二十三話 狙撃戦
愛銃である、レミントンM700狙撃銃を肩についで、座ること一時間。
今、私がいるところは、屋上の遮塀物の裏側ーー。
ちょうど、この遮塀物のむこうは、山城タワーがある。
雜賀孫市が、布陣している場所だ。
「ずいぶんと、忍耐があるんだな」
トランシーバーに、そう話しかけるとーー。
「狙撃手にとって、忍耐力は必要なものだ。お前の方こそ、そろそろ疲れたんではないか?」
「バカなことを言うな。私は、織田家一のスナイパーだぞ?」
どうやら、本気になると口調が変わるらしいな、孫一。
そう言いながら、マントを遮塀物の外に、ひらっと、少し出すとーー。
バスッ。
ーーターン。
マントに穴があき、遠くの方、山城タワーから、遅れて銃声がきこえた。
「くだらない挑発はやめておけ。私は、意外と短気なんだ」
「ふん。そのわりには、無駄うちをしないんだな」
「当たり前だろ?下手に射ちまくって、私の正確な位置を知られたら面倒だ」
私のマントを射ち抜いたのだから、防弾貫通だろうな。
どうしたものかーー。
敵のおよその位置がわからなければ、こちらがやられる。
先程の狙撃の速さーー、おそらく、つねにスコープを覗いているのだろう。
さて、反撃するにわーー。
静かに、深呼吸を二回する。
そして、立ち上がり、コマのように半回転して、遮塀物の外に出る。
出ると同時にスコープを覗き、すぐに、逆半回転して、遮塀物に背をつける体制になる。
チュン!
ーーターン。
先程より、奥の方に弾が着弾する。
斜め上からの狙撃。
なので、先程私が立っていた位置から考えるとーー。
「脳幹狙いかーー。狙撃センスは称賛するが、決着を急ごうとするのは、いただけないな」
「遊んでいる訳ではないのだーー。貴様を倒して、この学園の生徒達を幽閉しなければならない」
時間がないのかーー。
だが、狙撃戦においては、焦った方が敗ける。
この勝負、勝てるなーー。
「まさかと思うが、あまり、余裕を持たない方がいいぞ?」
「どうゆうことだ?」
「こうゆうことだ」
ギンッ!
「っ!?」
ーーターン。
頬に、何が流れた。
それが、自分の血だということを意識する前に、鉄のぶつかった音源を見つめる。
私の真横にある、屋上の手すりーー。
そこに弾丸を跳弾させて、私を狙ってきたのだ。
「どうだ?これが、私の実力だ」
どうやって、私の正確な位置をみつけた?
でたらめに、射った訳ではないだろう。
周囲を見てみるとーー。
「そうか。影だな」
「そのとうりだ。影だけでも、狙撃の情報をくれる」
さすがは、戦国一の銃使いだった奴だ。
まさか、影をみて狙撃するなどーー。
だが、これはやばいな。
時間が立てばたつほど、私が不利になる。
「気づいたようだな。今は、太陽が少し傾いてるだけだが、時間が立てば、お前の影を隠すことが、難しくなるぞ?」
やはりな。
こうなっては、仕方がない。
短気決戦が、望ましい。
だが、どうすればいいーー。
攻撃したくとも、今の場所から一歩でも動けば、今度こそ、致命傷をおうことになる。
どうすればーー。
考えていると、遠くの方で、能力圧がはね上がる。
懐かしい感じだーー。
前世で、私が恋した人ーー。
まさか、今世でも、惚れてしまうとわ。
「あいつがいなかったら、私の居場所は、貴様の隣だったかもな」
トランシーバーに話しかけると、孫一は反応しない。
集中を、切らさないようにしてるらしい。
まぁ、集中をなくすための作戦ではないんだがーー。
「武尊は、いいやつだ。敵の私を、許してくれた」
「思い出話なら、天国でしろ。私は、集中しているから、耳に入らないぞ?」
少し離れた場所でも、能力圧が、大きくなる。
真田幸村だーー。
「私はな、自分の能力が、あまり好きではないんだ」
狙撃銃の、マガジンから一つだけ残して、弾を全て排出する。
「水というのは、全てをさらけ出していて、何者にも染まらない」
弾を装填して、遮塀物からでる。
「バカだな。自ら、死期を早めるとわーー」
トランシーバーから、発砲音が聞こえた。
しかし、弾丸は、あさっての方向に行く。
「どうゆうことだ!?」
孫一の、焦った声がきこえた。
無駄さ。
時間を待っていたのは、お前だけではない。
「狙撃力なら、お前の方が上だろう。だがな、頭では、私の方が上だ」
ゆっくりスコープを覗き、孫一を見つけた。
火縄銃の改良型のような、狙撃銃。
緑色の髪の毛を、驚きで逆立てている。
「っ!?なんだ、これは!?」
どうやら、気づいたようだな。
「スコープばかり覗いているから、気づかなかったんだよ。この現象になーー」
屋上は、真っ白になっていた。
孫一が見ている範囲だけは、わざと普通にしていたが、充分過ぎるほどたまった。
「まさかーー、水蒸気か!?」
「ご名答。私は、水を操ることができる。先程、わざわざ危険をおかして、スコープを覗いたのは、貴様のいるであろう場所を、詳しく見ただけだ」
「私を狙ってた訳ではなく、私の大まかな場所を見ただけだと?」
そのとうり。
もし、武尊のあの言葉がなければ、この能力を使わなかったかもしれん。
『川と合ってるな』
今まで、一番嫌いだった物が、好きになれた。
あの瞬間、自身の能力も好きになれた。
だから、あいつと信長様を傷つけようとするやつは、許さない!
「終わりだ。雜賀孫一!」
貯水タンクに、手をつけると、水が溢れ出した。
水が球体になり、斜め上に浮遊する。
そこに目掛けて、弾丸をぶちこむ。
すると、水の球体は、大きな槍に変化して、孫一のいる場所にむかっていく。
『水流弾槍!』
「きゃー!!」
孫一の悲鳴と共に、トランシーバーが、雑音になる。
山城タワーも、少し壊れてしまったが、まぁ、てっぺんだから平気か。
「あの二人が帰ってきたとき、クラスメートがいないのでは、話にならんからな」
急いでいかなければ。
あの二人を助けにーー。
宮本武蔵プロフィール
髪の毛 ピンク
武器 二刀の業物
性格 とにかく、戦いあるのみ
技 影を操る
雜賀孫一プロフィール
髪の毛 緑色
武器 改良型火縄銃
性格 普段はおとなしい声だが、戦闘になると荒くなる
技 空間認識




