出会い
満月は綺麗な初夏の夜だった。
「君、立てるかい?」
腰を抜かした俺に手を差し伸べるのはこの世のものとは思えぬ程に美しい女性だった。しかし、今の俺はものすごい恐怖を感じている。
「はッ、はッ、はッ、」
呼吸が一向に落ち着かない。当たり前だ。突如として地面を突き破ってきたワームのような化け物に襲われたのだから。
「酷い怪我だ。手当てを急いだほうがいいね」
視線は前に縫い付けられたままだ。地に伏す化け物の死骸と、返り血だらけのその人を前に意識を他にやる余地はなかった。
「私の家まで一度連れて行くか。このまま放置も都合が悪い。少し我慢しなさい」
女性が俺の肩を担いだ。香ってくるのは女性の甘い匂いと気持ち悪くなる血の匂い。脇に当たる胸を意識してしまうのは死に際だからかな?
「跳ぶよ。覚悟は出来たかい?」
へ?俺を抱えて?
「うん。もちろん。安心しなさい、落としはしないよ」
―――ドカッ
感じたのは強い力。風がまるで固体のように感じられた。
「どうだい?気持ちいいだろ?」
下を見る。先程まで立っていた地面とはどうやらかなり離れてしまったようだ。
「あぁあああぁあ!!こあいぃいいい!!!」
「口を閉じなさい。舌を噛むよ」
「はひっ!!!」
風が弱まり、速度が落ちた。落下が始まる。
「ぎゃあああぁぁあっ!!!!」
俺は浮遊感への恐怖にたえることができず意識を手放してしまった。




