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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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38/80

嵐のあと―航海士は休みたい―

嵐を越えたレジェンディアですが、北太平洋の航海はまだ続きます。


今回の舞台はアリューシャン列島、そしてアッツ島付近の海域。世界でも屈指の荒海として知られる場所です。


嵐を越えた航海士の、ほんの短い休息の時間。しかし海はまだ完全には静まっていません。


そしてこの海域には、もう一つ別の緊張が潜んでいます。


それでは本編をどうぞ。

三人娘に操船を任せると、リヒトはようやくブリッジを離れた。


廊下を歩く足取りは重い。


数時間に及ぶ荒天操船。神経が張り詰め続けていた体は、今になって一気に疲労が押し寄せる。


レイコの部屋のドアを開けると、壁掛け灯の柔らかな灯りが部屋を包んでいた。


外ではまだ北太平洋のうねりが船体を大きく揺らしている。


嵐は過ぎた。だが海は、完全には静まっていない。


リヒトはジャケットを脱ぎ、そのままソファーに放り投げた。


そしてベッドにドッカリと腰を下ろす。


レイコがカウンターからカップを持って来た。


部屋に、ほのかな香りが広がる。


蜂蜜入りのラベンダーティーだった。


「はい。これ、飲んで。」


レイコが静かにカップを渡そうとする。


「シャワー浴びて、少し休むといいわ」


「……ああ」


だが、そのままレイコの膝に倒れ込む。


船が再びゆっくり揺れた。


リヒトは額に腕を乗せたまま

「……疲れた」


とため息をつく。



レイコは、持ったままのラベンダーティーに口をつけ、しばらく黙って見ていたが、小さく頬を叩く。


「ダメよ」


「そのまま寝たら風邪ひくわ」


リヒトは目を閉じたまま答える。


「……ちょっとだけだ。」


「ダメ」


レイコは笑った。

「疲れたら、シャワー浴びた方がよく眠れるわ。」


渋々体を起こし、リヒトはシャワールームへ向かった。


10分ほどして。


濡れた髪のまま、再びベッドに倒れ込んだ。


「……もう動きたくない」


天井を見たまま呟く。


レイコは小さく笑う。

「子供みたいね」


リヒトは目を閉じた。


そしてボソボソと呟く。


「……疲れた」


少し間が空く。


「どうせなら……」


また少し沈黙。


「違うことで疲れたい」


レイコは一瞬言葉を失った。


そして思わず笑う。

「変な元気はあるのね。」


リヒトは体勢を変え、顔を枕に埋めたまま動かない。

「……癒されたい。もうヤダ。」


レイコは肩をすくめる。


船がゆっくり大きく揺れる。


カーテンの向こうには、まだ荒れた北太平洋の夜。


レイコは立ち上がる。


「私もシャワー浴びてくるわ。疲れちゃった」


リヒトがぼそりと言う。


「俺が沈没しちまう」


ドアの前でレイコは振り返った。


そして小さく笑う。


「ウフフ」


「今行くわ」


部屋の灯りが静かに揺れた。



その頃、ブリッジでは。


三人娘が操船を引き継ぎ、レジェンディアはゆっくりと航海を再開していた。


低気圧は過ぎたが、アリューシャンの海はまだ荒れている。


無線のノイズは少しずつ消えていた。


ミカエラは、徐に通信ボタンを押した。

“Darlings, do you copy?”

(ダーリンたち、聞こえる?)


“All units are safe here.”

(こっちは全員無事よ)


すぐに返事が返る。


“Hey honey! We're fine! Still floating!”

(ハニー、こっちは無事だ!まだ沈んじゃいないぜ!)


ブリッジに笑いが起きる。


続いて別の声。


“Got a weird visitor near Attu Island.”

(アッツ島の近くで変なのに絡まれたぞ)


リサが身を乗り出す。


“Did some crazy guy just fly in?!”

(なんかヤバいやつ飛んできたの?!)


無線の向こうで豪快な笑い声。


“Low altitude fly-by. Drunk bastard.”

(低空飛行で絡んできやがってよ。酔っ払いみたいだったぜ)


ミカエラが聞き返す。

“How did you deal with it?”

(どうやって追っ払ったの?)


返事は誇らしげだった。


“Blew the horn right under him!”

(真下で汽笛を思いっきり鳴らしてやったぜ!)


ミカエラが吹き出す。


「ヤバっ!おもしろすぎる!」


“Scared the hell out of him.”

(ヤツめ、飛び上がって逃げていったぜ)


船たちもブリッジも、その武勇伝に大きな声で笑った。


だが――


エディは静かだった。


腕を組み、海図を見つめている。


そして小さく呟いた。

「……もし後続の船がいると知ったら」


「次は、間違いなく来ます」


船長が頷く。


「警戒を続けろ」


レジェンディアは慎重に進む。


低気圧通過から三日。


船はアリューシャン列島を抜け、


霧に包まれたアッツ島海域へ差し掛かろうとしていた。

今回の舞台になっているアリューシャン列島周辺は、世界でも特に航海が難しい海域として知られています。


最大の特徴は 霧の多さ です。


アラスカ海域では冷たい海流と暖かい空気がぶつかるため、非常に濃い海霧が発生します。視界が数百メートル、時には数十メートルになることも珍しくありません。


アッツ島付近は特に霧が多く、第二次世界大戦でも兵器より霧が脅威だったと言われるほどです。


そして物語の中で登場している先行タンカー船団ですが、彼らはレジェンディアより数十海里ほど前方、アッツ島の西側海域を航行しています。


この海域はロシアのカムチャツカ半島にも近く、軍用機や潜水艦の活動が多い場所でもあります。



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