34話
『時祭り』から3週間が経った。
ある日の休日。
エリッシュも家でのんびりくつろいでいる。
久しぶりにゆっくり出来る日なので、飼いネコのシエルと沢山遊んでやる。
30分も遊び相手をしてやると、飽きたのか疲れたのか?定位置のクッションに戻って寝転がってしまった。
あれは人をダメにするクッションだからなぁ・・
猫にも効くとは流石だな。
よしっと、猫トイレの掃除と餌と水も新しくして横におやつのナッツと果物を入れたものも置いておく。
久しぶりに紅茶を淹れて飲んだ。
この香りは優しいな・・ドライフルーツをつまみながら紅茶を片手に新聞を読む。
一通り終えたら、普段着に着替えてソファで本を読むことにした。
ん~この時間も忘れていたなぁ・・
うん、悪くない。
などと、一人時間を満喫していると。
リンリーン
と呼び鈴が鳴った。
すぐさま対応のため玄関扉を開ける。
「はい?」
「あ、エリッシュ・リドールさんのお宅で間違いないですか?お届け物です~」
見れば届ける便の制服を着た男性だった。
「あぁ、僕がエリッシュ・リドール本人だ。」
「良かった、こちらに印をお願いします~・・はい、よろしいです。では、お荷物こちらになります。失礼しました~」
と、慌ただしく去っていった。
きっと荷物が多いのだろう。
休日まで・・ありがたいことだが、休日くらいは休んで欲しいものだ。
ほかの日できっちり休んでくれてるといいが・・
それにしても俺に荷物なんてほとんど送られてくることは無いんだけどな~とソファに移動しながら差出人を確認すると・・・
箱を落としそうになった・・
「リリからだっ!!」
なんで・・・
と思ったが、そういえば住所教えたな・・と。
ソファに座ってゆっくりと開封していく。
ふわん~と良い香りがする。
包みを開けていくと・・綺麗に焼けたアップルパイ1ホール と 手紙。
「え・・すっごい美味しそうなんだけど!!!! とりあえず手紙から読もうかな」
・・・・
・・・
手紙には、無事に領地へ到着したこと、
帰りの馬車ではずっとエリのことを引きずってしまってみんなに心配されたこと、
久しぶりの家でのんびりしつつ、エリと会える日を待つということ・・
領地の果樹園でりんごの収穫があったのでアップルパイを作って送ったこと、
もっと色んなものを作ってあげたいと思ったこと・・
どの言葉も、全部エリッシュへの想いが込められていた。
考えないようにしていたのに、泣きそうになり顔がクシャっとなる。
「俺も・・いつも君を想うよ・・リリ」
いつだって会いたくて、会いたくて・・
リリと出会えて世界が色づいて見えるようになった。
まるでステンドグラスのように。
婚約の約束の話を家族に伝えたら、とても喜んでくれて・・母上なんて泣いてたな・・心配、かけてたんだろうな。
と、悪いことをしてたと反省した。
父上はとても優しい顔で笑って、「よかったな・・幸せになれ」と言ってくれた。
兄上は・・顔がくしゃってなりながら「エリッシュ・・ほんとに・・ほんとによがっだぁぁあ」って柄にも泣く号泣してた(苦笑)
いつも俺のこと見守ってくれてたんだな・・兄上。「ありがとう」って一言伝えて、みんなで抱き合ったっけ(笑)
暑苦しい・・・けど、大好きな俺の家族だ。
リリも気に入ってくれるといいな♪
そういえば!!と思い出した・・寂しすぎて開封出来なかったリリからの贈り物・・・
部屋から取ってきて、ソファで開封した。
中には・・
更に箱と手紙があった。
まずは手紙から目を通した。
離れていても一緒だと、
いつもエリを想っているという証を詰め込んだこと、
婚約が2か月半先だから、婚約印の代わりの意味もこめて、
いつも想ってる、大好きだと。
さっき泣いたばかりなのに、また涙が頬を伝う。
同封の箱を開けてみると、
リリが得意な刺繍をしたハンカチ2枚
リリお手製の日持ちのするクッキー数種類を特殊な保存箱に1か月分
リリの愛用しているリネン用サシェ10個ほど
お揃いの枕カバー
お揃いの香油
お揃いのキャンドルホルダー
剣の鞘に付ける鞘飾り・・
これでもかと詰め込んで、
それから・・お揃いのブレスレット。
銀色の細身のチェーンの一か所に、丸いタグが付いてる。
片面は ”éternelement” の文字の下に”E&L”
もう片面には リリの瞳色、リーフグリーンの宝石が一粒マーガレットの花の彫刻の中核に埋まっている。
リリのほうのブレスレットは、俺の瞳色か髪色だろう・・嬉しすぎる。
éternelement・・永遠に
俺、ずっと泣いてるなぁ・・
さっそくブレスレットを右手に着ける・・婚約印の代わりだからな。
返事の手紙と何かお礼に送りたいな・・今度母上か義姉に買い物付き合ってもらうかな。
レターセットも新しいの買って・・
花屋も行こう・・
寂しいだけじゃない、離れていても気持ちはいつも同じだ。
リリへの贈り物を考える楽しみだってある。
愚痴を聞いてくれる仲間もいる。
大丈夫、会えるまで頑張らないと。
とりあえず今日は、久しぶりにトロワの魔法店に行ってこようかな。
部屋着だったことを思い出して、紅茶や皿の片付けをしてから出かける支度をした。
シエルはまだクッションでゴロゴロしている・・
あと1時間もしたらお昼だし、そろそろ起きて今度は庭の畑で野菜引っこ抜いたりするんだろうな(苦笑)
彼のルーティンなのだ。
「シエル~俺はちょっと出かけてくるからね~夕方には帰るよ、行ってきます」
家に鍵をかけて、しっかり戸締りの確認をする。
歩き出して・・そうだ一旦実家へ顔を出そう。
母上と義姉も居れば、今度買い物に付き合ってもらう約束を取り付けたらいいな♪
楽しくなってきた心に安堵しながら、ヒヤシンス色の空を見上げた。
エリッシュの心情が・・私も泣きそうです(なんで)
次回前半はエリッシュの買い物と実家での様子から始まりますよ。
では、また。




