最終話 君と生涯を……。
「ずいぶんと、能力圧があがってるな……」
秀吉が、睨み付けていってくる。
おそらく、今までにないほどの、戦闘になるだろうな。
「思えば、俺とお前は違う道を歩んでいるのだな」
「どうゆうことだ?」
「俺は、仲間などいない。そんな物など、足枷になるからな」
「何いってやがる。政宗や、ダーバン女がいるだろ?」
俺がそう言うと、苦笑いした秀吉がーー。
「仲間などではない。駒だ」
「駒?」
「使えなくなれば、捨てるまでのこと。それが、頭を使うということだ」
自分のこめかみを、人差し指で、突っついて言う秀吉。
ようするに、捨て駒と同じくらいの価値しかないとゆうことか。
「クズだな。血が繋がってるとは思いたくもねー」
「フッ……、そうだろうな。だがな、俺にも目的とゆう物もあるんだ」
「どうせ、世界征服だろ?」
「違うな……。世界崩壊だ」
スケールがでかすぎる。
崩壊かよ……。
「なんで、そんなことをしたいんだよ?」
「決まっているだろ。俺らのような奴らが、二度と産まれないためだ」
俺が不思議そうな顔をしていると、空を見上げながら、秀吉が語り始めた。
「俺も、お前と同じように上で育ったが、お前と違う所があった。それは、産まれた時から覚醒していたことだ」
産まれた時から、覚醒していた?
そんなこと、ヤバイだろ。
だって、普通の人間とは違うんだから……。
「俺は、頑張って生きようとした。しかし、世間がそれを許さないのだ!だから、俺は世界を崩壊させる!!」
秀吉の声と同時に、地震がおきた。
この世界を揺らすほどの、でかい地震。
「なんだ!?」
「上を見てみろ。あれが、世界の崩壊だ」
空から、水が溢れでてきた。
とてつもない量だ。
「まさか!海水か!?」
「そのとうりだ!これで、世界は崩壊する!!」
まずい!
あの量じゃ、俺でも止められねー。
「させません!!」
その時、俺と秀吉の頭上に、火の玉が現れた。
二十歳くらいの女性が、炎を拡大させていく。
炎は、海水と接触すると同時に、蒸発させていく。
「帝!アマテラスか!!」
「私の使命は、世界を守ることです!」
「理事長!?」
まじかよ。
理事長って、あんなにすげーの?
空が、炎1色に染まっていく。
「フッ。いくらアマテラスといえども、限界があるはずだ」
「武尊さん。秀吉を倒せば、この海水も止まるはずです!倒してください!!」
理事長からのお願いかーー。
「お前を倒すぜ……。秀吉」
「産まれた時から、お前とはこうなると思っていたぞ」
秀吉が、刀を召喚した。
真っ黒で、いびつな刃。
秀吉の心のようだ。
「秀吉ー!!」
「武尊ー!!」
聖なる炎を帯びた剣と、全てを飲み込もうとする、暗黒の刀が、ぶつかり、火花が散る。
「天地破滅!」
秀吉が、左手で俺の腹に技を放つ。
「かっ!?」
肺から空気が押し出されて、後方に吹っ飛ばされる。
このままでは、ビルに突っ込んでしまうだろう。
なので、地面を蹴りつけて、上空にどぶ。
「無駄だ武尊!俺の技は、衝撃波。どこでも届く!!」
秀吉は、右手から衝撃波を繰り出してきた。
だが、俺はその技の弱点を知ってるぜ!
「そこだ!」
上空から、秀吉にむかって落下していく。
狙いは、衝撃波の中心ーー。
「鳳凰聖炎!」
目の前につき出した草薙剣から、炎が放射され、俺の体を包み込む。
すると、俺の姿が鳳凰にかわる。
衝撃波を簡単に貫くと、秀吉にそのまま突っ込む。
「バカな!」
そのまま、秀吉に鳳凰の形の炎をぶつけて、後方に吹っ飛ばす。
「甘いわ!」
秀吉の大声が、響く。
すると、俺の炎が消えてしまった。
正確にいえば、暗黒の龍に飲み込まれたのだ。
「なんだ?その技わ!」
『技ではない。俺の、本体だ』
秀吉の声ではなかった。
まるで、違う人物の声。
『大和武尊とはな。俺的には、スサノオを殺したかったんだがな』
「誰だお前は!秀吉じゃないな!?」
『俺の名は、ヤマタノオロチだ』
ヤマタノオロチ!?
