12話 汚い金持ち共
レムリアからの報告がスカーフェイスの端末装置に届く頃、ラヴィアンレーヴの首都はヘリオトロープ軍の軍勢に殺され、血まみれになり放置されている。
彼女らは一切の情けをかけず、無慈悲に殺戮する残忍な乙女達だ。そして後は指揮官クラスを仕留める所まで追い詰めた。
指揮官は顔面を真っ青にして眼の前から近寄る死神の乙女を前に、とうとう降伏を宣言する。
「……降伏する。だからこれ以上の蹂躙は止めて貰えるか?」
「降伏ね……」
「ジャンヌ。スカーフェイスから連絡が来たわ。対象の捕縛に成功した、と」
「時間稼ぎはしなくてもいいのね」
「わかったわ、降伏を認めます。すぐに武装解除してください」
しかし、一方的に嬲られた兵士達の憤りは収まらない。あんなに酷く痛めつけられて降伏するなんて、ふざけるな!
若い兵士の一人が扱いきれない自動小銃の照準をリーダーの青い服に鎧姿の金髪の女性に向けて発砲をしようとした刹那……。
「おチビちゃん、何をしようとしているのかな?」
鋭敏な感覚を持つシャルルの冷酷な瞳が煌めいて、ナイフを兵士の首に当てた。
「お前ら……なんかみんな死ねばいいんだ」
「それだけかい? 言いたいのは? 今の内に吐いておきたい事はないのかい?」
「うっ……そ、それは……」
「イキっただけかい? 呆れたねえ、さっさと死ね」
ナイフはその若い兵士の首を飛ばして、またも首都に血の花が咲いた。
周囲の生き残りの兵士達は、一言も文句を言う気合もなくなる。
何を言っても殺されるだけ……金髪の指揮官の周囲を囲う者達は、即座に俺達を血祭りに上げる事を愉しんでいる……。
ジャンヌは先程起きた、殺戮を指揮官に問うた。
「一体、何の真似かしら? 降伏を認めたのに、殺る気のある兵士を忍ばせて殺るつもりだったのかしら?」
「違う! 今のは勝手に逸った若い兵士がいただけで、我々には戦意などない」
「その話……信じて良いのかしら?」
まるで刃のような問いかけに傍らにいた短剣使いのタリアが指揮官の首に刃を当てた。
「な、何を……」
「裏切るとどうなるか、教えてあげる」
「じわじわとこれで嬲り殺すのよ……あなたを……さあ、どうしましょう?」
「私達はこのまま殲滅作戦にしてもよろしくってよ。その方が綺麗さっぱりして簡単でいいわ」
「……貴様ら……!」
周囲の兵士達はもはや狂乱寸前だった。誰かが弱音を吐く。
「もうおしまいだ……! 終わりが来たんだ! 嫌だ! 俺は嫌だ……殺されるのは嫌だ──!」
「やめろ! 自動小銃を暴発させるな!」
「武装解除は無理なようね、放って置きましょう」
「レムリアが捕縛した奴から処理を始めるわよ」
狂乱した兵士達は仲間同士の同士討ちを始めて、ヘリオトロープ軍は呆れてその場から去った。
彼女らはそのまま、レムリアから発信される信号の場所まで脚を向ける。
首都の地下室に続いていた。そこからは血の匂いが充満している。こちらもほぼ惨劇が起きたのは間違いない。
入り口付近にはヘリオトロープ軍の特殊部隊の隊員が見張りをしている。
ジャンヌ等を目にすると敬礼をして、毅然とした態度で報告する。
「お疲れ様です。レムリア様はこちらの部屋で待機しております!」
「レムリアに会いたいの。取り次いでくれない?」
「はっ!」
兵士が一度、部屋に入るとレムリアとジキタリス、そして領主の三人が待機していた。捕縛された領主とジキタリスからは血の気が失せて、恐怖に身を震わせている。
兵士はレムリアに報告する。
「レムリア様! ジャンヌ様と師団長殿が来ました!」
「来たね。中へお通ししろ」
「はっ!」
そうして部屋の中へ入るジャンヌはレムリアに確認を取りつつ、この領主に詰問も始める事にした。
「御苦労様、エリオット」
「こちらの方がフォックスグローブこと、ジキタリス殿。向こうの椅子に括り付けているのが領主だ」
「ジキタリス殿の処遇はヘリオトロープへの移民受け入れで良いのだな?」
「ええ。ここからは領主への詰問よ。エリオットは移民の手続きをお願いしていいかしら?」
「わかった。早めに終わらせてこちらにくるよ。そのメンツだと殺しかねないしね」
「どういう意味? レムリア?」
「シャルル、タリア。君達だと勢い余って殺しかねないしね」
「否定はしないわよ」
「では、ジキタリス殿」
「……行こう」
ジキタリスが部屋から出る時に領主はふと毒を吐いた。
「フン……移民を補償されてるとはいいご身分な事だ」
「……貴様らは指差組で甘い汁を吸いまくるダニだからな」
「貴様もそのダニのお陰で散々、金を儲けたのだろう? クソが」
「……フン」
ジキタリスは敢えて否定もせずにレムリアに連れられて部屋から去った。
ここからジャンヌによる詰問が地獄の始まりである事も知らない。彼ら二人共に……。




