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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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12/48

航海士は舵を取る ―女王の海へ

夜のレジェンディア。


ボールルームの熱気が去ったあと、

船の上には静かな時間が流れ始めます。


ムーンカフェデッキで一人風に当たる航海士リヒト。

しかし、そこへ思いがけない助言が届けられます。


航海士が進むべき航路とは何か――

そんな夜のお話です。


ムーンカフェデッキは、夜の静けさに包まれていた。


地中海の風が、ゆっくりと流れている。


リヒトはグラスを持ち上げた。


氷の浮いたレモン水。


一気に飲み干す。


「……はぁ。」


深く息を吐いた。


そのとき、背後から声がした。


「副長、荒れてますねぇ。」


振り向くと、給仕のクルーが立っていた。


トレイを片手に、にやにやしている。


「私も見たかったですよ。本船一のダンス。」


グラスを取ると、レモン水を注ぎ足した。


「さ、どうぞ。」


リヒトは黙って受け取る。


氷が小さく音を立てた。


しばらくしてから、ぽつりと言う。


「……分からない。」


給仕が首を傾げる。


「何がです?」


リヒトは夜の海を見たまま答えた。


「オーガスティア様が好きなのかどうか。」


少し間があく。


「なんであの選曲にしたのか。」


グラスをゆっくり回す。


「なんで……あんなことを言ったのか。」


給仕は肩をすくめた。


「執事のダンス見たんでしょう?」


「……。」


「取られたくないとか思っちゃったんじゃないですか?」


リヒトは何も言わない。


給仕は笑う。


「まぁでも。」


トレイを脇に抱える。


「言わなくても分かると思いますけどねぇ。」


リヒトは小さく首を振った。


「俺はただの航海士だ。」


そして低く続ける。


「女王のな。」


給仕がぱっと顔を上げた。


「副長!」


思わず声が弾む。


「それですよ、それ!!」


リヒトは怪訝そうに眉を寄せる。


「……何がだ。」


給仕は笑いながら言った。


「航海士ってのはですね。」


夜の海を指さす。


「好きな船を守るためにいるんですよ。」


少し間を置いて、にやりと笑う。


「副長の場合は……まぁ…。」


リヒトはグラスを持ったまま固まった。


遠くで波の音がする。


ムーンカフェデッキの夜は、まだ静かだった。


 


給仕はにやりと笑う。


「副長。」


トレイを軽く叩く。


「レジェンディアに惚れたから、大帝国を捨ててBMMに来たんでしょう?」


リヒトの眉がわずかに動く。


「……。」


給仕は肩をすくめた。


「それが航海士ってもんですよ。」


少し身を乗り出す。


「好きな船のためなら、海だって渡る。」


そして小さく笑った。


「副長の場合、今まさに…なんでしょうけど。


リヒトはグラスを握ったまま黙っていた。


 


給仕がふと思い出したように言う。


「ああ、そうだ。」


「オーガスティア様なら、VIPラウンジにいらっしゃいますよ。」


リヒトが顔を上げる。


「さっき株主たちが言ってましたから。」


「パーティーのあと、お疲れになってそっちに行かれたみたいですね。」


夜風がデッキを通り抜けた。


リヒトはグラスの残りを飲み干す。


氷が小さく音を立てた。


そして立ち上がり、ジャケットを羽織る。


 


「……副長。」


給仕が笑いながら敬礼した。


「健闘を祈ります。」


 


リヒトは答えない。


ただ静かにムーンカフェデッキを後にした。


 


向かう先は――


VIPラウンジだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


クルーズ船には、華やかなボールルームの裏側に

クルーがほっと一息つく場所があります。

ムーンカフェデッキも、そんな静かな場所の一つです。


今回の回では、リヒトが少しだけ自分の気持ちと向き合いました。


そして物語は、次の場所へ向かいます。


レジェンディアのVIPラウンジで、

また新しい夜が始まりそうです。


次回もお付き合いいただければ嬉しいです。

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