こいつも、神かよ……。
「秀吉から出ていけ。まだ、決着がついてないんでな」
『残念だが、それはできない。秀吉は、私の転生した姿だからな』
「何!?」
『天下を取ったときは、充実していたものだ。女を、たくさん食らうことができた』
「くそ外道が!」
『案ずるな。楽に、死なせてやる』
片手を前にだすオロチ。
瞬間、奴の手から黒い龍が現れた。
「ヤタノカガ」
『よせ武尊!それを、吸い込んではいけない!』
大和が、俺の体を真横に動かす。
てか、強制的に動かされた。
「おい!なんのつもりだこの野郎!!」
『あれは、莫大な負のオーラだ。あんなのを、一時的にでも吸収すれば、武尊の身体は、悪に染まるぞ!』
まじかよ。
じゃ、どうすればーー。
『避けるのが上手いじゃないか。だが、これは避けられないぞ?』
その言葉と同時に、オロチの足元から、8つの暗黒龍が、現れる。
「冗談だろ!?」
『かつて、スサノオはこれを避けきったあげく、全て切り落とされたものだ……。さて、大和武尊よ。お前は、どう対処する?』
「俺は、木下武尊だ!!」
そう叫びながら、暗黒の龍を避ける。
ビルの後ろに隠れたが、どうやら、風化能力があるらしく、紙のように貫いてきた。
「うお!?」
上空に逃げようとすると、上からも同時にきている。
退路は、後ろしかない。
思いっきり空気を踏み、後方に飛び退く。
至近距離で見ると、ものすごく気分が悪くなる。
これが、負のオーラか……。
『やれやれ。そんな避けかたでは、無駄な体力を使うだけだぞ?』
その言葉と同時に、斜め後ろから、暗黒の龍が現れる。
どうやら、地面から現れたらしい。
「やばっ……」
絶望的な状況になってしまった……。
上下左右前後を、暗黒の龍に囲まれてしまった。
覚悟を決めて、強く目をつぶる。
もしかしたら、負のオーラに飲み込まれても、生きていられるかもしれないとゆう、わずかな期待を込めてーー。
すると、聞き慣れた声が聞こえた。
「六天結晶!」
その言葉と同時に、俺は、真っ黒な炎で作られたクリスタルの中に、閉じ込められた。
あれ?死ぬのこれ?
しかし、熱さは感じない。
むしろ、クリスタルに触れた暗黒の龍が、燃えて消えていく。
「どうなってんだ?」
「無事ですか?武尊君」
クリスタルの中に、いつの間にか信長ちゃんがいた。
「信長ちゃんーー。だよね?」
俺がそう確認しないとわからないほど、変わっていた。
左目が、青く光っており、制服の上には、不思議なマントをしている。
しかし、顔は信長ちゃんだ。
なので、信長ちゃんなのだろう。
「クスッ。おかしなことを言いますね。私ですよ、武尊君」
「雰囲気も、変わってない?」
「いろいろありましたから。ですけど、もう大丈夫です」
クリスタルが消える。
オロチも、信長ちゃんに気づいたようだ。
『バカな。私の8つオロチを、消すなど……』
「負のオーラは、私にはききません」
堂々と、宣言する信長ちゃん。
その宣言をきいたオロチが、暗黒の龍を繰り出してくる。
しかし、信長ちゃんがマントを盾にすると、龍は壁にぶつかったトマトのように、消し飛んでしまう。
『まさかとは思っていたが……。そのマント、地獄の糸でできているな?』
「そうだったら、なんですか?」
『どこで手に入れた?一度地獄に落ちなければ、手に入れられないはずだ』
「落ちましたよ。私ではないですけど」
『フッ。なるほど、過去の織田信長か』
なんか、おいてかれてる。
てか、話についていけねー。
「武尊君。お願いがあります」
「うん?なんだい」
「言いにくいんですが……」
「俺にできることなら、するさ。さぁ、いってごらん!」
「それでは……」
赤面した信長ちゃんは、咳払いするとーー。
「わ、私に口づけしてくれませんか?」
「…………」
思考が、5秒ほど止まった。
く、口づけ!?
それはつまりーー。
「き、キスしてください!!」
「りりり、理由をきいてもいいかい?」
「そそそ、それは、ですね!その、私の力と武尊君の力が、交わるというか、そのーー」
「よ、よくわからないけど。とりあえず、強くなるんだね?」
「はい……」
顔が熱い!!
