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22話

無事に夜会も終わり、集まった人々も王宮を去った頃、応接室には陛下・宰相・プリム子爵・エリッシュ の4人が集まっていた。


夜会中に起きた件のことについて、報告と今後の沙汰を話し合うためだ。


「ふむ・・まさかこのようなことが起きるとはな、いくら祭り最終日とはいえ浮かれすぎだな・・まったく」


陛下も馬鹿馬鹿しいオリバーの言い分や、態度に頭にきているようだ。


隣の宰相も呆れた顔をしている。


「報告についてはわかった、して・・沙汰はどのようにするか?決まっておるのか?」


「陛下、そのことについては私のほうからお話してもよろしいでしょうか?」


「あぁ、かまわんよ。話してくれ。」



ーーー


「なるほど、いいんではないか?まぁ、先にも言っていたが各国侯爵以上には公にするがな。」


「そうですね。一見大事ではありませんが、やはりこういうことは誰に手を出したのかをしっかり理解すべきですし、何よりこういう奴は放っておくと図に乗ってまたやりますな・・」


「そうだろうな、沙汰はそれでいいだろう。私のほうからジオラント家へ通達しておこう。よいかな?」


ずっと黙っていた子爵は頷く。


「私は先ほど、家族とも話し合い、沙汰の件も了承を得ておりますゆえ、異論はありません」


「そうだったか。行動が早くて助かるな」


「いえ、今回はこのようなことで陛下のお時間をいただき、誠に感謝申し上げます。」


「なに、常日頃からの子爵家ひいてはプリム領の貢献に比べたら何でもないよ」


「ありがたきお言葉です、これからも精進して参ります。陛下への忠誠を。」


「ははは、貴殿の忠誠心は知っておるよ。いつも感謝している。これからも頼りにしているぞ」


変わらぬ臣下の忠誠心に嬉しくなったのか、だいぶご機嫌な陛下。


ミューテンの王は歴代、賢王が多い。

賢王が賢い次代の王を生み出す・・素晴らしい国だ。


臣下にもしっかり向き合って下さる。だからついていこうと思える。


有難いことだ・・



「陛下、そろそろ執務に戻りませんと、今日中に終わりませんよ・・」


チラリと懐中時計を見た宰相が告げる。


「おっと、それは困る。さすがに今日はゆっくり寝たいからな・・日付が変わる前には終わらせるぞ」


まだ仕事があるのか・・陛下はいつもお忙しいな。

お体が心配になるほどに。


今度また栄養補給の出来る薬草ドリンクを差し入れるとするか・・最近は味も改良されて飲みやすくなった。

むしろ美味しいと言われるくらいに改善した。



「陛下・・ありがとうござまいした」


「リドールの息子よ、畏まらんでもよい。そなたにもいつも尽力してもらっている。また近いうちにな」


「はっ・・いつでもお呼び下さい」


ポン とエリッシュの肩を優しくたたくと陛下は宰相と共に部屋を出ていった。


応接室には子爵とエリッシュだけが取り残された・・


「子爵・・あの、少しお時間よろしいでしょうか?」


「ん?あぁ、では一旦庭園にでも行こうか」


「わかりました、行きましょう」


人の居なくなった王宮の廊下を二人で移動する。


コツンコツンと靴音だけが響いている。


庭園に着き、適当なベンチを選び座る。


「ふぅ・・それにしても、疲れたな・・君もお疲れ様(苦笑)」


エリッシュのほうを向き、微笑んだ。


「いえ、私の場合は仕事のうちでもありますが・・いえリリベル嬢が無事で何よりです」


「ほっほっ、娘を助けてくれて本当にありがとう。感謝しかないよ。」


「当然のことでもありますが、何より私が我慢なりませんでした。本当に・・」


少し俯き加減のエリッシュはまだ早いと思いながらも、想いを混ぜて伝えた。


そんなエリッシュの様子に子爵は微笑みながら、確信めいたものが見たかった。


突っ込んでみてもいいかもしれないな・・


「おほん・・リドール子息、いやエリッシュくんと呼んでも?」


「もちろん構いません」


「先ほど話は後日にと言ったが、このように場が持てたからね、せっかくなので少し聞きたいことがあってね」


「はい、私で答えられることであれば何でもおっしゃって下さい」


「単刀直入に聞こう・・我が娘のことどう思っているだろうか? リリベルのことだ。」


子爵の問いに、ドキリとなる。


もし伝えたら牽制されるだろうか?わからない・・好印象を抱かれてるはずだが・・


一か八か、ここは本音を伝えて成功なら心強い味方となってくれるはず・・だよな。



「子爵・・不愉快にさせてしまったら申し訳ありません。 


私、エリッシュ・リドールは リリベル・プリム嬢のことをお慕いしております。


お気づきとは思いますが・・いまはまだ、


