいつの間にか、ヘリオトロープの超小型の発信機が取り付けてある事も知らずに。

 超小型の発信機が取り付けられたのはヘリオトロープに移民を考えている富裕層の一人で、小さい規模ながらマフィアとして活動する。彼の口利きで三日三晩、逃げる事ができて無罪放免になる輩が実に多い。

 自身はそんな輩に呆れつつも大金を貰っているので、一応の筋は通す。しかし心の中では唾棄している。

 なので工作員の一人がヘリオトロープの移民を条件に超小型の発信機を取り付ける事を許可を貰った。スーツの襟の裏に隠れる程の小型の発信機からは常に位置の情報が出されている。ヘリオトロープの技術陣が作り出した端末にそのデータが送られているのだ。

 端末と発信機の電源はこの【ハーデスの庭】に流れる魔力によって作られている。微弱な魔力でも発信機や端末の電源として優秀なので、それで動いている理屈だ。

 

 周囲を包囲しつつあるヘリオトロープ軍。

 北方面は女性騎士のジョアンが率いる。

 南方面は短剣使いのタリアが率いて、西方面はダークエルフの弓使いシャルルが、南方面からジャンヌの本隊が首都を包囲する。

 最後の端末にて発信されている富裕層の始末にはレムリアが向かった。  

 そのレムリアはスカーフェイスと連絡を取りながら時がくるのをひたすら待つ。  

 彼が今回の要であった。富裕層と領主をここで捕らえて金の在り処を吐かせる。金の在り処を突き止めたら混沌の盗掘団に解錠を依頼する、それで彼の仕事は一応の一段落がつく。

 彼の部隊には少数の特殊部隊がカモフラージュの為の車両に乗って武装の確認をしたり、周囲の警戒をする。

 レムリアの端末装置からスカーフェイスの報告がきた。


「ジャンヌ達が首都に攻め込んだ。ほぼ同時攻撃で作戦開始だ。首都は混乱の真っ只中だ」

「来たな。そろそろこちらも攻め込む用意をする」

「合図と共に中へ潜入を頼む」


 突然の来襲に首都ラヴィアンローズは更に混乱を極める。

 今度はヘリオトロープ軍が騎馬隊やら歩兵やら弓兵を連れて派手に襲撃してきた。そんな話は聞いていないぞ! そんな声を無視をしてタリアとシャルルは高笑いしながら眼の前の人間達を殺戮し始める。

 短剣使いのタリアは両方の手にナイフを握り、舞い踊るように人間達を肉の塊にする、弓使いシャルルは宵闇に輝く銀髪をなびかせながら脳天に矢を的確に射る。

 ジョアンも右手に握る長剣で、血が飛び散る戦場を薔薇のように華麗に引き裂いていく。ジャンヌも長剣で無情に敵を引き裂き殺していく──。 

 モニターで観戦していた領主と富裕層が騒ぎ始める。誰だ──あの見慣れない軍隊は──!?

 その瞬間だ。

 

「この部屋は包囲している。逃げようとする者は銃殺する! 全員、そのまま、動くな!」


 渋めの張りのある男の声がモニター室に聞こえた。入口を見ると、灰銀色の髪の毛の男が漆黒のコートに漆黒のスーツを纏い圧を持って彼らに接した。

 彼らの周囲には特殊部隊の隊員が自動小銃の構えて包囲する。

 富裕層の男や女はこんな状況でも金の力で切り抜けようとレムリアを金で買収しようと声を掛けてきた。


「相談しようじゃないか……? 1億出すから私を──」

「おい、撃ち殺せ」

「ハッ」


 自動小銃が発砲されて、瞬く間に血まみれにされる。


「貴様らに選択権などない。歯向かう者はこうなる。少しは己の置かれた状況がわかったか?」


 レムリアの瞳に殺気の欠片が放たれた。

 冷徹な瞳に彼らは恐怖しか覚えない──。

 

「な、何故、この場所が判った!?」

「それに答える義務はない。義理もない。減らず口を叩くと撃ち殺すぞ」

「この中にこの名前の者はいるか? フォックスグローブというが」

「──私だ」

「……確認を取らせて頂く。花言葉は?」

「……【不誠実】」

「……貴様はこちらに来い」

「貴様っ! 我々を売ったのか!」

「裏切り者め!」


 フォックスグローブとはいわゆるコードネームである。この黒髪の壮年の男性の本当の名前はジキタリス。毒草として知られる植物の名前だ。ジキタリスは振り向く事もせずにあっさりとヘリオトロープ側についた。

 灰色の整ったスーツの男性は、特殊部隊の下へ歩み寄ると黙って事を見守る。


「残りの者は……領主、貴様は残して、皆殺しにしろ」

「ハッ!」


 特殊部隊の隊員の自動小銃のけたたましい音が炸裂する中で静かな場所へジキタリスを保護して歩くレムリアは、端末装置でスカーフェイスに報告を入れる。


「フォックスグローブを確保した」

「そいつは後でジャンヌが話したいと言ってるから逃がすなよ」

「了解」


 隊員がレムリアに駆け寄ると敬礼をしながら報告をした。


「対象以外の人間を全て射殺しました」


 ラヴィアンレーヴの領主はいつまでもこびり付くような恐怖を刷り込まれ、腰をぬかして、他の富裕層の血にまみれている。

 そこに追い討ちをするようにレムリアが周囲に転がる死体にも目も向けず、厳しい顔で腕を組み問いただした。


「貴様には聞きたい事が沢山あるのでね……覚悟して貰おう」

「何を聞くつもりだ……ヒッ……ヒッ……」

「質問したこと全てだよ」


 そうして一連の作戦は一応の完了となり、ジャンヌの詰問が待ち受けているのであった──。

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