や、やるしかないのか。
てか、さんざんしてるのに、何を今さら恥ずかしがってんだよ俺!
あれ?
よくよく考えたら、意識してやんの初めてか?
信玄の時は、あいつが死にそうだったしーー。
「もう!武尊君!!」
「っ!?」
信長ちゃんに、キスされた……。
結局、女の子に奪われんのかよ。
男として、どうなのやら。
そんなことを考えていたら、信長ちゃんの唇が離れてく。
それと同時に、力が溢れてくる。
信長ちゃんの両目が、青色と赤色になっているので、俺もそうなっているんだろう。
「信長ちゃんーー」
「行きましょう、武尊君ーー」
頷きあい、オロチを見る。
あいつを倒せば、全てが終わる。
『人間の分際で、神に逆らうなど。愚かだな』
「愚かなのは、あなたの方です」
「人間様をなめんなよ」
俺と信長ちゃん、そしてオロチの能力圧があがる。
世界が、微振動するほどにーー。
『ヤマタノオロチ!!』
オロチから、8つの龍と、8つの尻尾が現れる。
「信長ちゃん!これを!!」
俺は、懐に持っていた刀を信長ちゃんに渡す。
その刀は、畳み刀。
市くんの思いが入っている、最強の刀だ。
「市……。私と共に行きましょう!!」
左右に別れて、攻撃を避ける。
「うおおおおお!」
「はあああああ!」
聖なる炎をまとう草薙剣と、地獄の業火をまとう畳み刀が、ワルツする。
少しずつ、少しずつ、オロチに近づいていく。
『暗黒、オロチ!!』
オロチの両手から、ばかでかい暗黒の龍が現れる。
「六天獄炎波!」
「天上一掃!」
俺と信長ちゃんの技が、オロチの技を弾き飛ばす。
『なめるな!!』
オロチの右手が、暗黒の渦になる。
まるで、ブラックホールのようだ。
「そこだ!」
「やぁ!」
俺らの刃の先端が、ブラックホールとぶつかる。
『死ねーー!』
「この世界は、私達の世界です!」
「壊させるもんかー!」
スパークが、ほとばしり、オロチの立っていた地面が、放射状にひび割れる。
そして、俺らは光に包まれた。
「…………」
視界が開けると、真っ白な空間に立っていた。
草薙剣はなく、戦国学園の制服姿だ。
死んだのか?
まさか、俺は死んだのか?
「武尊君!?」
「信長ちゃん!」
背中から声をかけられたので、振り返ると、信長ちゃんがいた。
信長ちゃんも刀を持ってなく、制服姿だ。
「どこかわかりますか?」
「いや、わからない。死んだのかな?」
『心配ないよ。僕らは死んでいない』
その言葉と同時に、目の前にあいつが現れた。
大和武尊。
「なら、ここはどこだよ?」
『天界との狭間かな?』
「て、天界ですか?」
『そうだよ。下界と繋ぐ、柱のようなところだね』
「意味わかんねー。さっきまで、戦ってたろ?」
『そうだね。君達のおかげで、奴の力が弱まった……。だから、天界から干渉ができたんだ』
あれ?
なんだ、あの黒い犬。
『オロチだよ』
「えぇ!?」
「ちっさ!子犬じゃんか!!」
『さっきも言ったけど、君達のおかげで、オロチの力が弱まったんだよ』
「あれ?てことは、秀吉わ!?」
苦笑いした大和武尊は、俺の後ろに視線をおくる。
振り返ると、目を見開いて唖然としている秀吉がいた。
「秀吉!」
「ど、どうなってんだ。オロチわーー」
『オロチは、僕が天界に連れていく。元々、こいつは天界から逃げ出したアホだからね~』
オロチを抱き上げると、俺を見つめる大和武尊。
『君は……。僕が転生した中でも、素晴らしい人物だった。礼を言わせておくれ、ありがとう』
頭を下げて、そういってきた。
急になんだよ……。まるで、二度と会えないような台詞を言いやがって。
『そして、織田信長……。転生しても、君の燃える炎は変わらなかったね。僕を、頼んだよ』
「え~と、わかりました?」
信長ちゃんも、今の台詞に違和感があるようだ。
最後に、大和武尊は、秀吉を見つめる。
俺らにくれた、優しい視線ではなく、少しきつめの視線だ。
『豊臣秀吉……。君のしでかした事は、許されることじゃない。だから、反省するんだね』
「…………」
うつむいて、反応しないが、反省してる顔をしている秀吉。
そうか。
秀吉は、愛とか友情が欲しかったのか……。
