二十四話 叫べ、俺の名を!
「ふん!」
「いで!?」
秀吉が殴ってきた。
全然避けられているのだが、なぜか吹っ飛ばされてしまう。
どういうカラクリなんだよ。
「どうした?もっと、しっかりと避けろよ」
「くそ!」
間合いに入りたいのだが、やつが攻撃してくるので、必ず飛ばされてしまう。
何らかの力だろうが、それがわからなければ、斬りつけることもできない。
「どうした信長!その程度で、魔王と呼ばれてんのかよ!!」
「やかましい女だな。少しは、黙っていろ!」
信長様が、獄炎波をはなつがーー。
「無駄無駄!!」
政宗が、刀を降り下ろすと、炎が真っ二つに斬られた。
「ちっ!」
舌打ちをして、信長様が斬りかかる。
あっちも、訳のわからない能力だな。
「ずいぶん余裕だな。武尊!」
秀吉の声に振りかえると、眼前に拳がーー。
「しまっ!?」
「サルの分際で、余の家臣に何をするか!」
突然、秀吉の真横から、信長様のドロップキックが炸裂する。
「うお!?」
そりゃ、真横からの攻撃は反応しにくいわな。
不意討ちをくらった秀吉は、ビルに頭から突っ込んでいった。
「無視してんじゃねーよ!信長!!」
どうやら、いきなり矛先を変えた信長様に切れたらしい政宗が、こちらにむかってくる。
「武尊!」
「えっ!?」
まさか信長様が、本名で呼んでくれるなんて!
実際、サルと呼ばれた時は、俺もヒヤッとしたが、どうやら俺のことを名前で呼んでくるらしい。
これは、サルから人間として認めてもらったーー。
そんなことを考えていたら、まさかの首にラリアットされた。
なぜに!?
「うごぉ!?」
「倒れるでないぞ!」
ここで倒れたものなら、あとで斬り殺されない。
人間、死ぬ気になればなんでもできるらしい。
飛んできた信長様の威力にたえて、その場に踏みとどまると、俺を軸にして、信長様が360度回転した。
そして、勢いを殺さずに、むかってきた政宗にも、信長様ドロップキックをくらわす。
「なに!?」
いきなりの不意討ちに、政宗は反応できずにふっ飛ばされた。
地面を数回バウンドして、あちらも壁に突っ込んだ。
「まったく。余というものは、罪作りな女だな」
「ゲホゲホ!死ぬかと思った!!殺人するつもりですか!?」
「愚か者。罪は罪でも、犯罪ではない。恋の罪だ」
「はい?」
この人は、たまに訳のわからないことを言う。
「考えてもみろ。伊達の奴は、余に無視されると嫉妬し、サルなど、照れて余に近づこうとせん。そしてー」
いきなり、顎を人差し指で持ち上げられてーー。
「貴様にいたっては、余に恋い焦がれておるしな」
「はっ!?何を言って!!」
「素直にならんか」
突然、俺の首に色っぽく両手をまわしてくる。
ののの、信長様の顔ががが、近い!!
「素直に、余のことを愛していると言えば、唇くらいは、あげてもよいぞ?」
よいぞ、というところで、首を少し傾ける信長様。
この人は、何を考えてるんだよ!!
「どうした?まさか、余のことが嫌いなのか?」
「そそそ、そんなこと!」
「では、好きなのだろ?言葉にしてくれねば、余には伝わらん」
「そ、それは、そのーー」
「早く言わぬと、その唇を、塞いでしまうぞ?」
信長様の顔が、近づいてくる。
うわわわわ!!
「何を、いちゃついてんだ!」
すると、瓦礫をぶっ飛ばして、政宗が現れた。
顔が、怒りに満ちている。
「ちっ、あと少しだったのだがな。無粋な邪魔をしおって」
こちらも、なぜか怒っている。
な、何が、あと少しだったんだ?
信長様は、俺の首から手を離して、政宗を睨みつける。
「余の邪魔をしおって。三下風情が、調子に乗るでない」
そう言い返して、いきなり俺の腕を掴み、抱き寄せた。
「ちょ!なにを!」
信長様の、やわらかい物がーー。
そう思った瞬間、俺が立っていた場所を、ものすごい速さで、瓦礫が通過した。
冷や汗をかきながら、投げてきた方向をみるとーー。
「敵の前で、君主といちゃつくとはーー。なかなかの肝っ玉だな、武尊」
右腕を回しながら、秀吉が笑っていた。
あいつのバカ力は、どこから出てくるんだ?
「どうやら、貴様も余も、同姓に好かれるタイプのようだな」
「いやいや。同姓の上に、親族ですよ?好かれたくないです」
冗談を言ってくる信長様に、本音で返す。
しかし、信長様のドロップキックをくらったのに、ほとんど無傷とわ。
こうなったら。
「武尊。余に、いい考えがあるのだが」
「奇遇ですね。俺も、いい考えがあるんですよ」
信長様と視線を交わして、同時に動き出す。
信長様は、秀吉にむかい。
俺は、政宗にむかう。
先程から気づいていたのだが、秀吉より、政宗の方が少しだけ弱い。
それに、秀吉のように遠距離の攻撃をしないぶん、政宗の方が戦いやすいだろう。
「あっ!お前はどうでもいいんだよ!逃げんな信長!!」
政宗が、俺から逃げようとする。
そんなに、信長様と戦いたいのか?