女装して友人としての立場でしか接しておらず、リリベル嬢には男であることを打ち明けておりません。


ですが・・まぎれもなく私は彼女のことを・・・


どうかこの先、彼女への想いを伝える権利を下さいませんか?」



エリッシュの申し出を聞いた子爵は・・内心ニンマリ。


爵位も家柄も家族関係や女性関係、彼の人柄などはケイにより調べがついている。


さすがリドール家・・子ども達も素晴らしい人材・・こちらが願い出たいくらいだ。


年齢こそ6歳差だが、それくらい大した問題ではない。


ベルのことを社交界に隠していたものだから釣り書が来なくて、

いまになって焦っている私達にしたらこんな優良物件など渡りに船だ。


ただ、どうやって婚約までこぎつけようかと悩んではいた。


彼が相手であるなら、うちの家族も首を縦に振るだろう。


ふむ・・ぜひともベルを落としてもらいたい。


「エリッシュくん、 いや、話してくれてよかった。実はそのことで伝えておきたいことがあってな・・少々言いにくいのだが」


「え? ・・はい、なんでしょう?」


「そのだな・・実は、ベルのことなんだが、いままで婚約者というか釣り書もきたことがないのだ。」


「え・・それはさすがに嘘では???あんな素敵なご令嬢なら引く手数多ですよね?」


「それが本当なのだよ。それは私達家族のせいなんだ・・私達がベルを可愛がるあまり、存在を隠していたせいでね。」


「なるほど、でもそのお気持ちはお察しします。あれだけ愛らしいと心配ですよね・・色々と。」


「っ!!!!! そうなんだっ、わかってくれるかね!?」


「もちろんです! しかし、そこまでご家族皆様がご自分を責めることはないのでは? 


何しろ、隠していたおかげで私は彼女とのチャンスに恵まれました。私にとっては感謝しかありません。  


違いますか?」


微笑むエリッシュが救世主に見える・・


それくらい、子爵は娘に悪いことをしたと罪悪感に苛まれていたのだから。


「ふふ・・エリッシュ・・君という人に出会えたベルは幸運だ。心からそう思うよ。


どうか・・ベルを幸せにしてもらえないか?他の誰でもない君に頼みたい」


「是非っ、そのお役目お任せ下さい。リリベル嬢のことを絶対に幸せにいたします。」


「では、まずは実は男性だということをカミングアウトするところから始めないといけないな? 


私達家族、ひいては屋敷の使用人も含めて二人の進展を願って助力を惜しまないことを約束しよう。


全使用人にも伝えておくから、いつでも我が家へきてくれ。」



「お心遣い、誠にありがとうございます。 

あの、早速なのですが3日後にタウンハウスへお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「ふむ、明日ではなく?なぜ3日後なんだい?良ければ理由を知りたい。」


「それは・・まず、1日は家族にもこのことを伝え、正式な婚約申し込みをしたいと思っております。


ですので父上と母上にも納得していただかなくてはなりません。まぁ、大丈夫だとは思うのですが。


そのための時間を取らせていただきたいのです。


残りの2日ですが、リリベル嬢と手紙のやり取りをします。


今日のことがありましたので、外出はしたくないはずですから、お見舞い品と花を贈らせて下さい。


手紙のほうで、実は男性なこと、なぜ女装していたのかなど説明して、3日後に直接お会いしたいと思います。」


エリッシュの計画は完璧だと思った。


パニックになっていたとしても、3日もあれば落ち着くだろう。


根回しもするとのことだ。


では、こちらもそれ相応のことをしてやらねば・・


「そうか、ではその計画を経て、婚約者に収まるまでこちらでも準備するよ。


まずは3日後、こちらで此度のお礼のお茶会と称して、君を招待させてくれ。


それまでにこちらも、家族と使用人に根回ししておく。


絶対に・・娘を諦めないで欲しい。君を逃したらあの子はどこかの後妻か国外に・・


好いた相手が出来ればいいが・・あの子はこういうことに鈍感でな。心配なんだ・・」


「そんなことにはなりませんよ。私のお嫁さんにと決まっていますから(ニコリ)」


そうやって自信満々に伝えるエリッシュの顔を見て、子爵は安堵したと同時に感謝した。


こんな好青年、本当に有難い。



そうやって話し合いをして、ではまた・・と別れた。


それぞれ、かの計画を成功させるために意欲を燃やしながら・・


王宮はいつもの夜が訪れ、サフランイエローの優し気な明かりが灯り静寂を照らしていた。


エリッシュやっと・・漕ぎつけました。


ベルパパんの感動している姿が目に浮かびます。


次回はリドール家での家族談話からの~・・



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