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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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54/80

プロイセンブルー ―提督からの贈り物―

悶々といじけていたリヒトに、ついに火がつきます。


提督から届いた小さな贈り物が、彼の覚悟を決めさせることになるのでした。

ホルムズ海峡の情勢は、日に日に緊張を増していた。


米国はついに、各国へ要請を出す。


——商船護衛。


海峡を封鎖させないため、各国海軍が共同でタンカーや商船を守るという作戦だった。


だが、それでも状況は楽観できない。


BMM本社でも緊急会議が続いていた。


「まだ連絡は?」


「ありません。」


会議室の空気は重い。


ペルシャ湾には、まだBMMグループの船舶が残っていた。


タンカー。LNG船。コンテナ船。


本来なら、早急に離脱させたい。


だが——


それができない。


航路の安全が確保できず、船を動かすタイミングを見極めるしかないのだ。


時間だけが過ぎていく。


そして。


燃料費が膨れ上がる。


「このままだと……」


誰かが言いかけて、言葉を飲み込んだ。


グループ全体の焦りは、日に日に強くなっていた。


当然、その影響は——


クリスタニアにも及ぶ。


「就航延期を検討すべきでは?」


そんな声が、社内で増え始めていた。



そんなある日。


BMM本社に小包が届いた。


宛先は——


リヒト・ヴァルナー。


差出人は。


ハワード提督。


リヒトは箱を開ける。


中には、小さな手紙と——


ネックレス。


青い宝石が、花の形をしていた。


「……これは。」


ヤグルマギク。


ドイツでは——


プロイセンブルーとも呼ばれる花だった。


リヒトはしばらく、それを見つめていた。


その意味を、彼が知らないはずがない。


信頼。教育。誇り。


そして——


騎士の象徴。


リヒトは静かに息を吐く。


「……やられたな。」


エリコが腕を組んで笑う。


「提督は、何もかも分かってるわね。」


リヒトはネックレスをそっと握る。


胸の奥に、静かに火が灯る。


迷いではない。


決意だった。


「常務。」


リヒトが言う。


「提督に返事を出します。」


エリコは少し驚いた顔をした。


「もう?」


「ええ。」


リヒトは立ち上がる。


「今、書きます。」



BMM本社ロビー。


大きな花瓶には、真紅の薔薇が飾られていた。


クリスタニアの就航を祝うためのものだった。


リヒトはその前で足を止める。


少し考える。


そして。


一枚の花びらを、静かに摘んだ。


それを封筒の中へ入れる。


便箋を取り出す。


ペンを走らせる。


書いたのは、短い一文だけだった。



「閣下の薔薇が似合うのは光に守られた本船だけです。」



エリコがそれを覗き込む。


「……なるほど。」


そして笑った。


「大胆ね。」


リヒトは封筒を閉じる。


それは、ただの返事ではない。


宣言だった。


あなたの娘にふさわしい男は、自分だ。


その覚悟。


エリコは肩をすくめる。


「提督、怒るかもしれないわよ?バカモーンって。」


リヒトは静かに答えた。


「ええ。」


そして続ける。


「だからこそ、行くんですよ。船長ですから。」


エリコは満足そうに笑った。


「いい顔になったじゃない。」


窓の外を見る。


港の方角。


そこには、クリスタニアがいる。


そして——


遠い海の向こうには。


ロンドン。


エリコは静かに言った。


「レジェンディアの英国行きまで、あと半月よ。」


「こちらから返事をしておくわ。特別航海のゲストリストは、後で渡す。」


リヒトは小さく頷いた。


胸の奥で、青い花が静かに揺れる。


今度は——


逃げない。

作中に登場した青い花は「ヤグルマギク(コーンフラワー)」です。ドイツでは「プロイセンブルー」とも呼ばれ、プロイセン王家や騎士道の象徴として知られています。


誠実さや誇り、信頼といった意味を持つ花でもあり、ドイツ文化では特別な意味を持つ存在です。


提督がリヒトへ贈ったこの花には、ある種の“試すような意味”も込められているのかもしれませんね。

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