あいつが、産まれたときから、一度も味わったことのない感情ーー。
『さて、そろそろ終わりにしようか。僕は、こいつをイザナギと、イザナミに会わせないといけないからね』
「どこかに、行くのか?」
『そんな、寂しそうな顔をしないでくれよ。僕の仕事は、これで終わったんだから』
何だかんだ言っても、こいつとは、長い付き合いだった……。
初めて会った時は、くそ気に入らなかったけど、俺をいろいろ助けてくれたし、そのお陰で、大切な人を死なせずにすんだ。
『そうだ。いい忘れるところだった』
思い出したように、大和武尊が、手を叩いた。
すると、俺の足元だけに魔方陣のようなものが、現れる。
『僕の仕事は、転生したヤマタノオロチを捕まえることだったんだよ。だから、僕とアマテラスは、この世界を作り上げた……』
「はぁ!?今、爆弾発言したろ!?」
『だから、もう一度世界を作り直す。そうすると、君達の記憶はなくなる。でも、それじゃ君が可哀想だからね。君の記憶だけは、消さないでおくよ……罪滅ぼしとして』
「待て!なんで、俺だけーー」
光が、だんだん強くなってきて、声が出なくなる。
『これで、本当のお別れだよ僕。君と過ごした時間は、なかなか面白かった……』
足元から光の粒子になっていき、今は首から上しかない。
聞き取れなかったが、口の動きで分かった。
『さようなら。そして、ありがとう……』
ばか野郎ーー。
それは、俺の台詞だろが……。
あれから、五年後ーー。
気がついたら、俺はベッドの上にいた。
勾玉も、草薙剣もなく、ただの高校生として。
そして、どうやら一月寝ていたらしい。
世界が変わったせいだろう。
驚いたことに、姉が、普通の姉に戻っていた。
優しかったあの時の姉の姿には、ギクシャクしたものだが、時間が解決してくれたな。
ばあちゃんは、すでに他界していた。
その辺を親にきくと、寿命だったそうだ。
百歳まで生きたのだから、充分だろうと、親は言っていた。
そういえば、幼馴染みがいるらしく、隣の家に会いに行ってみたら、幸村ちゃんに似た人だったのには、驚きだった。
まぁ、身長が小さいねと言ったら、蹴り殺されたけどね。
そうそう、親戚として、秀吉が来たときはびっくりしたぜ。
どうやら、あいつも親の愛を貰い、友達もできたそうだ。
今では、バイクでいろいろ田舎で遊んでいるらしい。
よかったなと、俺が言ったらーー。
「お前のお陰だ。ありがとう、武尊……」
泣きながら、そう言ってきた。
まさか、記憶があるのかと思って、きいてみたが、自然と口にから出たようだ。
少し、ガッカリしたけど、身体は覚えてるのかもしれないな。
後輩として、俺の家に遊びにきたのは、竹中さん。
言わずとも、あの人に似ていた。
学校は、俺が思ってた以上に難しく、この人に1年の問題から教えてもらった。
なんか、変な感じがしたがーー。
学校の先生は、光秀ちゃんに似ていた。
がちで似ていたので、親しみやすい。
これは、大和武尊の仕業なのだろうか?
でも、あの人とは、今だに会えていない。
「木下!そろそろ行くぞ!」
「うす!」
突然先輩から呼ばれたので、俺はコーヒーの缶をゴミ箱に捨てて、目的の家の前につく。
「頑張れよ木下。俺らの仕事は、ここから始まる!」
「うす!」
「行ってこい!」
豪華な門を開けて、庭に入る。
俺の職業は、秘書だ。
政治家にはなれないけど、誰かの手助けをして、この世界をもっとよくしようと考えた結果だ。
そう言えば、同期には謙信さん似の人がいたな。
結婚していて、夫は信玄似だった。
意味もなく拍手すると、?という顔をしてたな。
「しかし、綺麗なバラだな」
庭にたくさん咲いているバラをみて、独り言を言うとーー。
「花言葉は、親愛なるあなたへー。ですよ」
声のした方を見ると、俺はバックを落としていた。
真っ赤な髪が、風で揺れていて、真っ白なワンピース……。
そして、俺の一番好きだった笑顔を浮かべているその人わーー。
信長ちゃんに、とても似ていたーー。
今まで、お読みいただき、ありがとうございました!
これからも、違う物語でよろしくお願いします。