「こっちに集中!」
政宗の左肩を狙い、突きを放つ。
しかし、政宗はひらりと、俺の攻撃をかわしてしまう。
動きが速い。
「邪魔だな!消えてろ!」
横なぎで、俺の首を狙ってくる。
ギリギリで避けたが、数本髪の毛が切れた。
「信長!」
まだ諦めていないらしく、信長様のところに行こうとする政宗。
ずいぶん、しつこいな。
「こっちだ!」
幻影飛天を使い、政宗をぶっ飛ばす。
しかし、あまりダメージがなかったらしい。
すぐに体制を戻して、怒りの目を俺にむける。
「ゴミ野郎が。余程死にたいらしいな」
「お前の相手は、俺になったんだよ。俺を無視するな」
「はっ。半覚醒の分際で、生意気な口をきくな」
政宗が、眼帯に手をおく。
なぜか、嫌な予感がする。
「本当は、信長を殺す時に使おうと思ったんだがなーー。テメーがイラつくから、今使う」
やばい!
本能が、そうささやきかけてきた。
「瞬神流奥義、逆手切り!」
半覚醒している俺の速度は、並みの早さじゃない。
おそらく、眼帯をとることしかできない。
どんなに強くても、絶え間ない連撃をくらえば、反撃することはでくない。
このチャンスで終わらせる!
「なかなかの速さだな。だがーー」
政宗が、眼帯を外した。
眼帯の奥には、真っ赤な目があった。
「私からみれば、あくびがでるほど遅いなーー」
俺の剣よりも速く、政宗の刀が降り下ろされた。
パパっ!
血が、俺の頬に2滴はねる。
何が、おこったんだ?
視線を少し右にむけると、俺の肩から血が出ていた。
「っ!?ぐわーー!!」
激痛がおそってきた。
剣を落として、左手で肩をおさえる。
膝が地面について、激痛のせいで、まともに立てない。
速すぎる!
斬られたことに、気づかなかった。
あの眼帯に、どんな効果があるか知らないが、とんでもない力なのはわかる。
「武尊!」
信長様が、政宗に斬りかかる。
「はっ!使えない家臣を持つと、大変だな信長!!」
「黙れ!その口を、永遠に開けなくしてくれるわ!」
くそ。
情けない。
これでは、2対1になってしまう。
あんな強いやつ二人を相手にしたら、いくら信長様でも危険だ。
どうにかして、立ち上がらないとーー。
「武尊ーー。その程度なのか?」
秀吉が、俺の前に立っていた。
顔には、怒りがーー。
「強制覚醒できる人間だと知った時は、なかなか面白い奴だと思ったんだがな」
「勝手に、期待してんじゃねーよ」
ぎこちない笑みを浮かべて、秀吉に言うとーー。
「そうだな。俺の勝手な期待が、ここまで砕かれるとわーー。さて、そろそろ終わりにするか」
拳を握りしめ、秀吉が俺から距離をとる。
ある程度離れると、構えた。
右拳の、ストレートだろうーー。
しかし、今までとは殺気が違う。
本気の一撃が、くる!
「武尊ー!」
信長様が、俺と秀吉の間に飛び込んできた。
「信長様!」
信長様の顔が、こわばっていた。
それほどの、力なのかーー。
「天地破滅!」
技名と共に、秀吉がストレートをはなつ。
地面が揺れ、大気すら震えた。
「獄炎波!」
信長様も、炎を放つがーー。
一瞬にして、吹き飛ばされた。
「くそっ!」
その言葉と同時に、信長様が吹っ飛んできた。
信長様と共に、声を出す暇もなく後方のビルに突っ込む。
ズーン!
ばかでかい音がなって、意識を取り戻した。
どうやら、一時的に意識をなくしていたらしい。
「ぐっ!げは!」
口から、血が溢れてきた。
内蔵が、どこかやられたらしい。
「信長ーー」
様まで、言えなかった。
俺の目の前に、血だまりがある。
その上に、俺を励まし、優しい笑顔をむけてくれた女の子が、倒れている。
「の、信長ちゃん!!」
慌てて、抱き起こす。
俺の両手が、血まみれになる。
「た、武尊ーーくん?」
うっすらと、目を開けた信長ちゃんだが、視点がさだまっていない。
血を失いすぎたのか!?
「だいーー、じょうぶ?怪我とか、してないよーーね?」
「喋るな!今、止血するーー」
ゴホ!
また、口から血がーー!
「ふふっ。わ、私の、力ならーー」
信長ちゃんが、俺の腹に手をおく。
腹から、暖かいものが、身体中を回りだす。
あぁ、わかってしまったーー。
これは、回復術だーー。
「やめろ!信長ちゃん!!」
「いいのーー、私は、もう無理だよーー。だけど、武尊くんだけ、ならーー」
両目から、涙があふれでてくる。
俺は弱いーー。
大切な女の子を、助けることもできずに、逆に助けられるなんてーー。
「武尊くんーー」
俺の腹から手を離して、信長ちゃんが、頑張って微笑みーー。
「最後だからーー、これだけ、言うねーー」
「最後なんてーー」
「大好きーー、ううん。愛してーーる」
信長ちゃんが、目を閉じてしまった。
身体から、力が抜けていっている。
なんだ、これはーー。
俺は、何をしてるんだーー。
俺を愛してくれた人を、このまま死なせる?
ふざけんな!
『そうです。あなたは、私と同じ過ちを犯してはいけません』
この声は、帰蝶さんだ。
信長ちゃんを、助けられるのか?
『助ける方法なら、あなたはすでに知っています』
そうかーー。
確かに、ここぞという時だよな!!
「やーー、大和武尊!!」
信長ちゃんを抱きしめながら、大声で呼んだ。
俺のーー、俺らの原点。
三種の神器を使えた、たった1人の人物の名前。
『ようやく、僕の名前を呼んだね!』
何が、いやーー。
圧倒的な、能力圧がわき出てきた。




